その1
初創作作品です。これを出すのが本当に初めてなので御意見あればください!
タイトルにプリンセスとありますがまだまだプリンセス要素は出てきません
熱い…
熱い…
熱い……
ミカの乗っている飛行船は何者かの襲撃を受け船内は火の海、まさにこの世の地獄になっていた
肺が焼け、皮膚が溶けそうな感覚の中ミカはどうにかあいつらに反撃する策を考えていた
銃弾を浴びながらもかろうじて空にとどまり続ける船にはミカの他には誰もいない
荷物も食料だけ、燃料も今使っているので全部だった
………詰みなの……?
その時後方で爆発が起こった、ガスに火が付いたのだ
もうダメ、墜ちる
そう確信したのにミカはまだ考えていた、自分が助かる方法を、生きてあいつらに一泡吹かせる方法を…
だがミカの脳が酸欠で限界を迎え、意識が遠くなっていく、
そしてこちらに向けられた銃口が自身の終わりを告げているような気がした
そしてそれがミカの見た最後の景色だった
深い森の奥地で少年はくまさんに出くわしていた
副業の帰り道に下手こいて森で一番やばくて喧嘩を売ってはならない相手の怒りを買ってしまった数分前の自分を内心でぶん殴りながら村への山道を駆け降りる
ハーケンベア、少年の暮らすシタノ村周辺に生息しているくまさんなのだが、非常に好戦的で縄張り意識も高くそれでいて他のくまさんとは比べものにならないほどの戦闘力を持ち合わせてくれちゃってるそのおかげで「ハーケンベアに出くわしたら9割死ぬ」という肩書き?みたいなのを背負わされている厄介なくまさんである
少年―モクはそんなハーケンベアの縄張りに知らずに侵入し同じく侵入した鹿さんを狩ったのだ
縄張りに入った獲物をよそ者に横取りされたのだから怒るのも仕方がない
かと言ってこのまま死ぬつもりも甚だないと腰にある本業用木こり斧に手をかけると奴の振り上げた剛腕の先が一瞬白く輝いた
瞬間周囲の空気が震え空間がえぐれるような一撃が左わき腹をかすめた
幸い身を引いて服を裂かれただけだったが、奴の剛腕から放たれた一撃をまともにくらっていたら粉々のミンチになるのは避けられなかった
村に着けばなんとかなるのだがこのまま逃げても追いつかれて肉の塊にされるだけだ
そうならないためにもなんとか奴の気をそらすかなんかしないと逃げられない…
でもそれじゃダメだ…
そんなんじゃ『憧れ』には届かない
自分にだって憧れはある
そのために毎日木を切って、斧振って体を鍛えていた
熊ごときに殺されるようでは決してなれない高くて届かないような憧れ
その憧れに近づくためにも今はこの状況をなんとかしなくてはならない
『今ここで、こいつをたおす!!』
決意に反して震える体に鞭をうち、腰の斧を抜き放ち前方の木2本に叩きつけた
芯を叩きコーンと甲高い音を出してきれいに斬られた大樹はカーテンのようにくまさんの視界をふさぐ
くまさんは目の前に現れた障害物をホコリでもはらうかのように薙ぎはらい、そこにいるはずの獲物に狙いをつけ、爪を振り下ろした
だがそこにいるはずの獲物の姿はなく、ただ一撃によって巻き上げられた木の葉がひらひらと舞い落ちるだけだった
しかし狩人の目はしっかりと獲物を捕捉していた
大樹を切ると同時に木の陰に回り込み木々をつたってくまさんの背後に回り込んでいた
くまさんは自分の気配に気づいていない
『あとはその首を斬るだけ…!』
斧を背中に回し、大樹を蹴り、くまさんのうなじへ水平に斧を叩き込む…
バキッ………!!!!
叩きこんだ斧のへし折れる激しい音と同時に自分の無力さ、愚かさを…死を目の前にしてようやく思い知らされた