重油とレアメタル
重油はアスファルトを筆頭に不純物を含んでいるが、その中に重金属も含まれている。
現代技術でも捕集の難しい水銀は兎も角、灰分から含有量の多いバナジウム、次いでニッケルを回収する技術は遅くとも70年代にはあった。
戦前のバナジウム消費量のデータは見つからなかったが1955年に335t、最早戦後ではないと謳われた56年に414t輸入しているので戦前は最大でも400t以下と見て良いだろう。
まあバナジウムを0.3%含む砂鉄は戦時中の採掘量が50万tに達し、精錬時に75%以上回収出来るので良いとしても、ニッケルは国内で採れないので満洲油田開発(日本の技術では掘れないがシェル石油と合同開発必須)と並行して何としても導入したい。
炉に残った灰に食塩と炭素を加え焼結。
上記に塩素を加え生成した塩化バナジウムを除去。
残渣物を酸化後水洗すると酸化鉄とニッケル水溶液に分離する。
飛散灰にpH4相当の硫酸を加え濾過。
濾液に硫安を加えるとニッケルが析出する。
飛散灰からの回収技術が開発されたのは76年だが、75年時点で日本は発電用に年間3600万キロリットルのC重油を消費しており、その灰(炉内、飛散問わず)から2000〜3000tのバナジウムと300〜600t程度のニッケルが回収可能と試算されていた(産油地により異なるが中国産原油はバナジウム含有量が少なくニッケル含有量は中程度)
時計の針を戦前に戻すと、30年代の電力は水力発電が主だったが、日本は平時で年間90万キロリットル、戦時で360万キロリットルのC重油を消費していた。
戦時中の金属ニッケル生産能力は5000tだったが資材、労働力不足の為実際は2000tに過ぎなかった。
年間回収量が平時11t、戦時45tでは完全に賄えないが、国内では大江山、大屋鉱山(両方共敗戦翌日閉山)以外ニッケルが出ないので無いよりマシである。
焼け石に水だが、33年からニッケル貨を導入、開戦までに1250t備蓄していた内の8割を使おうとした海軍に話を持っていこう。
参考資料
ニッケル備蓄量と中国産原油の金属含有量以外PDF
重油燃焼灰からのバナジウム、ニッケルの回収
https://acrobat.adobe.com/link/review?uri=urn:aaid:scds:US:8203c2d4-4841-30fc-97cf-157a703caca0
大日本帝国における燃料消費・需要に関する政治史的考察
https://acrobat.adobe.com/link/review?uri=urn:aaid:scds:US:25611c38-732f-3fb3-9e61-61455fb8ab83
戦争と石油(2)
https://acrobat.adobe.com/link/review?uri=urn:aaid:scds:US:ea7c1fbc-71f7-3457-b661-5d07afe7c302
国産ニッケルと国産コバルトの生産と利用の展開
https://acrobat.adobe.com/link/review?uri=urn:aaid:scds:US:6ee91865-4de2-3ba4-a589-2cf92c526afe
ニッケル備蓄量
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52695?page=2
中国産原油の金属含有量
http://ja.china-found.com/info/basic-knowledge-of-petrochemical-enterprises-71254051.html




