砂鉄とクルップ・レン法
クルップ・レン法は1930年にクルップが発明した製鉄法である。
この製法は戦時中に大江山鉱山の貧鉱からフェロニッケルの回収に用いられた事でも知られている。
2〜3°の傾斜を付けた珪石、蛍石等酸性耐火煉瓦製の筒の中に粉状の鉄鉱石と石炭、石灰石を混ぜた物を投入。
排出口から1200〜1300℃の炎を吹き込み海綿鉄を回収。
精錬後の品位は94〜96%である。
上記温度はコークスガスで達成可能で高炉より建設費が、角炉より生産費が安く、日本ではシリカの含有量が高い山砂鉄と鉄分の高い浜砂鉄を混ぜた物を用いて1941〜1967年まで敗戦の中断を挟んで岩手の久慈で全長60m、内径3.6m、日産300tのキルンが稼働していた。
出来た鉄は硫黄分が高い事を除けば高炉銑より不純物が少なく、鉄薬莢や航空機の防弾鋼板等に用いられた。
ただ出来る鉄は㍉単位の大きさの為平炉、電気炉の他焼結又はペレット化した上で高炉に投入される等二次加工が必要。
クルップ・レン法を取り上げた資料の中には無いが、脱硫の為石灰と共に転炉にかけなければならない。
鋼鉄を造るには転炉が必要なので省略されたのだろうか?
銑鉄1t辺り品位50%の砂鉄2〜2.7t、0.8〜1tのコークス、キルンの回転に110〜140kwの電力と、コークス炉が無い所では熱源に250〜350klの重油を要した。
高炉は戦中まで品位は不明だが2〜3tの鉄鉱石、4tの石炭(コークス換算2.76〜)を費やしている。
60年代には資源重量が品位67%以上の鉄鉱石を1.5t、0.74tのコークス他合計2.4tに減少していた為クルップ・レン法の炉の廃止は仕方ない。
混合しない平均品位56%の砂鉄をそのまま電気炉に掛けると銑鉄1t辺り平均2500kwも電力を消費するので、クルップ・レン法の方が安上がりである。
海綿鉄の生成温度は1000〜1300℃。
材料温度が1250℃以下であれば砂鉄中のチタンがサラサラなのだが、超えると珪素が融け出し粘度が上がってしまうので石灰で粘度を下げる事になり、高温が炉を傷める事にも繋がる。
ただ途中で止まらず鉄を運ぶにはスラグ(鉄鉱石中の鉄以外の物質)の量が銑鉄重量の6割は必要なので材料をケチり過ぎるのも問題。
高炉より耐火煉瓦を除く材料、輸送費がかからないので砂鉄と石炭と耐火煉瓦材は採れるが鉄鉱石が採れない地域では一考の余地がある。
米国では直径2.7m、全長45.7mの回転炉に粒径1〜25㍉の鉄鉱石と石灰、木炭等の還元剤を投入し1260℃で加熱。
日産175t、年産5万t以上を記録した。
炉の厚みを高炉並みとして1日の資源投下量を考えると米国の1/50程度は生産出来る。
尚耐火煉瓦にはアルミナ、シリカが必要である。
参考PDF
日本における鉄鉱石直接還元技術の推移
各種製鉄法
クルップ式レン法の現況に就て
TOPICS TOPICS
─28─わが国の鉄鉱業と製鉄業の生い立ち
フェロニッケル製造法における最近の状況
各種製鉄法




