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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
悪の黒幕ってフィクサーと呼ぶよね 通謀虚偽表示
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株主に脅えて震える

 真鍋は吉保と別れた後、本当に整形をしていた。

 駿河心優の顔に。

 それは怪我を隠すためというもので意図したものでもなかったが、もともと姉妹であったからか、彼女は駿河と全く同じ顔になり、そして、お手伝いとして身を隠している最中に寛二郎と知り合い、彼と恋に落ちたのだという。


 亜紀はこのあたりで真鍋に相談を受けており、寛二郎への鬱憤晴らしも兼ねて、真鍋に寛二郎の好みや医師の真似事などできるようなアドバイスなど色々と手伝いまでもしたのだそうだ。


 つまり、真鍋のブログは本当に寛二郎との愛の日記だったわけである。


「あの、ところで、社長に対してはどのような鬱憤でしょうか?」


 吉保は初対面どころか自分をぺしゃんこに傷つけたこともある亜紀に対して、怒りを見せるどころかおどおどとした仕草で彼女に尋ねていた。

 亜紀はそんな吉保をハハッと鼻で笑うと、意地悪そうに顔を歪めてなんてことも無いように軽く言い切った。


「私を母と呼びたくないからって嫌がらせ三昧の馬鹿息子に、鬱憤を持たない母親はいないでしょう。」


 私は亜紀にごめんなさいと頭を下げるしか出来なかった。


「あら、美緒ちゃんは良いのよ。あの馬鹿が全部悪いのだから。でも、一言言わせてもらうけれどね、私は誠吉さんのこと、本当に愛しているのよ。子供を産んであげたいくらいにね。」


 亜紀はにんまりと笑うと、自分のお腹をゆっくりと撫でた。


「え、赤ちゃんが、いるの?」


「ふふ。赤ちゃんがいるけど腫瘍もあってね、その手術だったの。赤ちゃんも駄目で私が悪性のがんだって知ったら誠吉さんが壊れちゃうからって、内緒の検査入院だったのよ。それでこんな事件が起きていたなんて。驚きよ。」


「ええ!亜紀さん。あなたの身体は大丈夫なの?」


「えぇ。腫瘍は良性のもの。子供も無事。誠吉さんに伝えたら、もう大喜びで。持っている折詰の株を全部私にくれるそうよ。」


 口元を左の手の甲で隠すようにしてコロコロと笑う折詰夫人に、私は寛二郎が怖いとアラーム出しまくっていた理由をすんなりと理解した。

 ついでに脳みそは色ボケジジイの持ち株数とその株が折詰の株の何パーセントだったかと、必死過ぎる必死さで計算を始めていた。

 対抗できる?

 私とかんちゃんでこの大株主に対抗できる?


 こいつはやばい女だ。

 私達の経営権を狙いに来ていやがるじゃねえか。


 とんと、私の肩に吉保の肩が当たり、彼は「怖い姐さんだね。」という風な目配せを私にした。

 そこで、私は出来うる限りの不敵な笑顔を作って吉保に見せた。

 彼は私の不品行な護衛官ではあるのだ。


 恋人にはなって貰えないだろうけれど、これからも。

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