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ポキポキモーター

 未来から来た猫型ロボットの秘密道具ではないが、題名のそれは1993年に三菱電機が開発したモーター。


 従来の4〜8割の大きさ、重量で同じ性能を叩き出す上にエネルギー効率が3〜10%UPする代物である。


 モーターはキャタピラやカセットテープのリールのように円の内側に飛び出している突起にコイルが巻いてあるが、従来は内部にノズルを突っ込み巻いていた。


 銅線を吐き出すノズルの可動域がデッドスペースとなる上にコイル✕2本の配線の半田付けを人が行っており、モーター製造自動化を阻んでいたが三菱電機は89年にモーター内部を歯車状とし、それを囲む外装に分割、歯車の凸部分に銅線を巻いた後外装で包む事で作業空間を確保すると共にコイル巻きの自動化&高速化に成功。


 生産速度が6倍になったという。


 93年には更に進歩し、突起と一体化したモーターの外装を巻き簾状に成形、表裏を反転させ外部に解放。


 コイルを巻き終えたらモーターその物を巻き両端を接合、銅線も一筆書きのように巻き付ける事で配線の半田付けもモーター1つに付き2本で済んだ。


 隙間が減った事で性能を保ちながら磁石の使用量を従来比20〜30%、銅の使用量を50%減らす事が出来た。


 更に容積を占めるコイルの割合が40%から70%。


 体積が従来比8割に減少したモーターは64%から87%に上昇したという。


 別の会社では外装に関節を設けずコイル毎に完全に分割し、レーザーで溶接した物は容積が従来の1/3で済んだ。


(但し半田付けは自動化されたもののコイル数✕2のまま)


 レーザー溶接は前提条件として半導体より登場が遅い光ファイバーの開発が必要な為、戦前に再現するハードルは極めて高いがポキポキ式であればNC工作機械の導入が前提だが導入可能。


 ただ90年頃登場した内外分割方式は巻き付け速度が5000rpmなのに対しポキポキ式は1200rpmに落ちている。


 戦時中に実用化された工作機械の回転速度は1200rpmなので、大きさを無視しても再現しやすいのはポキポキ式と思われる。


 配線の半田付けに銃弾と競合する鉛や戦略物資の錫を使う事、資源削減率より生産速度の方が上な事や消費電力も考慮するとモーター製造は生産量より省資源、省エネを優先して巻線機一台で熟す事になるだろう。


 鉄心分割モーターが普及した日本で消費される銅は2017年時点で149.9万t。


 その内電線が69.1万tで約7.2%(5万t)を電力部門が消費していた。


 日本全体の消費電力の半分がモーター駆動に費やされているので戦前も比率が等しい場合銅消費量の5%は削減可能。


 電話線や歴史的価値の高い鐘、二宮金次郎や忠犬ハチ公が溶かされずに済むか、若しくは真空管も銅素材不足が緩和され性能を額面通りに発揮出来たかもしれない。


 参考PDF


 ・ポキポキモーター


 モーターコア打抜き金型系統化調査


 分割鉄心によるモーター製造技術


 技術のモジュール化と転用の理論


 ・戦時中の工作機械


 日本の工作機械を築いた人々


 ・銅消費量


 銅の需給動向(2017)


 〃     (2018)

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