旧日本軍の対空火器と戦後の艦砲
本稿は以前書いた『太平洋戦争時に戦力化可能な兵器の技術的限界について』を補完する物である。
戦前にボフォース40㍉機関砲と半導体を運用する作品が一部の仮想戦記に見られるが、殆どの場合艦砲は戦中の物ばかりである。
悪い訳ではないが、もう少し背伸び出来ないかと思う。
米海軍は人力給弾式の半自動砲であるMk.33(弾薬筒重量11kg)
毎分45〜50発
最大射程12㎞
を特攻に遭遇後の44年末から開発開始、1年足らずの45年9月に完成させている。
同じ物を開発出来ても体格が劣り弾が重いので発射速度は落ちるが……。
イタリアのオート・メラーラ社はボフォース60口径40㍉機関砲を参考に、57年に開発したが故障の多かった76.2㍉連装砲を58〜62年にかけて単装砲化した62口径76.2㍉砲は、
毎分発射速度55〜65発
初速900m/s
最大射程18.4㎞
を記録した。
日本軍が日中戦争時に鹵獲したボフォース56口径75㍉高射砲をリバースエンジニアリングした四式高射砲は、
初速850m/s
最大射程は17㎞
である。
日本陸軍は42年12月にB-17対策として75㍉機関砲ホ501の開発を開始。
同砲は、
毎分60発
初速500m/s
の性能を持ち、敗戦までに僅か2門だけとはいえ製造している。
初速から判断するに31口径の三八、九五式系列(510m/s)の砲身を流用したのだろう。
ホ501は弾倉式でクリップ式のボフォース機関砲と関連性はないが反動利用という点では同じ。
日本海軍が開発した九八式八糎高角砲(弾薬筒重量11.9kg、砲弾重量5.99kg)は、
毎分最大26発
初速900m/s
13.6㎞
である。
ボフォース75㍉高射砲や40㍉機銃を発表と同時に採用していれば、それらを参考に開戦前にMMI砲相当の速射砲を開発出来たかもしれない。
冷却方式は水冷だが、日本は34年から水冷ガソリンエンジンを載せた九四式六輪自動貨車を量産している。
大口径砲に目を向けると、日本陸軍が1928年から十四年式十糎高射砲を自動装填化しようとしており、別の流れではあるが33年から35年末にかけて65口径の105㍉高射砲を試作している。
同砲は45°で射撃時に後座した砲架を破損した為これ以上進展しなかったが、更に地面を掘り下げていれば翌36年には採用されたかもしれない。
陸海軍間で口径を統一していれば数年早く長十㌢砲を採用出来たのだが……。
戦後に登場した100㍉級の艦砲に53年から61年にかけて仏で開発され、同年に採用された反動利用の砲がある。
これは毎分30発の発射速度を目指したものの重量過大の為試作に終わった陸軍の105㍉砲をスケールダウンした物で、発射速度が倍加している事から揚弾筒と給弾手を倍増させている事が判る。
64年に登場した改良型は60発から78発に向上している。
上記砲は55口径で、
初速は870m/s、
最大射程17,000m(仰角40°)
と、九八式十糎高角砲が
初速1000m/s
最大射程19,500m
である事を考えると投射能力と砲身寿命以外は劣っている。
同砲は米軍のMk12、5インチ砲及びボフォース57㍉艦砲の後継として開発された物。
単装砲で22tと長十㌢砲の砲架型20.4tよりやや重いが、秋月型に搭載された砲塔(33t)の2/3である。
トラック諸島やマリアナ沖で13kgの砲弾を毎分78発のペースでぶっ放す秋月型を見たかったが……。
重量の関係で門数は半減するが投射量は差し引き倍である。
それでも25kgの砲弾を毎分21発撃つ連装砲を8基積んだアトランタの半分に過ぎない。
流石に同重量×毎分15発×5門のフレッチャー級には勝てるが……。
日本陸軍は1945年5月に五式砲戦車用に開発された自動装填装置付きの55口径105㍉砲を完成させている。
上記の自動装填装置は三式十二㌢高射砲由来で仏のそれより性能は劣るが近い物は作れたのだ。
尚ボフォースは1950年代に40秒間に52発発砲可能な120㍉砲(艦載版28t)や67tの連装砲を開発している。
70年代に登場した射程50㎞の8インチ単装砲も俎上に上がりそうだが、前提としてデモイン級の主砲を開発せねばならないので割愛した。
参考文献
幻の巨大軍艦、続・最強兵器入門
参考サイト
平均身長
https://honkawa2.sakura.ne.jp/2196.html
艦砲日米比較
http://www.jam.bx.sakura.ne.jp/column/column03.html
艦載兵器
http://www.navweaps.com/sitemap.php
wiki
Mk.12 5インチ砲、九四式六輪自動貨車、八九式十二七糎高角砲、九八式十糎高角砲、九八式八糎高角砲、十四年式十糎高射砲、四式七糎半高射砲、フランスの100㍉艦砲、Bofors 75 mm Model 1929、オート・メラーラ76㍉砲
他艦これの小ネタ集




