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黒の剣姫 〜異世界転生したので世界最強を目指します〜  作者: 阿東ぼん
第二章 伯爵の町〈フォーン〉での闘技大会編
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ライカは双剣使いのアルセラと出会った!

新ヒロイン登場です。

 横転した馬車まで一直線に走っていくと、白いローブの双剣使いが魔物の群れを相手に一人で立ち回っていた。


「よいしょ、っと!」


 私は鞘からクロウを抜いて近くのゴブリンに斬りかかる。合計攻撃力200オーバーから放たれた剣戟はゴブリンの骨肉を易々と切り裂いた。仲間がやられたことで魔物たちが私の襲来に気づく。呆けているところをさらに数体持っていった。


「あなたは!?」


 背中合わせに立つと白いローブの双剣使いは女の子の声で驚いた。まさか同性だったとは。意外だけど剣を使っているし親近感が湧いちゃうな。


「あっちの馬車で依頼されてね。助太刀にきたよ」


「レベルはいくつですか?」


「レベル? 9だけど」


「一桁ですって!? それなのに助けにきてくれるなんて……。いや、話は後にしましょう。あなたはゴブリンたちを惹きつけておいてください。くれぐれも怪我しないように!」


 どうやら私が低レベルと知り、かえって心配させてしまったようだ。レベルが最もわかりやすい基準だから仕方ないっちゃ仕方ない。


 でもね。


「大丈夫。足手まといにはならないから」


 そう言って私は剣を振るい、ゴブリンの首を2体まとめて刎ねて見せた。


「なっ!?」


「レベルが全てじゃないんだよ。こっちは気にせず好きに暴れてくださいな」


「あなたはいったい……?」


「通りすがりの、未来の最強剣士だよ」


 私はゴブリンが集まっているポイントに突っ込み、片っ端から斬り捨てることにした。


「ありがとうございます! こっちのオークは任せてください!」


 よほど戦い慣れしているのか、白いローブの双剣使い……長いわ、あらためまして双剣ちゃんは私が動いてすぐ意識を戦闘に引き戻した。敵は猪頭の怪人オークが3体。それぞれ剣、槍、斧を装備していた。馬車から遠目で見たときの〝ゴブリンよりも大きな魔物〟とはこいつらのことだったらしい。


 双剣ちゃんも剣を装備したオークも《鑑定眼・剣》の対象に含まれるが、まずは先入観抜きでお手並み拝見といきたいな。


 ゴブリン共を適当にあしらいつつ、私は双剣ちゃんとオークの戦いを観察する。


「行きます!」


 双剣ちゃんが剣気を発し、ローブの裾をはためかせて突撃した。


 迎え撃つは槍のオーク。リーチの長さを活かして鋭い突きを放ってくる。


 だが双剣ちゃんはスピードを維持したまま身体をよじり、ギリギリのところで槍の穂先を躱すと、柄に巻きつくような軌道で急接近。左右の剣でX字に斬る。


 槍のオークは悲鳴をあげ、得物から片手を離し攻撃直後の双剣ちゃんに殴りかかった。


 双剣ちゃんはそれを軽やかなバックステップで回避する。


 すごい動きだ。


 でも、浅い(・・)


 槍のオークは傷ついたが依然としてピンピンしている。他の2体にも細かな生傷がついている。


 複数を相手しているとはいえ、一時間も戦っているのに勝負を決められていないのは火力が決定的に不足している証拠だ。ゴブリンの妨害を加味してもそう言わざるを得ない。


「チッ、やはり足りませんか……!」


 本人もそのことを自覚していたようだ。丁寧な言葉遣いのわりに舌打ちとかするんだね。ちょっとグッとくる。これがいわゆるギャップ萌えってやつかぁ。


「グオオオォォッ!」


 今度は自分の番だと言わんばかりに斧のオークが吼えた。振り上げた斧はほとんど錆びついており刃物というより鈍器に近い。


 双剣ちゃんの剣は片手でも振りやすいよう刀身が細い造りになっているので正面から受け止めることはできないだろう。双剣ちゃんは斧の一撃を横に跳んで躱した。


 さらにそこへ剣のオークが突っ込んでくる。こちらの攻撃は左右の剣を交差させて受け止め、力ずくで逸らしたあと流れに逆らわず回転斬りを仕掛けた。剣先はオークの出っぱった鼻をやはり浅く(・・・・・)刻み、血飛沫を上げて退かせた。


「くっ、これでも!」


 だいぶ苛立ってるなぁ。


 しかし、大した集中力とスタミナだ。剣の扱いも上手いし相当努力してきたんだろう。もはや親近感を通り越して好意すら覚える。私は人間に恋したことはないけれど、強いて言うなら剣が好きな人が好きだ。その条件さえ待たせるなら性別はどっちでもいい。


 そんなうわついた気持ちで振った剣があっけなくゴブリンの胴を両断した。そろそろ数が少なくなってきた。全部倒してしまうと双剣ちゃんのほうを手伝わなくちゃならない。まだ見ていたいのでここからは追い詰められたフリをして時間を稼ごう。


「うぅ、そろそろキツくなってきた! 早く決めて!」


 ついでにセリフも加えた。やや棒読みだったけど、双剣ちゃんは一瞬こちらを見てくれた。


「……致し方ありません。不本意ですが奥の手を使わせてもらいます」


 お、何かやるみたいだ。


「──魔剣起動」


 は? 魔剣?


