20品目 焼豚チャーハン
「本当に平和だな・・・この世界には盗賊なんか居ないのか?」
「居るわよ?ただ、ノワル殿を見て襲おうなんて思う盗賊が居ないだけよ。」
そう言われてみればそうだよな。ノワルって一応、黒の冠とか言われてる魔物なんだもんな。俺にとってはただの食いしん坊にしか見えないから、すっかり忘れてたわ。
「シン。あそこがトロン村じゃない?」
「おッ!!やっと見えて来たな・・・村の周りに柵とか全然ないけど、魔物とか襲ってきた時どうするんだ?」
迷宮都市を出て3日。ようやく妖精が居るというトロン村が見えてきた。以前立ち寄ったロースト村は簡易ではあるけど、村の周りに柵があったにもかかわらず、トロン村にはそのような物は一切なかった。
この大陸は3分の1が広大な森で占めていて、多くの魔物は食料がある森に生息している。その為、人間達はわざわざ魔物達が多く生息する、森の近くに村や町を作らないのだけど、トロン村は森のすぐ傍にある。
「確かにおかしいわね・・・。私達エルフも森の中に村を作ってるけど、それは魔物除けの結界をしているからなのよ。この村にはそういう結界はなさそうだし・・・。」
「妖精が村を守ってる・・・とか?」
いつもなら、ノワルを見てパニックを起こす、というのがお決まりになっていただけに、今回もそうなるだろうな、と思っていた。
だけど、村の近くに来ても、俺達に気付いた村人たちが、物珍しい顔で見ているだけでパニックにすらなっていない。
「やっぱり少しおかしいわね・・・。」
「リーシアもそう思うか?とりあえず村長さんに話でも聞いてみようか。」
村人たちの反応戸惑いながらも、村長さんに話を聞きに行くと面白い話を聞けた。それは、この村の歴史についてだった。
今は冒険者といえば、ギルドで依頼を受けて魔物を討伐する、というよりも迷宮で安定した収入を得る為に活動する冒険者の方が数は多い。
しかし、昔は冒険者といえば、未知を求めて大陸中を駆け巡る者達の事を指していた。そんな頃、一人の冒険者が現在のトロン村付近でケガをしている妖精を見つける。
この妖精の素材を売れば、一生遊んで暮らせる位のお金が手に入る。だが、冒険者は妖精を哀れに思い、ケガが治るまで看病したという。
その後、ケガが治った妖精は冒険者に、お礼として虹色に輝くスープを持って来た。今まで冒険者が飲んできた、どのスープよりも美味い。
冒険者と妖精の関係はそこで終わるかと思われたが、そうはならなかった。冒険者は自分の家族と信頼できる人達を集め、トロン村を作り妖精達と良好な関係を築きあげていった。
そして現在に至るまで、妖精達との関係は良好なままであるという話だ。
村長の話によると、妖精の名はピクシー。少し悪戯好きだけど、村の人間にはとっても優しくて、珍しい料理が大好きらしい。ピクシー達がこの村に来る魔物を追い払ってくれているようなので、柵なんかは必要ないとの事だった。
「森の中に住んでいたけど、妖精なんて見た事なかったわ。本当に存在するのね・・・。」
「そうみたいだな。村長の話によると、珍しい料理が大好きって事だったな・・・ここは俺の出番だな。」
「確かにシンの料理は珍しい物ばかりだし、美味しいから妖精もきてくれるかもね。」
料理だけが取り柄の俺だ。妖精を喜ばせる料理を作る自信はある。そういうわけで、村長に許可をもらって、村の近くで料理をする事にする。
この世界で俺は、米を見た事はない。ユウジもそう言っていたしな。つまり、妖精は米の料理を食べた事はないのでは?
というわけで、俺が作るのは男の料理『チャーハン』だ。
「リーシア。水を少な目にして、米を炊いてくれるか?」
「うん。分かった。」
元々料理が出来るリーシアだったけど、今では米の炊き方を覚え、俺の料理のサポートなんかもしてくれるようになった。
こうやって料理をしてるリーシアを見ると、歳の離れた妹の事を思い出すな・・・アイツは元気でやっているのかな。
「そんなに見つめられると、やりづらいんだけど・・・。」
「あー・・・少し考え事をしてたわ。さて、俺も始めるか。」
チャーハンはスピードが命だからな、調味料なんかは手元に置いておくべし。ネギは切り刻んでいつでも入れれる準備をしておく。
昨日作って食べた、オークキングの焼豚を小さくサイコロ状に大量に切っておいて、卵をかき混ぜたら準備完了だな。後は、米が炊けるのを待つだけ・・・・ん?
「あれ・・・?リーシア、焼豚食べた?」
「え?食べてないけど・・・。」
「じゃあ、ノワル焼豚食べた?」
パンッ!!
「ノワルも食べてないか・・・なんか少ないような気がするんだが・・・。」
「もはや頭を叩くのがノワル殿の返事になってるわね・・・。」
疑問に思いながらも、米が炊けたのでチャーハンを作る。
チャーハンは結構油を使う料理なんだよ。だから、自分が思ってる三倍くらいの油をいれよう・・・というのは冗談で、大匙1くらいでいいぞ。
さっきも言ったが、チャーハンは時間との勝負だ。強火でサッと作る事が最も重要だ。
熱したフライパンに卵を入れ、直ぐにご飯を卵の海へとダイブさせ、米と卵を馴染ませる。その後は焼き豚、ネギと入れて塩コショウで味付けをしてパラパラになってきたら『焼豚チャーハン』の完成だッ!!
これをひたすらに作っていくのだけど、まずはうちの食いしん坊達を満足させなければいけない。今も後ろで除雪機の始動音かと思うくらい、「グルルルルルッ」って言ってるし・・・。
「ようやく、ノワル達も満足したみたいだな・・・後は俺達とピクシーの分を作っていけばいいな。喜んでもらえるといいいけど。」
ササッとチャーハンを作り終え、簡易テーブルにピクシー達の分を置いて俺達も食べる事にする。
「美味しいッ!!米がパラパラで焼豚の味が一粒一粒に、しっかりと味が付いていて丁度良い塩気ね。」
「ウマッ!!ぱらっとして、ふわっと口の中にお米が広がり、さらっと楽しめる。『ぱらっふわっさらっ』と、炒飯3大擬音を満たしてくれるこの炒飯。思わずそっと目を閉じて味を噛み締めたくなるわ・・・・これぞ至福。・・・ん?」
俺がチャーハンの余韻に浸っていると、ある事に気付く。ピクシー用にテーブルに置いていた、チャーハンがいつの間にか無くなっているのだ。
どうも。ゆりぞうです。
チャーハンの思い出は、歳の離れた兄に小さい時に作って貰った記憶があります。
べちゃっとしてて、美味しくなかったですがw
でも、チャーハンを食べるといつも兄の事を不思議と思い出すんですよね。
その気持ち分かるーって思った方は、ブックマーク、評価、感想お待ちしております!




