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産業革命以前に現代文明が成立可能な地域の考察

 ゴムを調べていてふと、電気文明が史実以前に可能な地域は何処か?


 と思った。


 最低でもゴム、硫黄、鉄もしくは磁鉄鉱、銅が勢力圏ないし近隣に産出し、その加工技術がなければならない。


 まずはゴムの原産地南米。


 インカ帝国は最盛期南米の北半分を領し、ゴムの木が生える熱帯雨林から硫黄や銅を産出するアンデス山脈をも含んでいた。


 が、南米の場合電気文明成立へのハードルが3つあった。


 1つは鉄の精錬技術が無く、隕鉄という形でしか鉄を持たなかった事※1。


 もう1つは車輪の概念がない事。


 最後は青銅や白金等の金属器は装飾品止まりで一般に普及していない事。


 スペインの侵略以前の南米は素材があってもゴムと硫黄以外希少で技術、概念もないので受け容れられる土壌がない。


 雲行きが怪しくなって来たのでまずは前提条件の1つ、各種素材の歴史を辿ってみる。


 最古の磁石は5000年前にギリシャ南東部のマグネシアで発見された※2。


 同時期にキプロス島で銅が発見されている。


 ゴムは現地にユーフォルビアが生えてるが産業ベースにする程収量がないのかイボを取る薬と観賞用にしか用いられていない。


 面積比平均収量がパラゴムノキの1/7しかないがヨウシュアキノキリンソウも自生しているので採れなくはない。


 硫黄も近隣の島々で採れる。


 ではその頃のギリシャで産業革命を起こせるかといえば否。


 理由はコスト。


 3600年前に成立したヒッタイトの時代になっても(製法を秘匿したのもあるが)鉄が同じ重量の金と交換されていたのである。


 ここも普及以前の問題だった。


 なら南米以外にゴムが豊富で鉄器時代を迎えた地域はどうか? 


 インドは紀元前6世紀に鉄器時代を迎えている。


 当時のインドは戦国時代で、インドゴムノキが分布している北東部には仏陀の時代にも登場し鉄鉱石を産するマガダ、共和制のヴァッジ、南インドやミャンマーとも交易、影響力を持つアンガの3ヶ国があった。


 マガダは鉄が自給出来、アンガは硫黄を交易で入手可能で銅も眠っているが20世紀レベルの技術がなければ掘れないので無理※3。


 では日用品に上記品目が複数普及済みで、転移ないし転生者の一押しで史実以前に電気が使える時代、地域は何処か?


 北宋が最もハードルが低いと考えられる。


 何故かというと質量共に18世紀中の英国を凌ぐ鉄を造り磁石も人工的に製造、インドゴムノキが自生しているベトナム北部の王朝李朝と交易しているので原料の安定供給が可能な為。


 行きは途中まで黒潮に乗れる上に羅針盤もあるので北米大陸に到達出来る。


 中国で鉄が生産されたのは春秋戦国時代だが本格的に普及するのは前漢以降。


 後漢の頃には(占いとしてだが)磁石を利用するようになり、3世紀の六朝時代には方位磁石の原型が登場するが以後の改良は宋王朝までストップ。


 宋以前の中国を省いたのは磁石の製造技術がない事、決済に使う銅貨不足に悩んでいた事※4、領土内のインドゴムノキの栽培適地が李朝より狭い為※5。


 サバイバル術に長けるか磁石開発に携わった理系を後漢末~三国時代の交州※6に送ったら面白いかもしれない。


 ゴムの劣化防止に必要な硫黄は台湾に行けば採れるし、フェライト磁石の原料の1つ、バリウムは既に現地でガラス製造に使われているので調達は楽。


 粉砕、着磁方法は課題だが……。


 電磁気学分野では無いので脱線するが、後漢時代の交州は真珠をガラス玉や鼈甲と共に中央に献上しているので時間は十年はかかるが養殖に挑戦するのもあり。


 注射器やチューブ、ゴム手袋等の医療器具や遠心分離機、寒天も作れるので衛生知識を広めつつ麻酔薬を造った華佗とコンビ組んだら、皮膚を溶かして侵入する日本住血吸虫や医原病による死亡率は下がる。


 電化するとそのあおりで紙幣や鉄貨への切り替えが早まるだろう。


 ※1隕鉄製の仮面やハンマー等の二次加工品は発見されているが磁石は未発見。


 ※2マグネットと後に同地で発見されるマグネシウムの語源。


 ※3アンガは6世紀中頃マガダの侵攻で滅亡。


 ※4中国の銅貨不足は春秋戦国時代から20世紀まで続いた。


 ※5三国時代の呉を除く。


 ※6現在の中越国境付近。


 以下参考文献。


 兵器と戦術の世界史


 戦争の世界史


 参考サイト


 中国の製鉄技術史


 http://www.isc.meiji.ac.jp/~sano/htst/History_of_Technology/History_of_Iron/History_of_Iron_China01.htm


 指南魚


 https://www.jasnaoe.or.jp/mecc/fushigi/report/report028.html


 羅針盤


 https://www.magever.net/magnet-history/


 ガラス


 http://inoues.net/science/wat.html


 wiki


 鉄器時代、中国の貨幣制度史、フェライト磁石、十六大国。


 ゴムやこの話を書くきっかけになった作品。


 真・やる夫†無双 ~白色演義~


 http://kanketsuyaruo.blog.fc2.com/blog-entry-1456.html


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