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2-6 封魔の大地へ(2/2)

「ユウリさん、イバラさん、お疲れ様です」


「これは、これは。団体様の登場だな」


「あっ、3号ちゃんにデレーヌさん。私に会いに来てくれたのね♪」


「違う、違う」


「3号さんの案内です」


 三人が第四層。封印最深部に着くとそこではユウリとイバラが数多くの魔物達と戦っていた。この最深部の魔物達は完全体に加えて巨大な複合型も出現する上に、その量も他と比べ物にならなかった。


「なるほどねえ。それだったらちょっと狩っていく?」


「いいのか?」


 三人の事情を聞いたユウリは交代を提案した。それは第四層が他三層に比べてかなり狭いため、五人で戦うのは窮屈だったからだ。


「そろそろ休憩してもいい頃だしね。イバラはどう?」


「いいぜ。そもそも俺はお前と違ってそこまでやる気はないからな」


「だってさ」


 ユウリがイバラに確認を取ると、そこまで金が必要でない彼は彼女に同意した。


「ありがとうございます」


 3号は狩場を譲ってくれた二人に対して頭を下げた。


「それからクロースル。休憩ついでにポーションとか売ってくれない?」


「ああ、そうだな。クロースルがいるなら俺も何か買おう」


「デレーヌさん、離れても別に大丈夫ですよね?」


「ああ、3号なら大丈夫だろうし行ってこい」


「では後はお願いします」


 ユウリとイバラから休憩ついでにポーションの直販の要請してきた。そのためクロースルはデレーヌに許可を取り、二人と共に安全地帯である転送ポイントに向かった。


「それじゃあやるぞ。3号」


「はい!」


 第四層に残ったデレーヌと3号は改めて群れる魔物達へと向かった。確かに第四層は他三層と比べ物にならない魔物の質と量だったが、三強であるデレーヌがいるおかげもあり3号は十二分に戦えた。


