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迷走した日本の戦車開発

 取り上げるのは㍉界隈でよく取り沙汰されるチハではなくハ号である。


 ハ号は35年に制式化された軽戦車で、


 ・36.7口径37㍉砲(初速574m/s)


 ・最大装甲厚12㍉


 ・最高時速40km/h


 ・全備重量7.4t


 ・115馬力


 の性能だが、後継車の九八式軽戦車ケニは


 ・45.9口径37㍉(700m/s)


 ・最大装甲厚16㍉


 ・最高時速50km/h


 ・7.2t


 ・130馬力


 である。


 (二式軽戦車ケトは初速が785m/s、ケニと比較して重量が0.15t増加した事を除けばケニと同一)


 新しい方が性能が上なので火力、防御力、機動力全てで劣っているは当たり前だが、この内機動力はエンジン出力が小さいので仕方ないにせよ後継の方が車重が軽いのに装甲厚が上というのは……。


 設計の不味さは砲塔にも及び、普通はまず設計図から木型を造り内部構造を体感、把握するのだが、軽戦車開発に於いて量産前に指摘された点を反映した形跡は見られない。


 九五式軽戦車の砲塔が狭く後部機銃を下ろしているにも拘らず、後継の九八式も砲塔が狭い点は同じだったのでそもそもシステムがなかったのだろう。


 航空機には上記システムが存在したのだが……。


 九二式重装甲車や九四式軽装甲車で溶接を採用済みで、ケニの主砲は34年に制式化された歩兵が運用する速射砲を車載化した物の為、国力とは関係無くケニ並みの主砲、ケトと同じ防御力と居住性、生産性※1で、武装強化分を引いた重量、ハ号と同じエンジンでやや速い軽戦車を35年に製造出来たのだ。


 M3軽戦車と1500mの距離を挟んで交戦したペグーでは16㍉あれば防げた。


 ただ車体側面(12㍉)を晒したら抜かれる。


 加速力は落ちるが重量をハ号試作車と同じ7.5tにするなら側面装甲を15㍉まで増やせる。


 より大型の架橋資材になるが※2、後継は試製九七式47㍉砲を載せたケホや出来ればT-80の軽防御版が欲しかった。


 38年に完成した試製対戦車砲の初速は730m/s、ケホの戦車砲は740m/sとチェコの43.4口径P.U.V. vz. 36 47㍉砲(775m/s)やベルギーの33.6口径47㍉砲(720m/s)に近い性能を持っており、ケニやチホが完成した翌39年時点で統制型エンジンが過給器無しで130馬力を発揮しているのでノモンハンには間に合わなくても開戦前にケホ相当の軽戦車を戦力化出来たのだが……。


 物はあっただけに実に残念である。


 ※1……背面装甲はハ号やケニより厚い12㍉で、砲塔が円筒形の為ケニの円錐形より空間が広く取れ生産しやすかった。


 ※2……耐重橋と呼ばれる耐荷重8tの架橋資材を必要とした。

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