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【完結】のんべえ聖女とスイーツ怪物伯のおいしい契約結婚  作者: ゆいレギナ
3章 パーティー音頭はタンブララ

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20話 お互いが、自慢の


「綺麗だ……」


 天空城のロビーの真ん中で、その城の主であるユーリウスがポカンと口を開けている。その間抜け面に、アイルも思わずはにかんでしまっていた。


 改まって自分の姿を姿見で確認してみれば、たしかに美少女がそこにいた。

 白とゴールドを基調としたドレスはとても上品で、花嫁らしさと聖女らしさを兼ね備えている。リントが施してくれた化粧も、アイルをより華やかに彩っていた。


 リントが、未だ呆然としているユーリウスを小突く。


「ちゃんとエスコート頑張りなさいよ! わらわらと男が群がってくるからね!」

「お、おう……‼」


 ――そんな大仰に。


 無駄にこぶしを握るユーリウスにアイルがケラケラ笑っていると、彼が尋ねてくる。


「そういや、アイル殿は踊れるのか?」

「タンブラ村のタンブララ音頭ならバッチリだよ!」

「とても不安を覚えたのは俺だけか?」


 もちろん、タンブラ音頭は皇帝陛下主催のパーティーで踊るような踊りではなく、村の酒飲みたちがゲラゲラと笑いながらヘラヘラ動くような踊りである。


「よし、練習しよう!」


 ダンスパーティーというわけではないが、社交の一貫としてダンス曲の一曲や二曲は流れてしまうものらしい。しかも、本日のメインカップルということで注目を浴びるのは必須。


 ぼちぼち王城へ向かわなければならない時間である。練習するならもっと前からやれという話ではあるが……結局アイルのドレスを新調したり、急遽ユーリウスが魔物討伐に行ったり、アイルが二日酔いしたりと、なかなか時間がとれなかったのも事実。


 ユーリウスがアイルの手をとり、構えてくれる。

 もちろん、彼も正装を身に着けていた。銀色の髪を引き立てるシンプルなタキシード姿ながらも、元の体格の良さも相まって余計な飾りなんてなくても、つい目を奪われてしまう。


 そんな美丈夫の素人目からしても問題なさそうな姿勢に、アイルは思わず目を丸くした。


「怪物伯って踊れるの?」

「そんなに意外か?」


 無言でこくりと頷くアイルに、ユーリウスもショックだったらしい。

 あからさまに拗ねて口を尖らせている。


「これでも天空伯……まぁ、伯爵位だからな。幼少期から徹底的に仕込まれている」

「強くて顔も良くて料理もできてダンスもできて……ハイスペックにも程があるでしょ」

「そ、そうか?」


 途端、今度は嬉しそうに目を輝かせるユーリウス。


 ――こどもか。


 心の中でツッコみつつも、アイルも口角を上げながらそれらしく顔の向きを変えてみた。


 すると、リントが「じゃあいくわよー」と手拍子とカウントを始める。

 比較的ゆっくりとした手拍子だ。ユーリウスの「右、左」という指示とリードに合わせて、アイルも見様見真似で足を動かす。最中でユーリウスがアイルの掴む手を上げたので、アイルもつられるがまま身体を一回転させてみた。


 そっと受け止めてくれたユーリウスが眉根を寄せている。


「ダンスは本当に初めてなのか?」

「私の記憶上ではね」

「なかなか筋がいいじゃないか」


 誉め言葉のはずが、なぜかユーリウスの表情が暗い。

 ユーリウスのリードに従い足を運ばせながら、アイルは小首を傾げた。


「なんで残念そうなの?」

「きみこそ、かわいいし聖女としての能力も高いし覚えも早いし……欠点がないなって思って」


 ――つまり、俺のいいところを見せるはずだったのに、ってやつ?


 またしても、なかなかわかりやすい男の見栄である。


 ユーリウスから手を離したアイルは、鼻を鳴らして胸を張ってみせた。


「なら、今日は会場中のお酒を飲み干してあげようじゃないの!」

「そうだった……あと料理も下手だったな」

「お酒は焦がさなかったもん」


 そのとき、ヴルムが「出発の準備が整いました」と呼びに来る。


「じゃあ、行くか。俺の自慢のお嫁さん!」


 なんやかんや、彼の機嫌はすぐに戻ったらしい。

 嬉しそうに差し出された手に、アイルは苦笑しながらも手を重ねた。 


 その手には、もちろん青い宝石の輝く指輪が嵌められている。



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