私こそ現行犯
「ぎゃあ!」
私の拳は亜紀の偽物の鼻にめり込み、鼻を押さえた彼女は真っ赤な血をまき散らしながら真後ろへと尻餅をついた。
「その顔は亜紀のものだろう!お前は亜紀をどこにやったぁ!」
「ぎゃあああ。」
私に顔面を蹴られて彼女は完全に後ろに倒れ込み、彼女の握っていたスタンガンはバチバチと火花を散らしながら下へと落ちて行った。
私は後悔しているのだ。
寛二郎の言うとおりと亜紀をいない者として過ごした六年を。
亜紀は何も悪いことをしていないのに、と。
亜紀の姿が消え、そして、これらの犯罪が彼女の思惑だと思わされた時、私は彼女に対して申し訳ないとしか感じなかったのだ。
彼女が歪んだのは、いじめのようなことをしていた私達のせいだって。
「は、ははは。死んだよ。亜紀は死んだよ。あの火事で死んだんだよ。」
「ちくしょぉおおお!」
もう一撃と拳を振り上げたが、私の拳は後ろから掴まれた。
掴まれて後ろ手に回されたのだ。
「いたい。」
「じゃあ、大人しくして。これ以上は必要ない。この女、駿河心優を警察に渡してお終いにしましょう。私の顔ってのが気持ちが悪いけれど。」
「ぎゃあああああああ。」
駿河と言われた女は私の後ろの女の姿を目にするや、物凄い叫び声をあげてから気絶をした。
私は驚きのまま自分を捕えた女に振り向き、そして、肩が脱臼した。
「ぎゃあ!」
「こら、だから動くなって。」
亜紀は私から手を離したので私はその場に崩れ落ち、けれど、吉保が必死な顔で私に向かって走ってくる姿には胸がドキドキしていた。
真紀に大丈夫かって優しくしたみたいに、彼は私に優しく触れるのだ。
「ほら動かないで。肩をいれるから。」
「ぎゃああ。」
私は後ろに伊藤の薫陶を受けた女戦士がいた事を忘れていた。
私の外れた肩は彼女によって嵌ったが、彼女に脅えた吉保が手前で立ち止まったままなのだ。
お前は私の護衛官でしょう。
今こそ来てよ!




