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温室その2とソルベイ法他

 温室にセレナイトや紙が用いられたのは前話で述べた。


 透明度が高く窓に用いられる鉱物として他に雲母があるが、探し方が悪いのか何故か温室関連の情報には出てこない。


 石油ストーブやガスコンロの覗き窓に使われる位断熱性が高いので保温性も優れているのだが……。


 ただ西欧と異なり国内では窓に使える大きさの雲母は産出しない。


 人工的に合成する方法もあるが、採算ベースに載る合成法が登場するのは戦後で、ゲルマニウム半導体と同じ製法であるゾーンメルト法等を用いる為割愛する。


 時計の針を戻す。


 17世紀になるとガラス原料をソーダ灰から木炭と酸化マンガンに変更した事でガラスの透明度が上がり、それまでは南面だけに張っていたのが全面に拡大するとともにセレナイトを置き換えていった。


 日本にもオランダから製法が伝わったものの、それは享保の改革が始まる1716年以降で、ビードロや金魚鉢として一般に普及するのは1780年代後半である※1


 1833年、英国の医師ウォードは蛾の蛹を収めていたテラリウム内でシダ植物が育つ事を発見。


 当時ロンドンは産業革命に伴う光化学スモッグの発生で自然に生えていた植物が枯れていたが、ガラスで遮蔽された為無事だった。


 この事実は好評を持って迎えられた。


 プラント・ハンターが世界中の植物を潮風に晒される事なくロンドンのキュー・ガーデン等に運ぶ事が可能になったのだ。


 従来は一部の種子や球根しか長距離の輸送に耐えられず、一例を挙げると当時ロンドン〜シドニー間は4ヶ月掛かっていたが、無事に着いた植物は1/20に過ぎなかった。


 ところが水槽の中の植物に5〜6週間に一度の頻度で水やりするだけで駄目になったのが1/20と生存率と死亡率が文字通り逆転したのである。


 同航路では航海中は一度も水やりされていなかったにも拘らず、好ましい状態を保っていた物も存在したという。


 英国が清からインドにチャノキを、ロンドンのキュー・ガーデンからマレーシアにゴムノキの苗木を新鮮な状態を保ったまま持ち出せたのもテラリウムあっての事。


 動物の場合定期的な世話が前提だが鳥は半年、蛙は十年生きた記録が残っている。


 日本に適用する場合、一般に広まる1780年代後半がベストと書きたいが大船建造の禁がそれを阻んでいる。


 ならガラス張り温室はというと登場するのは明治以降で、ゴーグルの国産化が1884年、箱メガネの登場や地方にも窓ガラスが普及するのがソルベイ法に切り替え、関東大震災の復興需要で量産されるようになってからと遅い。


 ガラスの普及は電解法の採用も理由の一つだが、電気代が高い為ソルベイ法が主流だった。


 ソルベイ法はコークス、石灰、食塩水があればガラスが量産出来る上に副産物の塩化カルシウムは除湿剤としては最高の性能を持つ。


 1872年に工業生産が始まっており、ゴムの苗木の輸送は77年の為使用されたと思われる。


 温室にガラスを導入出来れば紙より初期費用は高いものの促成栽培の期間が延び、夏を除いて居住性と食生活が向上し副産物で衣類がカビや虫にやられにくくなる等※2生活レベルが向上する。


 尚、1957年に開発されて現在主流のフロート法は溶けた錫の上にガラスを流し、酸化を防ぐ為に空気を窒素と水素に置き換え、徐々に冷やしながらダイヤモンドカッターで切断している。


 ガラスを融かす炉が全長45m、錫の上を延ばすのに50m、徐冷に100mの距離と重量にして1200トン以上のガラスが必要なので市場開拓とインフラ整備も必須。


 日本の場合ダイヤモンド鉱山は無いが次に硬いコランダムは大分の木浦鉱山で採れた。


 同鉱山は錫も産出したのでインフラ他を整備出来れば挑戦してみるのも有りだろう。


 ※1……浮世絵師の喜多川歌麿が『金魚玉を持つ少女』を描くのが1787年、『ビードロを吹く女』は1790年頃。


 ※2コークス製造時に生じるナフタレンはナフタリンの別名。


 参考文献


 21世紀こども百科大図解


 参考サイト


 赤外線吸収率


 https://www.heat-tech.biz/products-epl/eph-gj/eph-gj-ek/1181.html


 ガラスの歴史はいつ始まった?


 https://harumado.jp/%E7%AA%93%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%81%AE%E8%B1%86%E7%9F%A5%E8%AD%98/13039/#:~:text=%E7%AA%93%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%81%8C%E6%99%AE%E5%8F%8A%E3%81%97%E3%81%9F,%E3%82%82%E6%99%AE%E5%8F%8A%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82


 ソーダ工場の歴史


 https://www.jsia.gr.jp/history/


 箱メガネ


 https://www.town.minamisanriku.miyagi.jp/museum/life/article.php?p=202#:~:text=%E6%9C%A8%E7%AE%B1%E3%81%AE%E5%BA%95%E3%81%AB,%E9%80%8F%E3%81%8B%E3%81%97%E8%A6%8B%E3%81%9F%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82


 PDF


 英国の温室の歴史と椰子のイメージ


 温室ってどんなもの?


 wiki


 ウォードの箱、テラリウム、ミーカガン、ソルベイ法、フロートガラス、木浦鉱山

滋賀はマンガン鉱山が多く、岐阜は木材と亜炭の宝庫。


京都には無煙炭と蛍石に珪砂、愛知県にはソーダ灰があるので六角や織田家が強化される模様。

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