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第1話 青春は儚く散る

 俺の名前は桐ケ谷刀也(きりがやとうや)。年齢は十八歳。

 この春、高校を卒業し大学生になる。そして、今日は高校の卒業式だ。

 また一歩、無意味に大人の階段を昇ってしまった。そんな自分が嫌になる……。

 見た目はそこそこ、勉強もそこそこ、運動もそこそこ、そこそこだらけのそこそこ人間な俺は、勿論彼女も居ない。これ、自分で言ってて悲しくなるな……。

 家族構成だって至って普通の四人家族。父はしがないサラリーマン、母は専業主婦、弟は……俺よりイケメンで、勉強、スポーツは共に万能、その上可愛い彼女まで居るときた。なぜ、同じDNAでここまで差がついてしまったのだろうか。恨むぜ、マイファーザー&マザー。

 こんなそこそこまみれな俺にも唯一の特技があった……。


「おい、刀也。俺の眼鏡を知らないか? 朝から探してるんだけど見つからなくてさ」


 俺の隣の席に座る通称馬鹿が、立ち上がってわざわざ俺の席までやって来た。またいつもの奴か。もはや恒例となった朝の行事だ。

 わざわざ卒業式の前にやる事かよ。と、呆れながら席を立ち、俺は馬鹿の期待に応えてやることにした。


「眼鏡って、お前……」


 右腕をそっと折り曲げ、右手を真っすぐにした状態で胸の辺りまで持って来る。そして、折り曲げた右腕を全力で目の前の馬鹿に解き放った。



「頭の上に乗ってるだろうがぁッ!!」



 バシンっと、馬鹿の胸部に炸裂した俺の右手。



「よっ、待ってましたッ!」「今日も頂きましたッ!」「星三つです!」



 クラスの連中達が好き放題に言葉を投げ掛けてくる。一人、マチャ〇キが居た気がするが、気のせいだろうか。

 こんな下らない事で盛り上がるクラスの連中達を尻目に、俺は自分の席に着いた。


「いや~、今日も大盛り上がりだったな」


 頭の上に乗っていた眼鏡を掛け直した馬鹿が話し掛けて来た。


「何が大盛り上がりだ。こんな茶番、何処が面白いんだよ」

「まあそう言うなって……この光景が見られるのも最後なんだしよ」

「……そうだったな」


 馬鹿が柄にもなくセンチメンタルな空気を醸し出しているので、俺は適当に合わせてやることにした。

 何が「最後なんだしよ」だ。ようやくこの地獄からおさらば出来ると思うと清々するね。

 俺はこの三年間、ずっとこのクラスのツッコミ係をやってきたのだ……って、何だよツッコミ係って……その係にツッコミを入れてやりたいよ、こんちくしょぉぉがッ!!

 そもそも、こんな係をやってる奴に、彼女なんて出来る訳ねぇーだろぉがッ! 顔がキム〇クだったとしてもノーだよッ!!

 これが俺の高校生活最後の集大成とは……笑えない。



 ◇



 卒業式を終えた俺は、なぜか校舎裏に呼び出されていた。


「あの、前から桐ケ谷君の事が……好きでしたッ! 付き合って下さい!!」


 まさかのどんでん返し来たコレェッ!!

 最底辺で生きて来た俺に、こんなサプライズが用意されていると誰が予想出来た。今日まで生きてきて良かった。と、心からそう思えた瞬間だった。

 しかも、俺に告白してきたのはクラスのマドンナである有栖(ありす)ちゃんだ。とても美人でお淑やか、誰にでも優しく接する女神のような女の子だ。


「……こちらこそ、よろしくお願いしますッ!!」


 告白の答えは勿論イエスだ。

 彼女から差し出された手を握り返そうとした時である。重い溜息を吐きながら、有栖ちゃんは口を開いた。


「見損ないましたよ、桐ケ谷君……」

「ど、どうしたの、急に……?」


 急に不穏な雰囲気を漂わせる有栖ちゃんに、俺は戸惑いを隠せずにいた。

 あれれ、俺何かまずい事でも言ったかな……こういうの始めただから、勝手が全然分からん。

 不安な気持ちを抱える俺を他所に、有栖ちゃんは話しを続ける。


「そこは、何で俺やねん! と、ツッコまないと……」

「へぇ? 何言ってるの、有栖ちゃん?」


 もう訳が分からない。

 急に関西弁でツッコまれたり、ツッコまなかったダメ出しをされたり。恋愛ってこういうモノなのか……いや、そんな訳ない。いくら恋愛経験のない俺でもそれくらい分かる。

 彼女は明らかにおかしな事を言っている。もしや俺は、からかわれいるのか?

 そうだとすれば、とんだピエロではないか……卒業式の最後に幸せを掴めたと思ったのに、それはないぜ、神様ッ!!

 そんな俺の声は神に届く訳もなく、


「私、ツッコミを入れている桐ケ谷君が好きなの……」


 どんどん表情を曇らせて行く有栖ちゃんに恐怖を覚えた俺は、咄嗟にこの場所から逃げ出そうとした。

 だが、ここで俺の運動音痴が発動してしまう。


「うおッ!」


 俺は足を踏み外し、仰向けの状態で転倒。その瞬間――



「――ツッコミを入れない桐ケ谷君なんて……要らないッ!!!!」



 有栖ちゃんが何処かから取り出したナイフを片手に、俺の心臓を一刺し……そこで俺の意識は途絶えた。

ここまでが前世のお話しです。

次は異世界に転生する為のチュートリアルに進みます。


少しでも面白いと感じて頂ければ、ブックマーク、評価などして頂ければ作者は喜びます。

喜ぶだけで何もお返しは出来ませんが、物語を作っていく上での糧となります。

では、引き続き『ツッコミだけで世界を救うって、どんな無理ゲーだよッ!!』をお楽しみください。

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