始まりの一歩手前
1979年。残虐な刺殺事件から一年以上経った。
コンビニは不良たちのおかげか、売り上げが良かった。
バーで酔っぱらった若者たちが、当たり前かのように入店してくる。
大体は酒とタバコだ。
ドラッグのニオイがとてつもない男が、タバコを買った後に店員に聞いた。
「ホワイト・フェイスが現れたかもしれない。」
ホワイト・フェイス それは去年、1978年に起きた残虐な刺殺事件のことだった。
一人も残らず、骨は砕かれていて、ナイフで刺されていた。
当時、唯一の生き残りは、こう言っていた。
「白い仮面に刺された。」
一年経った今は、そのような事件は一切起きていない。
店員は男に聞いてみた。
「大量殺人だとか、残虐な刺殺だとか、全く耳に入ってないのに、なぜホワイト・フェイスが現れたと?」
男はこう応えた。
「俺の仲間とか、他のやつらがみんな、黒いコートを着た男にボコられてる。中には、"吹っ飛ばされた"とか言って青ざめてるヤツもいるらしい。フードを被ってるから、顔がよく見えないんだってよ。」
店員は、あることを思い出した。
「そういや近くの病院に、糖尿病で通院してるんだが、ケガだらけの患者がたくさんいたな。」
店員は、その"黒いコートの男"によるものだと確信した。
その男は金を払って立ち去った。それと同時に、ある男が入店してきた。その男はエドという男だ。
エドという30代の男は、リサイクル店を経営していて、趣味で私立探偵をやっている。
この町は荒れているため、私立探偵の仕事がメインになっていた。
財布をなくしたとか、浮気の証拠を掴んできて欲しいだとか、しょうもないことに対応するだけで、稼ぎ放題。
エドは、この町は金を稼げるという理由で好んでいた。
「店員さん。いつものタバコをくれ。」
ここのコンビニはよく訪れるが、世間話は全くない。
いつものようにいつものタバコを買って、去った。
エドは車に乗ろうとしたとき、車全体にスプレーでラクガキされていたことに気付いた。
近くにいた男女4人の犯行だ。
流石にエドはキレて、男女の方に向かった。
男女は急いで車に乗って逃げようとするが、エンジンがすぐにかからないというホラー映画のような展開が、偶然にも起きてしまった。
エドはヤツらが載っている車のドアを開けようとするが、鍵が掛かっていて開かない。中で声がする。
「ざまあみやがれ。」
エドは激怒して、助手席側のドアを蹴った。
ドアを思いっきり蹴ったとき、ドアは大きくへこみ、窓が割れて、蹴った部分は穴が開いていた。
中で騒いでた4人だけでなく、エドも、凍りついた。
その後、車のエンジンがようやくついた。
「いったいアレは何者だ。怪人め。」
車は猛スピードで走っていた。
助手席側のドアが凹んだまま、走っていた。
明かりも一切ない場所を、ひたすら走っていた。
後部座席に座っている男が言った。
「すまん、トイレに行きたい。チビっちゃった。」
仕方なく車を停め、真っ暗闇の中、トイレに向かった。
男は車から降りて、トイレをしに向かった。
トイレをしているところを見られたくないからか、少し車から離れに行った。
男は暗闇の中に消えていった。
トイレが終わるのを待っていた三人。
ドアを凹ませた怪力の男の話題はいまだに途絶えていなかった。運転手の女は言った。
「あの怪力野郎、殺してやる。」
しかし、後部座席に座っている女はこう返した。
「バカ言わないで、ウチらは人間よ。アイツは人間じゃないわ。」
その頃、エドは足を痛めていた。