「──封印術式、限定解除」


 双剣ちゃんの詠唱に合わせて右の剣が白い輝きを、左の剣が紫の輝きを帯びる。二つの剣から溢れる魔力は衝撃波となりオークたちをその場に押さえつける。


 これは……光と闇の属性を《付与(エンチャント)》してる? いや、元々剣に備わっていたのなら解放(レリーズ)というべきか。


「──魔法発動、四元展開」


 さらに空中に()()()()属性の魔力塊が現れた! なんだこれは!? この子は六属性を操るのか!? もしかしてすごい才能の持ち主なのでは!?


「──属性融合」


 しかも六属性の魔力を一つに束ね出した! 六つの魔力塊が双剣ちゃんの胸の前に集結し、バスケットボール大の虹色に輝く光球となる! 今のところ魔法を使う予定のない私にもわかるほどの強大な魔力だ!


「ギギィァ!」


 あれを撃たれるのはまずいと思ったのか、1匹のゴブリンが勇敢(おろか)にも双剣ちゃんに向かって突っ込んでいった。邪魔をするな! 私は最高速で無粋な魔物を斬り捨てた。


「──目標確認、照準固定」


 双剣ちゃんは二つの剣をオークたちに向ける。虹色の光球がその狭間でバチバチと音を立てて発射の時を待っている。


 衝撃波によって身動きの取れないオークたちはみるみるうちに青ざめていった。


 そして。


「さよならです。戦技『雷神の滅鎚(トールハンマー)』──発射!」




 ド ギ ャ ウ ゥ ン ッ ッ ! !




 虹色の極太ビームが轟音と共に放たれた。


 膨大な量の虹霓(こうげい)は軌道上に在る全ての物質を呑み込む。


 余波ですら凄まじい破壊力を持ち、標的となったオークたちは当然この世に一切の痕跡を残せずに消し飛ばされた。


「う……ぁ……」


 虹霓が止み、双剣ちゃんが膝から崩れ落ちた。


 あれだけの威力だ。反動だって相当大きかったに違いない。私は彼女のもとに駆け寄り手を差し伸べる。


「大丈夫?」


「私のことはいいから……残りを倒しましょう!」


 双剣ちゃんはそれを頼ろうとはしなかった。苦しそうに歯を食いしばり、二本の剣を杖代わりにしてどうにか立ち上がろうとする。


 素晴らしいガッツだ。ますます好きになっちゃう!


 だが、身体のほうは限界を迎えていたらしく背筋を伸ばす寸前で前のめりに倒れていった。


 私は地面と彼女の間に我が身を滑り込ませた。


「あ、ありがとうございます。だけど戦闘中に負傷者を庇う余裕は──」


「それならもう終わってるよ。ほら」


 私はゴブリンの集団がいたほうに彼女を振り向かせた。


「あ、れ……?」


 そこには血痕以外何もない。魔石すらクロウの《魂喰い》が回収している。


「本当は楽勝だったんだけど、あなたの力に興味があって一芝居打っちゃった。ごめんね」


 ウィンクしながらペロッと舌を出す。


「人が悪いですね……。まあ、おかげで助かりましたけど」


 呆れられてしまったがご愛嬌だ。


「詳しく話を聞かせてほしいな。あなたが乗ってきた馬車はしばらく動けないだろうし私のほうの馬車においでよ。〈フォーン〉に行くんでしょ?」


「お金ないですよ?」


「私の依頼主に払ってもらおう。それが報酬ってことで」


 仲間と荷物を守ってあげたんだ。もう一人分の乗車賃くらい安いものだろう。


「わかりました。私もそうしてもらえると助かります。あとこのまま肩をお借りしててもよろしいですか? さっきの技を使うとしばらく動けなくて」


「もちろん! 私はライカ。〈ノホルン〉出身のライカだよ。あなたは?」


「私は──」


 双剣ちゃんはフードを外した。


 爽やかな桃色の髪が現れ、その下で翡翠の瞳が煌めく。


 うっわ……すっごい美人。


「アルセラ・ヴァンキッシュと申します」


 双剣ちゃんことアルセラは、剣狂いの私が思わず見惚れてしまうほど美しく笑った。

【簡易メモ】


〈アルセラ・ヴァンキッシュ〉

 白いローブの双剣使い。

 その正体は桃色の髪に翡翠の瞳を持つ美少女。丁寧な言葉遣いをするが、戦闘中は普通に舌打ちしたり悪態をついたりする。

 戦闘経験が豊富で集中力とスタミナに優れている。しかし反面、火力に乏しく決定打に欠け、敵の数が多い場合や防御力の高い相手が苦手。

 唯一の大技である戦技『雷神の滅鎚(トールハンマー)』は隙が大きすぎて実戦での有用性は低い。

 光と闇の魔剣を装備しており、自身は火・水・風・土の四属性を扱えるため、合計で六属性を操る。

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