圧力鍋と椎茸、その他
森林資源保護の為、燃料に粉末状の石炭を固めた豆炭や木炭の粉末を布海苔で固めた炭団を用いる作品があるが、圧力鍋はどうか。
重く、途中で様子を見る事が出来ないので万能ではないが推す理由は、
・煮沸消毒では殺せない細菌の芽胞を滅菌可能
・上記と関連するが椎茸の菌床栽培に必要
・蒸気機関より圧力が低く小型の為、導入前の練習用に最適
・調理=拘束時間が減る
為。
最低で121℃、2気圧の状態を15分保持すればボツリヌス菌や夏の室温カレーの中で増えるウェルシュ菌の芽胞も死滅するので圧力鍋で調理すれば食中毒の可能性が減る。
量が多いか火力に不安があれば線香を使った火時計で加熱時間を長めに取れば良い。
熱変性に弱いゴムやプラスチックは殺菌出来ないのが欠点だが、作中年代を考えればそもそも普及していないので問題ないだろう※1。
漆は85℃までしか保たないので漆器は間違っても入れてはいけない。
戦国チートの定番、椎茸栽培は原木栽培の場合ほだ木の伐採から乾燥、菌を植え付けてから椎茸が生えてくるまで2年かかる。
上記より食感も香りも弱いが、3~6ヶ月で栽培出来る菌床栽培を実施するのに菌の培地の消毒に圧力鍋が必要なのである。
以下菌床栽培方法。
①米糠、水、クヌギやクワ等のおが屑を重量比1:2:3の割合で混ぜる(握りしめて水が滲む程度。この時米糠とおが屑を先に混ぜるとムラが出ない)
②①を瓶の容積6割まで逆さにしても落ちない位の固さになるまで詰めた後、菌糸が伸びやすいように崩れない程度に穴を空け、口を布で縛る。
③瓶を2/3程水を張った圧力鍋の中に入れて蒸気が出てから60分加熱。
④圧力と温度が下がったら鍋から取り出し、室温になるまで更に冷ます。
⑤周辺をアルコール等で殺菌、瓶の口と種菌を入れる道具を火で炙り更に滅菌。加えて他の菌が入らないように火の上昇気流の中で種菌を植える(最悪椎茸の欠片でも可)
⑥18~25℃、湿度80%前後の環境で1日に1回表面が濡れる程度の水をやる。
⑦3ヶ月経ったら上記の環境で日の当たる場所に置く。
⑧茶色く小さい塊が生えて来たら15℃以下で高湿度の環境に移動して同じ頻度で水やりしつつ、10日から2週間程待って収穫。
⑥⑦の工程で白いのが出てきたら成功。
青や黒っぽいのが出てきたら周囲に広がらないうちに廃棄。
収穫後は培地が完全に浸る程水を張り半日から一日は吸水させ、休ませる。
2、3回は栽培出来るので1年は使える。
生えてこなくなったら堆肥にしよう。
冷蔵庫が登場する前の日本の夏で15℃前後かつ多湿の空間は洞窟しかない。
鍋は圧力に耐える為最低でも厚さ2㌢は欲しいが鐘や風呂釜より小さく、蒸気機関に比べれば圧力は低いので作るのは難しくないだろう。
蒸気機関の練習も兼ねて登場しても良いのだが見た事がない。
圧力鍋は蒸気機関やゴムの産業利用より誕生が早く、最初期は器具というより設備とも言える大きさだったので無理もないが※1。
識字率がほぼ100%の現代でも爆発事故が起きるので安全性がネックだが、水や具材の入れ過ぎ、蒸気抜きを待たずに蓋を開けたり水を掛けなければ良い。
調理時間が数時間から数十分に減るのは大きい。
※1……圧力鍋は1679年にドニ・パパンにより発明。
パパン氏は後(1690年)に蒸気機関も発明した。
ゴムが原産地以外で利用されるのは1736年以降。
参考文献
読むクスリ。
参考サイト
圧力鍋
https://news.mynavi.jp/techplus/article/dokodemo_science-42/
椎茸
https://sakanakinoko.hatenablog.com/entry/20211119/1637328958
線香
https://www.nipponkodo.co.jp/shop/products/list?category_id=2000#:~:text=%E7%B4%8414cm%E5%89%8D%E5%BE%8C%E3%81%AE%E9%95%B7,%E3%81%AF%E7%B4%8440%E5%88%86%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
以下wiki
豆炭、炭団、オートクレーブ、圧力鍋、菌床栽培、蒸気機関、ドニ・パパン。
栽培期間が夏の場合培養中は温度差の少ないジーアポットが最適だが室内に置けば良い話だった。