勝ち抜き戦
赤と青の団員を一堂に集めたところで、アルバートがスルド団長とドナード騎士、そして私も参加することになったと告げた。
「フィリアも出るのか?」
案の定、兄のハワードが眉間にしわを寄せる。
「フィリアは自分の実力を試す機会を持つべきだ」
「それは……」
ハワードは険しい顔のまま私の方を見た。
「カルニス家の人間は、フィリアに『外』を見せようとしない。それはどうかと思ってね」
「別にそういうわけではないのですが」
ハワードは首を振る。
「ならば問題ないだろう? スルドも異論はないな?」
「はい」
二人の団長がアルバートに頭を下げた。
そもそもアルバートがすると決めたのなら、よほどの理由がない限り否とは言えないだろう。
「フィリアはハワードの団。スルド団長とドナード騎士はスルドの団にしよう」
「承知いたしました」
そういうことで、私は兄のハワードの青騎士団の一番手で、出場することになった。ちなみに最後は団長同士になっている。
交流試合は、一対一の勝ち抜き戦だ。
ただし、一人が勝ち抜け出来るのは五人までになっている。
そのルールだと両軍ある程度の人間が試合に出れるそうだ。そして残っている人数が多い方が勝ちになる。
ただ、いくら強くても五人しか戦えないから、兄のハワードが化け物なみでも、六人、赤騎士団の団員が残っていれば勝てないということだ。
私が一番手になったのは、当然弱いからなのだろうな。
「いいか。魔術は禁止。場外は失格だ。基本は武闘会とルールは一緒。剣を使っても体術を使っても構わない」
ハワードから説明を受けながら、私は防具を身に着ける。青騎士団の一番小柄な騎士から借りたものだ。
「たぶん向こうの一番手は、ダイアナ・レイトンだろう。かなり気の強い奴だ」
そう言ってハワードはにやりと口の端を上げた。
「わかりました」
私は頷いて、交流試合用に作られた木剣を受け取る。
対戦相手はやはりダイアナ・レイトンだった。栗色の短い髪で鋭い目つきをした美女だ。
開始線に立つと、目の前のダイアナ・レイトンが不服そうな顔をしていた。
彼女は先鋒として五人抜きを狙っていたのだろうが、最初の相手が私のような素人なのが気に入らないのだろう。騎士を五人抜くのと、五人の中に素人が混じっているのでは、周囲の評価が違ってくる。
私たちは礼をして、剣を構えた。
「はじめ」
審判を務めるアルバートの合図で、私は踏み込んだ。
思ったより相手の動きが鈍いのは、相手が私を侮っていたせいだろう。
「なっ」
ダイアナが動く前に私は彼女の木剣の根本に打ち込んだ。
慌てて、ダイアナが一歩さがって体勢を整えようとするところをさらに打ち込む。
彼女も打ち込んでくるけれど、思ったより早くないし重さがない。
思ったより私が弱くないことに、腹を立てたみたいで、顔が真っ赤だ。そのせいか隙が多い。
「素人のくせに!」
ダイアナが叫ぶ。
その気持ちはわからなくもない。私に負けたら、彼女にとっては屈辱以外の何物でもないはずだ。
彼女の攻撃をかわしながら、その必死さに申し訳なくなる。
「フィリア! ベストをつくせ! それが礼儀だ」
ハワードの声がした。
そうだ。
私は間合いを詰め、ダイアナの剣をふっとばし、その喉元に剣をつきつける。
「参りました」
「勝者、青騎士団 フィリア・カルニス」
ダイアナが降参をし、アルバートが勝利を告げた。




