第九話「出発」
新章突入です。
追記:
改稿しました(2022/4/12)
出発前
「ねぇ太郎!。今回はあなたが鋼ノ星まで宇宙船操縦したら?。」
突然カルラが言い出す。
「えっ⁈無理無理無理無理絶対無理!危なそうやし怖いし!」
慌てる俺。動揺しすぎて、何故か関西弁が出る。
「鋼ノ星までの距離は短いし、宇宙船の操縦は簡単だから大丈夫よ!。それに、宇宙船の操縦は簡単だし。ぶっちゃけ猿でも出来るわよ。」
「でもなぁ……」
「私だって、操縦五分で覚えれたし。太郎なら大丈夫よ。ほらっ、ここにマニュアルもあるし。」
カルラが、宇宙船の裏から、マニュアルらしき本が出てきた。一体どんなところにマニュアルをつけているのやら……。
あまり乗り気にはなれないが、カルラの期待の眼差しを前に、俺はとても、拒否は出来ない。
渋々、カルラからマニュアルを受け取った。
マニュアルに目を通す。
パッと見た感じ、意外と直ぐに出来そうだった。
「まぁ……やってみるか。」
渋々オッケーを出した。
「宇宙船操縦出来た方が良いしね!」
カルラが明るい顔でそう言う。その後に、静かに、暗い声でこう言った。
「もし私がいなくなっても地球に帰れるもんね……」
「…………」
カルラの言葉に、場に静寂が流れる。
「と、とりあえず宇宙船に乗ろっか‼︎」
カルラが、少し引き攣った笑顔でそう言う。
何のことか気になったが、深く探究するのはやめておいた。
運転席。
真ん中に大きいレバーがあり、そこに跨がって座る。
そのレバーは全方向に倒れ、これで宇宙船を操縦する。
足元にはアクセルとブレーキのペダルがある。
座って右には、いかにもなエンジンをかけるボタンがあった。
左には、地図が置いてある。色々な惑星と銀河の名前が記載されていて、現在位置もバッチリ分かる。
カルラが操縦している時は地図をつけていなかったから、覚えているのかカルラに聞いてみると、
「覚えてるに決まっているでしょ!。宇宙を飛び回る神星人なんだから、それくらい当然よ。」
と、自信満々に豪語していた。
カルラに操縦方法を一通り教わり、いよいよ出発の時がやってきた。
エンジンをかける。
チチチチブーーーーン
未来的な感じかと思いきや、ガソリン自動車みたいなエンジン音と共に、宇宙船が起動した。。
大きな深呼吸をする。
ゆっくりと、足をペダルに、両手をレバーに乗せた。
「…………行くか…………」
俺は、固唾を呑んだ。
そして、アクセルを半押しした。
その瞬間。
ボンッ、キーーーーーーーーーン
ロケットのような離陸音と共に、勢い良く緑ノ星を脱出した。
一旦ブレーキをして緑ノ星の方を見ると、緑ノ星が、米粒程に小さく見える。
一体今、どのくらいの速度が出ていたのか。
「アクセル全開にしたらどうなるんだろう……」
そんな疑問を抱きながら、運転を続行した。
結果は大体目に見えている。恐らく、小惑星やら隕石にぶつかって終わりだろう。
それからと言う物、特に事故りそうな場面は無く、安全に進むことが出来た。
事件も問題も無く、特に面白味のない旅となってしまった。
操縦中、カルラが脇腹を頻繁に突いてきたが、俺は効かないので、鼻で笑った後、操縦を続けた。
チラッとカルラの方をみると、少し怒ってこっちを見ていた。
操縦中、レバーの真ん中に小さなボタンを見つけた。
赤くて、髑髏マークの描かれたボタンだ。
少し気になって、押そうとすると、慌ててカルラが止めた。
カルラ曰く、
「そのボタン押しちゃダメよ!! 押したら、滅茶苦茶強いミサイルが、高速で発射されるから! 地球にも“核爆弾”っていうのがあるらしいけど、それの数百倍は威力あるわよ。」
とのこと。
押さなくて良かった。心底そう思った。
まぁそんなこともありながら、現在に至る。
出発してから約二十分くらい経ったか。
鋼ノ星まで、後どの位なのか、カルラに聞いてみると、今でやっと中間地点位だそうだ。
「(全然近くねーじゃねーか!)」
心の中で、そう叫んだ。
「そういや、鋼ノ星ってどんな所なんだ?」
鋼ノ星について一切知らないので、念の為カルラに尋ねた。
「あっ。まだ説明してなかったわね。」
カルラも、すっかり説明を忘れていたようだ。
「鋼ノ星はね、さっきいた緑ノ星の二倍くらいの大きさで、その名の通り、惑星全体が、鉱物や石などに覆われているの。当然植物はいないわ。植物がいないとなると、惑星内の酸素が心配だろうけど、鋼ノ星に生息している生物は、二酸化炭素を吸って酸素を出す生物が多いから、人間でも問題なく生きられるわ。その生物達の餌は鉱物や石で、その生物が乱獲されない限り絶滅しないわよ。」
成程。緑ノ星は樹々があったから緑だったが、鋼ノ星は、その名の通り、鋼、つまり鉱物がいっぱいあるから鋼なのだ。
「そして、私たちが用があるのが、鋼ノ星に住んでいる、知性を持つ種族で、鋼ノ民っていうの。さっき言ってた鉱物を餌にしている生物を食べたり、鋼ノ民のオリジナル技術、“錬金術”で作った食べ物を食べて生活している、とても平和な種族よ。」
おっと、聞きなれない言葉が一つ出てきた。
「錬金術って何だ?」
「錬金術っていうのはね、鋼ノ民が生み出した技術で、鋼ノ民でしか行使することが出来ないの。」
「ということは神星人も使えないのか?」
「ええそうよ。鋼ノ民が、技術の流出を恐れてて、錬金術の仕組みを知っているのはごく僅かな鋼ノ民だけなの。だから、仕組みを知らない他種族は、使うことが出来ないわ。」
「ふーん。」
その技術の概要を知らないので、「ふーん」としか言いようが無い。
「本題に戻るけど、錬金術の効果は、“鉱石類を他の物質に変換させることができる”ことよ。だから、地表にある鋼を、肉類に変えることも可能なのよ。でも、錬金術を行使するには、その素材を知っておかなくてはいけないわけであって、錬金術を使える人は、大体頭が良いのよ。」
「なるほど……俺には絶対使えない技術だな。」
「………………あっそう。」
カルラが、あまりツッコんでくれなかった。これが一番寂しい。
「そしてその鋼ノ民に会う目的なのだけど。その錬金術を使って、神星人でも加工不可能な緑ノ蜘蛛の糸を、防具に加工してもらおうってわけ。鋼ノ星には昔からの知り合いがいるから、すぐに通して貰えると思うわ。」
なるほどね……………納得。
約二十分後
「あっ太郎!、見えてきてわよ‼︎」
「あれが、『鋼ノ星』か!」
そこには、銀色や灰色に染まった惑星があった。
この惑星こそが、目的地である鋼ノ星である。
目的地まで到着したと言う達成感と、鋼ノ星はどんな所なのだろうと言う期待で、意気揚々としながら、俺達は鋼ノ星に向かった。
次回、鋼ノ星突入です。
さて、どういう展開にしようかなー。