秘密のカギ その1
エドは、一瞬の間に体験した自分の力と、その力を持っているもうひとりの存在と対決したことがきっかけで、その日は眠れない一日になってしまった。
ステイシーが完全に熟睡している間、エドは自分の部屋でテレビをつけながら新聞を読んでいた。
雨が降り始めたからなのかはわからないが、とてもどんよりとした気分だった。
再び、憂鬱が始まった。
ひたすら新聞を読む。
イベント、万引き、トラックの衝突事故。
全く目新しさが無いため、本当に新聞なのだろうかと思っていた。
エドがいつも読んでいる新聞は、地元の新聞だ。
火事、ケンカ、性的虐待、傷害事件。
よくある内容のため、エドは新聞やテレビに飽きていた。
ひたすら新聞を読んでいると、二連続通り魔殺傷事件に目がとまった。
ダリルが目撃した、刺されて倒れた女性もその事件の被害者だった。
事件当日。十二時頃に警察に『後ろから刺された』という通報が入った。
警察が駆け付けると、刺し傷を負った女性がベンチでうずくまっていた。
刺し傷の場所はどちらも同じで、一か所のみ。
犯人は不明。
十二時頃、エドは病院に訪れていて、そのときにはダリルがいた。
ステイシーは、夜に起きた刺殺事件の犯人はダリルだと言っているが、二連続通り魔殺傷事件が本当だとしたら、ダリルとは十二時ごろに会うはずがなかった。
仮にダリルが犯人だとして、夜に起きた刺殺事件の犯人がダリルだとすれば、十二時頃の最初の犯行は別の人物になる。
エドは考察している最中に黒いコートの男が頭をよぎったが、彼はエドと同様、特別な力しか使わない。
刃物を使うことなどありえないと決め付けた。
ある程度の考察をし終わったエドは、新聞の続きを読み始めた。
そこには、『夜に現れる”黒コート“』と書かれていた。
新聞に集中しているとドアをノックする音が聴こえ、ステイシーが部屋に入ってきた。
「エド、最初はよくしゃべってくれたのに、すぐに喋らなくなるわね。私は他に何をすればいいの。」
ステイシーは、ほぼ無言のエドに不満を覚えていた。
彼女は、そのことを知っていたが、エド本人は気にしていなかった。
「ステイシー。今日はもう寝ろ。俺は明日、ダリルに会いに行くよ。どうせ病院内で、どこかしらの壁に耳を当てている。」