米と脱穀と副業
現代の稲作は耕地整理や機械化により収穫後二十五日かけて新米が市場に流れる。
コンバインで収穫、脱穀、選別まで済ませた後熱風乾燥する所が多いが、大型農機が入れない山間部等では収穫後二〜三週間天日干しを行い水分量を二十五%から十五%以下にした後脱穀、脱ぷ(籾から玄米を分離)している。
戦国チートでは米を増産しておきながら千歯扱きを導入すると後家○しが〜と嘆く作品が非常に多いが、大正末期でも千把扱きで脱穀するのに一反辺り約一週間掛かっている。
扱箸で一日十時間かけて脱穀出来るのは男で十二束(一二十把)、女で九束(九十把)、期間は一ヶ月。
元禄年間(一六八八〜一七〇四年)に発明された千把扱きは一時間で四十五把、足踏み脱穀機で二百五十〜三百把。
一日仕事が午前から三十分。
唐箕による選別を考えても足踏み脱穀機なら一反の米の脱穀が二日で終わる。
海外では回転ドラム式の脱穀機は十八世紀末に開発されている為中世には無い。
それまで製材、製粉と共に脱穀を担っていた水車の利権は領主が持っている上に現場の管理人に恨まれる為代案がなければ導入は厳しい。
日本では唐箕も千歯扱きや足踏み脱穀機、籾摺り機も場所を取る上に高いので一家に一台という訳にはいかないが……。
二期作が出来る高知以南の太平洋側や蕎麦、麦と三毛作を行う畿内以南では大歓迎されるだろう。
回転胴に打ち込む針金は鎖帷子や和鋏があるので製造は難しくない。
貞享二年(一六八五年)に江戸幕府は絹織物の輸入量を従来の三分の一に減らし、元禄十年(一六九七年)以降は国産糸の増産を推進した。
明治以降米農家の副業として養蚕が奨励されたが、その源流はこの頃に遡ると見て良い。
そんな蚕の繁殖時期を見てみると、
春蚕(しゅんこ、はるごとも、五~六月)
夏蚕(七月〜八月初頭)
初秋蚕(と呼ばれているが何故か七月下旬から八月)
晩秋蚕(八月下旬から九月)
晩々秋蚕(九月中旬から十月)
初冬蚕(九月下旬から十月)
質量共に田植えと前後する春が最上で晩秋蚕がそれに次ぐ。
晩々秋蚕以降は関東以南の暖地だが新鮮な桑が採れないので除外。
蚕が孵化から糸を吐き出すまで大体二十五日。
二〜三日かけて完成した繭を茹でた後の乾燥後に出荷する為総計三十〜四十日を要した。
孵化してから二〜三齢(生後六〜十日)までは病気に罹りやすいので個々の農家に配布されるのは三〜四齢(生後七〜十一日)以降。
各地の養蚕家と米農家は稲の乾燥期間と配布後の育成期間を合わせていた。
関東で二毛作を行う場合九月に米を収穫、十一月に麦を蒔くのだが間を埋める野菜として水菜とレタス(チシャ)、ほうれん草がある。
水菜は植付けの一週間前、ほうれん草は二週間前に苦土石灰を畑に撒く必要があり九〜十月に種を蒔き、十〜十一月に収穫と地力の消耗と台風を抜きにしてもタイトスケジュールではあるが理論上は栽培可能。
レタスは苗から育てた場合一ヶ月で収穫出来る為、稚苗を買って栽培した方が労力は少ない。
栽培時期、期間が上記と同じチンゲンサイが国内に入ってくるのは日中国交正常化後の為割愛した。
地力を消耗する上に手間がかかり単価の安い野菜より、フンが肥料になる養蚕の方が農家にとっては有難い(温室の項でも述べたが紡績屑が熱源になる)
椎茸の原木栽培は期間が長く、菌が付くか博打でしかない上に食害が田畑の比ではない為副業には向かない。
参考サイト
農業機械化の歩み
https://townweb.e-okayamacity.jp/c-tanakanoda/tanakanoda-mukashi/wagakyoudo/nougyoukikaika/
クボタ
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/history/tools/threshing.html#:~:text=%E3%83%BB%E8%B6%B3%E8%B8%8F%E8%84%B1%E7%A9%80%E6%A9%9F(%E3%81%82,%E5%9B%9E%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89%E8%84%B1%E7%A9%80%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
養蚕サイクル
https://www.naro.affrc.go.jp/archive/nias/silkwave/hiroba/Library/SeisiKiso/chapter2.htm#:~:text=%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%81%AF%E3%82%A8%E3%82%B5%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A,%E3%81%8C%E3%80%81%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%87%8F%E3%81%AF%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82
https://adeac.jp/takanezawa-lib/text-list/d100030/ht000420




