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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
捕まえてやる 刑訴第212条の要件を満たした場合の刑訴第213条適用
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現行犯で捕まえろ!

「ビィは凄いな。本当に当たり星の生まれだ。」


 本当に失礼な護衛官だ。

 彼が呆れ声でそう呟くのも仕方が無いだろう。

 四階建ての雑居ビルの地下がライブハウスとなるのだが、私はまず関係者パスで一階の関係者用入り口から吉保を引き連れて入館した。

 そこまでは吉保は私に従順に付き従っていた。


 前述の失礼な物言いは、地下に降りてライブハウスの物品販売用のスペースに私達が辿り着いてのすぐ、である。

 本来私の店の商品が並んでいるはずのそこには、私の店の商品では無いものがずらりと並んでおり、さらに一生懸命その他店の商品を並べている女こそ、私達が探していたゴスロリ女そのものだったのだ。


 女は私と、いや、吉保と目が合うや商品を私達に投げつけ、その後はものすごい勢いでライブハウスの出口へと駆けて行った。


 私達が追わないわけはない。

 逃げた女は、私の知っている亜紀ではなかった。


「あれは亜紀なんだな。」


「いや、お前の真鍋だろ。」


「違う。美雪じゃないよ。俺が怖いから整形したって言った美雪でもない。」


「そうか。それじゃあ、あの女は誰だ?」


「とにかく追う。」


「そうだな。並べるはずのあたしの商品をどうしたのかは絶対に確かめなきゃ。」


「そっちかよ。」


 取りあえず女はライブハウスを出た後は繁華街を必死で走っており、しかし、ゴスロリの厚底ではそれほどスピードは出ない事に感謝しつつ私は彼女のすぐ真後ろに辿り着いた。

 私のブーツはゴスロリ風味の厚底だが、底を走り回れるような実用的で安全風味に改造してある。

 だからこそ私の商品は売れるのだ!


「私に触るな!」


 女は振り向きざまにスタンガンを振り回し、ひょいっとその腕を私が交わした隙に手近な建物に飛び込んだ。


「畜生!ヨッシーは何をしてって!」


 一緒に走っていたはずの吉保は、凄い、見ず知らずの若い男を地面に押し付けて拘束していた。


「誰だ!そいつ!」


「小森だ!現行犯逮捕!確保!かくほー!」


 現行犯は一般人にだって逮捕状が無くとも逮捕できると刑事訴訟法の第213条で明記されているが、被疑者にも公然となっていない何もしていない人を、いくら気持ちが警察官に戻っていても、一般人でしかない吉保が現行犯逮捕など出来はしないのだ。


 しかし私は吉保を一瞥すると、女の走り込んでいった建物へと乗り込んだ。


 吉保が他の一般人に暴行の現行犯として逮捕される可能性もあるが、その時は小森の私への痴漢行為を偽証してでも助けてやろうと心に誓ってやっている。

 よって私は泥棒女を追う事に集中することにしたのだ。


 さて、女が逃げ込んだその建物は十階建てであり、三階と五階部分が通路のようになっていて隣の建物と連絡している。

 しかし、外からでもどちらの建物もリニューアルの工事中らしき看板があり、私が中に入り込めば私を追い返す警備員が出てくるのは必至だった。


「ここは入って来てはいけないと。」


「わかっています。あの女はどこに行った。」


 警備員が答える必要もなく、フロアの非常階段が開いたままだ。


「おい、ちょっと!」


「捕まえなきゃならない泥棒なんだよ!あんたはあの女を逃してあたしが失った損失を返してくれるのかよ!数百万単位だぞ!」


 警備員がひるんだすきに私は非常階段に飛び込んだ。

 女の足音が非常階段を上がっていったことで、私は奴がこの建物の三階の窓からその隣の建物の屋根に出るのだと考えた。

 連絡通路が閉じられているのであれば、それしか逃走経路が無いはずだ。

 殺人の罪状も持っている奴ならば、必死に逃げるに違いないのだ。


「待ちやがれ!絶対にお前は逃がさないからな!」


 私は女の後を追いかけるべく、階段を物凄い勢いで駆けあがっていった。

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