____________________



「デレーヌさんは当然として3号ちゃんも中々強いな」


「デレーヌさんの露出した肌もいいけど、3号ちゃんのちらっと見える肌もいいわね」


「どこ見てるんですか」


 デレーヌと3号が魔物と戦っている最中、転送ポイントで休憩中のイバラ、ユウリ、クロースルはその様子をポーション片手にのんきに観戦していた。


「いいじゃないの、別に。それにしても3号ちゃん、普通に強いし一回戦ってみたくはあるわね」


「それは俺も同感だな。中々いい勝負が出来そうだ」


「二人とも好きですね」


 3号といい勝負が出来そうな二人は彼女との戦いに乗り気だった。一方で負ける未来しか見えないクロースルは冷めた反応をしつつも彼女のことはしっかりと眺めていた。


____________________



「それじゃあいいもの見させてもらったし復帰するわね」


「見世物じゃないがまあいい。3号、私達も休憩しよう」


「はい。ユウリさん、イバラさん、ありがとうございました」


 20分ほどで休憩を切り上げたユウリとイバラは戦線に復帰し、デレーヌと3号は二人と入れ替わる形でクロースルの待つ転送ポイントへと向かった。


「二人ともお疲れ様です。何か飲みますか?」


「オレンジで」


 飲み物を尋ねるクロースルにデレーヌは注文する共に小銭を取り出した。


「はい、確かに。それじゃあこれを」


「ああ」


 代金を受け取ったクロースルは、注文の品のオレンジ味のマナポーションをデレーヌへと手渡した。


「3号さんはどうする?」


「いえ、私は大丈夫です」


 クロースルは改めて3号に注文がないか尋ねたが、相変わらず倹約家である3号は注文を断った。


「大丈夫。マナポーションの初回はタダでやってるから」


「……ありがとうございます」


 しかしそんな3号に対し、クロースルは半ば強引にデレーヌと同じオレンジ味のマナポーションを手渡した。なお初回無料サービスは3号への贔屓ではない。


「気にするな、3号。それは初回無料で味を覚えさせて次回以降有料で買わせる手口だ」


「いや、デレーヌさん。そういうこというのやめてくれませんかね」


 3号の申し訳なさそうな顔を見かねたデレーヌが初回無料の理由をバラした。そのためクロースルはデレーヌに対して文句をつけた。


「悪いな。ただ3号があまりにも申し訳なさそうな顔をしていたからな」


「……それは確かにそうですけど」


 クロースルはデレーヌに言い返したい気持ちはあるものの、先ほどの3号の表情を思い出し言葉に詰まった。


「……すみません」


「まあ、3号。言った私が言うのもなんだけどそんなに気にしすぎるな。とりあえず飲んでみろ」


 謝る3号にデレーヌはフォローを入れつつ、改めてマナポーションを勧めた。


「あっ、はい。……おいしいですね」


 3号は勧められるままオレンジ味のマナポーションに口をつけた。それは残らないすっきりとした甘さだった。


「だろ? これで100Gなら安いものだ」


「確かにそうですね」


「まあ、これからマナポーションを買って飲むかはお前の勝手だけど、100Gぐらいなら財布も痛まないと思うぞ」


「そうですね。クロースルさん、また機会があれば購入させていただきます」


「いやいや、こちらこそありがとう」


 3号の言葉にクロースルは新規の顧客になりそうな彼女へと頭を下げた。


「それからデレーヌさんもフォローありがとうございます」


 続いてクロースルはデレーヌにも頭を下げた。


「なに、気にするな。最初に悪印象を与えたのは私だったからそれを払拭しただけだ」


 デレーヌはフォローの理由を答えると話を打ち切った。その後、三人はそのまま転送ポイントで昼休憩をすることになった。


____________________



「ところでこれからはどうする?」


 転送ポイントにて酒場で購入した昼食を食べ終えた三人は、これからどうするかを話し始めた。


「私は特に予定はないですけどどうしましょうか?」


「解散でもいいのなら素材集めに行ってもいいでしょうか?」


「素材集めですか? それなら私も同行します」


「いや、素材の種類が多いから一人でいくよ」


 3号はクロースルの素材集めへの協力を申し出たが、クロースルはそれをやんわりと断った。そのため3号は肩を落とした。


「3号。はっきりいってあれは素人には無理だ。私も一回軽いノリで付き合おうと思ったけど多すぎて諦めた」


「そうですか」


 断られて落ち込む3号に対し、デレーヌは以前に自分もやろうとして駄目だったと伝えた。クロースルがポーション等の素材に使う素材の種類は膨大で、それを完璧に把握しているのはクロースルとゴーツぐらいのものだった。


「それじゃあ私達はもう少し第三層辺りで魔物狩りでもするか?」


「そうですね。私は特に予定もないですし、デレーヌさんがそれでよければ」


「なら決まりだな」


 3号とデレーヌは魔物狩りを続行、クロースルは素材集めという形に分かれることになった。


____________________



「3号、今日はこれぐらいにしよう」


「はい、了解しました」


 クロースルと別れたデレーヌと3号は適当に休憩を挟みつつ魔物を狩っていたが、日が落ちてきたためデレーヌは終了の判断を下した。合計で6時間ほど戦った二人だったが、多少の疲れはあるものの傷といった傷は特になかった。


「3号、帰る前に少しいいか」


「なんでしょうか?」


 デレーヌは転送ポイントに着くと、3号に改まった声で話しかけた。


「この町には慣れたか?」


「……はい。ゴーツさんやデレーヌさん、クロースルさん達のおかげです」


 3号はデレーヌの質問に素直に頷いた。


「なら良かった。この町はゴーツさんを筆頭に変わり者は多いし騒がしいけど、その分許容は広いしいい町だ」


「……そうですね」


 デレーヌはよそではまだ悪目立ちする自らの色素のない白髪に触りながら微笑んだ。その言葉の重みをデレーヌの過去を知る3号は知っていた。また生まれ育った場所が爆乳と爆乳好きで溢れかえった特殊過ぎる場所だった3号も居心地の良さを感じていた。


「これからもよろしくな、3号」


「はい。よろしくお願いします」


 デレーヌの言葉に3号は笑顔で返した。この後、二人は転送ポイントを使用し、メモリアへと帰還するのだった。

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