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黒の剣姫 〜異世界転生したので世界最強を目指します〜  作者: 阿東ぼん
第一章 故郷〈ノホルン〉での修行編
3/37

ライカは〈名無しの魔剣〉を手に入れた!

「どーれーにしよっかなー♪」


 私は端から一つずつ剣を吟味していく。まずは見た目。これ大事。次にステータス。これも大事。そして手触り。これも死ぬほど大事。慎重に触りすぎてちょっといやらしい手つきになったのはご愛嬌だ。お父さんに見られてなくてよかった。


 どの剣も同じに見えて実はちょっとした違いあるのだ。一番わかりやすいのはステータスだろう。たとえば〈ロングソード〉と〈ロングソード+1〉は見た目も手触りもそっくりだけど上昇するステータスが違う。どうやったら+値をつけられるのかは不明だが、あとでダンゴさんに聞いてみようと思う。


 お気に入りの一本を究極まで鍛え上げるロマン……わかるでしょう? スキルの追加なんかもできたりして。夢広がりまくりんぐだ。


 いやぁ、本当にテンション上がるな〜。まるでテーマパークにきたみたいだぜ。ここが私の聖域(サンクチュアリ)や! いつかお抱えの鍛冶師を雇ったり剣だけの宝物庫を作ったりしてみたい。そしたらきっとさらに楽しいゾ!


 っとと、妄想に耽るのはこれくらいにして剣を選ばないとな。記念すべき最初の一本だ。妥協は許されない。でもお父さんが連れてきてくれたのだからそんなに時間をかけないほうがいいだろう。このあとにジョブの選定とやらがあるようだし。


「うーん、悩むなぁ……ん?」


 ふと一本の剣に目が止まった。壁に雑に立てかけられただけの錆びた剣だ。どうしてかその剣が気になって仕方ない。


 こういうときは鑑定だ。ユニークスキル《剣の申し子》に含まれた《鑑定眼・剣》を使う。


 ────────


〈名無しの魔剣〉攻撃力+1

《魂喰い》


 ────────


「は!?」


 魔剣んんんんん!? こんな序盤で!? マジかぁこれもう決定したじゃん! 最初の一本が魔剣とかどんな豪運だよ! ふはははは!!


 って、お、落ち着け私。


 どうやらこの魔剣にはスキルが付いているみたいだ。とりあえずそれを鑑定してからにしよう。やたら不穏な名前だし、装備できてもデメリットが強すぎたら今の私では使いこなせない。だって今の私のステータスは、


 ────────


【名 前】ライカ

【年 齢】5歳


【ジョブ】なし

【熟練度】0/0


【レベル】1

【経験値】0/100


【体 力】10

【魔 力】1

【攻撃力】1

【防御力】1

【知 力】1

【素早さ】1

【幸 運】1


【スキル】

《なし》


【U・S】

《剣の申し子》

《無限収納》

《女神の試練》


 ────────


 とまあこのように五歳児らしく最弱なわけで、装備によるステータス上昇がなければろくに魔物を倒せそうにないのだ。


 レベルが上がり基礎ステータスが高まればナマクラでもなんとかなるだろうけど、今のままでは絶対に無理。強くなる前に死にますね、ええ。


「《鑑定眼・剣》」


〈名無しの魔剣〉が持つ《魂喰い》に焦点を当ててスキルを発動すると、その詳細がウィンドウに映し出された。


 ────────


《魂喰い》

①装備者の必要経験値を10倍にする。

②喰らった魔石の数に応じて攻撃力を加算する。


 ────────


 ほうほう、これはこれは……。


 どうやらこの魔剣は装備者の成長を遅らせる代わりに魔石とやらを喰らうことで攻撃力が増すらしい。装備者の経験値&魔石=魂ってわけだ。人間と魔物の魂を喰らい成長する魔剣……ロマンでしかないな!!


 しかし、参ったなぁ。この剣を選んじゃうと魔物を倒すのにすごく苦労する羽目になっちゃう。ただでさえユニークスキル《女神の寵愛》の効果で必要経験値が10倍になっているのだ。《魂喰い》も合わせると常人の100倍努力しないとレベルを上げられないということになる。


 100倍かぁ……。


 一応、魔物については常識の範疇で調べておいたのだが、最弱とされるスライムを倒したら経験値が1入るらしい。普通の人はレベル2に上がるためには経験値を10稼がなければならず、スライムで換算するとそのまま10体。


 つまり、もし私が〈名無しの魔剣〉を選んだ場合、最初のレベルアップを果たすまでにスライムを1000体狩らなくてはいけない計算になる。


 クソゲーかよ!!!!


 はぁ、諦めるしかないかー……。この魔剣はもうちょっと強くなってからゲットしよう。さすがに効率が悪すぎるよ。あとでダンゴさんに残しておくよう頼まなきゃ。


『さっきから何ジロジロ見てんだこのガキ』


 は? 誰? いきなり喧嘩売られた? 買うぞコラ?


