秋月型量産のハードル
自身も含めた旧軍オタの間では、秋月型防空駆逐艦をもっと造るべきだったと言う論議を時たま見かける。
賛同したいが計算機の項でも見たとおり、頭脳に当る九四式高射装置の生産能力が月産5台ではガワだけ造っても無意味。
装備化が始まるのは37年6月以降だが、制式年度と同じ34年に生産を開始したとしても700未満。
日本海軍は軍艦1584隻、特設艦船1400隻、雑役船300隻を保有したけれども、軍艦籍の艦艇にすら各艦に2基装備させる事は出来なかった。
そんな高射装置の値段は当時の価格で1台13万6千円。
ソロモンでワシントンやサウスダコタを仕留め損なった原因となる家並みの値段の魚雷より10倍以上高い。
大和の建造費が予算が下りた年の国家予算の3%、1億3780万2千円。
大和の約1/1000。
果たして海軍内部の多数派である鉄砲屋や水雷屋は予算減少に、貿易赤字から脱したばかりの大蔵省は銅や史実以上に摩耗するであろう工作機械の追加購入にそれぞれ納得するだろうか?
機体寿命が一年の航空屋からも攻撃されるのだが……。
増産するならせめて高射装置を近代化しよう。
黎明期の電卓の価格はパラメトロンを除けば(※1)国産自動車と同じなので、知識と時間があれば九四式の1/40以下の値段でより軽く高性能の物を造れる。
電卓と一部重複するがリレーが最も早く簡単に生産可能。
※1……64年発売のパラメトロン電卓、アレフゼロは日産のブルーバードが54万円の時代に80万円もした。
同じ年に発売されたSHARPのゲルマニウムトランジスタ電卓、CS-10Aは53万5千円、月産千台。
64年当時最も安い電卓はcanonのこれもゲルマニウムトランジスタで出来たキャノーラ130で39万5千円。
当時の大卒初任給は2万1500円である。
参考サイト
日本海軍の高射装置
https://www17.big.or.jp/~father/aab/kikirui/navy_director.html#type94
電卓戦争
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/history/calculator.html
https://www.icom.co.jp/personal/beacon/electronics/752/




