連帯債務
連帯債務とは、数人の債務者が同一内容の可分給付について、各自が独立して全部の給付をすべき債務を負担し、その内の一人または数人が給付をすれば、他の債務者も債務を免れるという関係にある多数当事者の債務を言う。
連帯債務の場合は、債権者は複数の連帯債務者の内の誰からでも残額の弁済を受けることができるため、債権の効力を強めるという機能を果たす。
解りやすく言えば、五百万の借金を五人が背負っていても、その五人のうち誰かが五百万を返せば他の四人はその借金から解放される、ということだ。
つまり、払えそうな一人をターゲットにして、追い込んでしまえばいいのである。
よって、今回の債権者である私は、すべての債務を目の前の女に請求することにした。
真鍋も小森も牧も、それからあらゆる悪意を持って今回の事を起こした奴らへの私の鬱憤を彼女に支払ってもらうことに決めたのだ。
そして女は、逃げる予定だった隣のビルの窓に警官の姿と吉保の姿を認めると踵を返し、スタンガンを持って私の方へと歩いてきた。
吉保達が動けないのは、三階から落ちたら私達が死ぬからであり、女は他の人間がこの回廊の上に足を踏み入れたその時に飛び降りると宣言していた。
「さぁ、ここからあなただって落ちたくないでしょう。私と一緒に逃げましょうか。この、みっともないタヌキ女が!」
「やかましい!メタルもゴスロリも知りもしない格好だけの女が!」
私たちは睨みあい、しかし、相手の着ている服が私がこの日の為にデザインをした白を基調にしたドレスであるのに、私は着古した黒いドレスであるというのが何とも情けない、と歯噛みをした。
「うわぁ、ビィの方が悪役だよ。せめて変なコンタクトを外そうよ!白い正義魔女と悪役魔物にしか見えないぞ!!」
「ヨッシーは黙れ!」
こんなセリフがゴングのベルになるのは情けないが、取り合えず私は目の前の女に向かって走り、私の動きに咄嗟に対応どころか固まった女の右頬を、グーで殴りつけた。
彼女は大きく横に倒れかけたが、私は彼女の腕を掴んで自分の方へと引いた。
「スタンガンを持ったって、お前が強くなれるわけは無いんだよ!」
私の方へと引っ張られた彼女にもう一度、今度は彼女の綺麗な鼻に向かって拳をぶち込んだ。