『えっ、まさか俺の声が聞こえてんのか? いやいや、ありえねえって。魔剣の声が聞こえるだけの才能がこんな片田舎に転がっててたまるかよ。あーあ、俺も剣聖とか剣王に拾われたいもんだぜ』


「いや聞こえるんだけど」


『は?』


「あなただよね、さっきからずっとしゃべってるの」


 そう言って私は〈名無しの魔剣〉を指差した。私の頭がおかしくなったのでなければこの男っぽい不機嫌そうな声は間違いなく〈名無しの魔剣〉から発せられたものだ。


『嘘だろオイ……あんた俺の声が聞こえるのか!』


「聞こえる聞こえる。普通はそうじゃないの?」


『魔剣の声が聞こえるのは剣聖以上のジョブになれる才能を持つ者だけだ。俺とこうして話してる以上、あんたはきっと偉大な剣士になれる! なあ、剣を探してるんだろ? 俺を選んでくれよ! 俺、いつか魔神級の魔剣になりたいんだ!』


 ぐいぐいくるな、この魔剣。っていうか魔神級ってなんだろう? 魔剣における等級みたいなものかな。くそぅ、ますます欲しくなった! でもデメリットが消えたわけじゃない。


「そうしたいのは山々なんだけど強くなるのが遅い体質なんだよね私。あなたの望みが叶うのはかなり先になると思うんだけど」


『構わねえよ! 魔剣ってのは色んな剣士の手を渡っていくことで徐々に格が上がっていくもんなんだ。今の俺は最底辺の〈魔物級〉ですらない〈名無し〉だ。少なくともあんたが死ぬまでにその次の〈魔獣級〉まで上がれたらそれでいい!』


「その性能で私を踏み台にしようってわけ?」


 ちょっと不愉快だったので棘のある言い方をしてみる。


『悪いがそういうことになる。なあ、頼むよ。俺をあんたの剣にしてくれ。そんで名前を付けてくれ。そうするだけでもちょっとは強くなるからさ』


「どうしよっかなー?」


『頼む! こんなチャンスもう二度とないかもしれないんだ! お願いします! なんでもしますから!』


 ん? 今なんでもするって言ったよね?


 と、ボケかけてギリギリで停止した。元ネタ的にあまり口にすべきではないセリフだ。ちなみに私は腐ってないぞ。私の性欲は人間に向いたことがないからな。


 私の性癖事情はさておき、そろそろ答えを出そうか。


「……ふふ、ごめんね。必死になってるのが面白くてちょっとイジワルしちゃった。いいよ、あなた私の剣になって。私も最強を目指すつもりだから一緒にがんばろう」


『い、いいのか!?』


「うん。だって最初の一本が魔剣だよ? ステータスのことがなければ即決してたよ。私もあなたを選べてすっごく嬉しい」


『そのわりには冷静だな?』


「お父さんの前だから大っぴらに喜べないだけ。元々感情表現が希薄とは言われてたけど」


 あまりにも表情が変わらないから学生時代はもっぱら鉄仮面と呼ばれてたっけなぁ。私は湧き上がる感情を心の中で噛み締めるタイプなのだ。


「お父さん、私これがいい」


 私は〈名無しの魔剣〉を手に取った。


「おー、どれにしたんだい? ってなんだその錆だらけの剣は。他のにしたほうがいいだろ」


『銘がないからこんな見た目になってるだけだっつーの!』


 お父さんの口ぶりに〈名無しの魔剣〉がキレ散らかした。剣のくせに私より人間らしいな。あっはっは。


「私これにする。絶対にこの剣がいいの」


『そこまで求められると照れるなぁ!』


 愉快だなコイツ。


「うーん……じゃあダンゴ、せめて錆を取ってやってくれないか? 本人がいいと言ってもあれじゃ魔物の討伐なんてできないよ」


「悪いなロディ。そいつは無理な話だ。その剣の錆はどうやったって取れやしねぇ。まるで封印されてるみてぇに刀身が出てこねぇんだ」


「なんだって?」


『魔剣ってのは名前に込められた意味によって変化先が決まるんだぜ。名無しの俺はまだそれが決まってないから錆びてるのが正しい状態なんだ』


〈名無しの魔剣〉が陽気な声で説明してくれた。


「ライカ、やっぱり別の剣にしたほうがいいんじゃないか?」


「やだ。これにする」


「困ったなぁ……」


「これにする。これにさせてくれないならジョブの選定も受けない」


「そ、それは困るぞおまえの将来的に。……はぁ、わかったよ。ライカがそれでいいってんならその剣にしよう。ダンゴ、代金は?」


「手入れもできなかったのに金取ったりしねぇよ。タダでくれてやる」


「ありがとう」


 交渉が速やかに完了し、


「「はぁ……」」


 大人二人は意気消沈してがっくりと肩を落とした。期待の愛娘が(現時点では)ガラクタと呼んで差し支えない一品を選んでしまったからだろう。少し悪い気もするがこれも最強になるためだ。ごめんね、そしてありがとう。


「鞘だけは用意してやるからちっと待ってろ。五分で終わる」


「恩に着るよ」


「えへへ、私の剣!」


「……まあ喜んでるみたいだしいいか」


 私が〈名無しの魔剣〉を掲げてポーズを取ってみせると、お父さんは見守るような笑顔をこちらに向けるのだった。


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