医療の補足と冷蔵方法
前話で水酸化ナトリウムだの塩素だのが出てきたが、まずイオン交換膜がないと電気分解が出来ないので。
日本というか東アジアの場合、蒟蒻の凝固剤として使われている炭酸ナトリウムを消石灰や水と混ぜて水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を製造。
苛性ソーダは効果は落ちるものの灰で代用出来るが、石鹸に使う他に麻や綿等セルロースを煮てそれに二硫化炭素を混ぜる事でビスコースを作れる。
二硫化炭素は赤熱中の木炭かコークスに硫黄の蒸気を吹き付ければ作れるが、
・皮膚から吸収されやすく体内に入ると視覚障害、次いで昏睡を起こす。
・発火点、引火点がガソリンより低く燃えやすい(発火点90℃、引火点-30℃、ガソリンは300℃、-20℃)
ので、空気の出入りを絶ち蒸し焼きにしなければ手に入らない。
メタンを炭素源にシリカ、またはアルミナを触媒として加熱しても作れるが炭の製造法を流用可能な木炭、コークス方式が楽。
ビスコースはノズルで吹き出し硫酸で中和するとレーヨンに、スリットから吐き出すとセロハンになる。
更にアルコールを添加、洗浄すると透明度は上がるようだ。
ノズルには酸やアルカリに触れる為化学的に安定した白金が必要。
海水淡水化も可能な製品は60気圧以上の圧力に耐えなければならず、実現したのは開発から10年経った1960年なので異世界では再現不可能と判断。
セロハンは塩分だけでなくウィルスも通さない為、人工透析や食品の包装にも用いられている。
食塩水の電気分解に用いるイオン交換膜もセロハンで代用出来るのでようやく塩素を生成出来る。
透明なセロハンは可視光線や赤外線透過率が95%を超える。
冷蔵方法は、乾燥地帯なら気化熱を利用したジーアポット※1や放射冷却を用いた冷蔵庫が通年で利用出来る。
ジーアポットの作り方。
①穴の空いていない大きい素焼きの壺と釉薬を塗った小さい壺を用意。
②大きい壺の中に小さい壺を入れ、間に砂、次いで水を小さい壺に入らないようにしながら入れる。
③上記を風通しの良い日陰に起き、素焼きの壺の隙間以外から水が逃げないように蓋をする。
湿度が20%以下の環境では15℃台だが条件が良ければ4℃台に下がるので野菜や薬品を保存出来る。
輻射熱を吸収する為間違っても日当たりに置いてはいけない。
岩塩が採れる地域なら重量比塩3、水1の率が最も温度が下がる。
放射冷却式冷蔵庫の作り方、非電化冷蔵庫より。
放射冷却式冷蔵庫の作り方。
①4つ足で金属製の貯蔵室を作る。
②貯蔵室が入るサイズの箱を作り、外箱の天辺を熱交換の為ガラスにする。
③天辺下面に触れるまで水を入れる(貯蔵庫がホテルの小型冷蔵庫並みの場合200l)
④水の入った箱の周りをおが屑等断熱材で覆う。
以上で完成である。
周囲は断熱材で覆われている為外気の影響を受けず、食品の熱は金属を通して水に逃げ、対流によって熱は上部に溜まるので問題はない。
晴天の夜が3日に1日以上あれば、真夏の昼でも庫内を7~8℃くらいには維持出来るようだ。
ジーアポットは湿度が80%、放射冷却式冷蔵庫は65%を超えると冷却機能を失う為、多湿になる夏季の日本では上記二種だと20℃台前半が限界で、炭、シリカゲル、重曹を追加しても効果が薄い。
ナーロッパではほぼマジックボックスや氷魔法を封じた魔石冷蔵/凍庫だのがあるので出番はないだろう。
近隣だとニ種類の冷蔵庫の適地は大陸内陸部か。
断熱材は天然素材ではウールか炭化コルクの二択しかないので非常に高価。
遊牧民族向きと言える。
日本ではコナラの仲間のアベマキからコルクが採れるが、気候の関係上15℃の井戸水に漬ける方がマシ。
保冷にはまだ足りないので氷室を使うしかない。
現代の冷蔵庫再現に消極的なのは、
・冷媒圧縮に常時稼働する動力が必要な為、電力以外では立地に制限が掛かる。
・アンモニアが漏れたら危険なのできちんとした教育と忠誠心の高い部下がいなければ、水を通す銅管を盗んだり反ワクチン派によるテロのように冷蔵庫や中身を壊す内部犯が確実に出る為。
自宅に動力源がない限り手を出さない方が無難。
※1……インドやアフリカで用いられている非電化冷蔵庫。
参考文献
鉱物と宝石を楽しむ本
参考サイト
非電化冷蔵庫
http://www.hidenka.net/hidenkaseihin/frig/frig.htm
以下wiki
水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ビスコース、セロハン、二硫化炭素、イオン交換膜、ジーアポット、シリカゲル、寒剤、アベマキ。




