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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
あたしが守る方なのかよ 労働契約法
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勝手によそ様の家に入ってはいけません 住居侵入罪

 牧の自宅は寛二郎にはよく知りすぎている家だったようだ。

 彼は吉保が車を止めるや、畜生と大声をあげたのだ。


「りっちゃん家じゃないの!ここは!」


「えぇと、ヨッシーはいつから全部知っていたの?」


 私は大嘘つきだった男を見上げた。

 しかし、大嘘つきの筈の男は、自分の行動の結果に自分こそ驚かされているという顔だ。


「全部って何だよ。知らないよ。俺は牧を尾行してこの家を見つけただけで。いや、だって、あの女詐欺師の住所は違うぞ。」


「ほんとに?」


「ほんとだって。」


 私と吉保がごにょごにょう言いあっている間に、寛二郎は勝手に行動を起こしていた。

 なんと、合鍵で「りっちゃん家」の玄関を開けて、中に乗り込んでしまったのである。

 刑法第130条では、正当な理由が無いのに人の住居若しくは人の看守する邸宅に侵入してはいけない旨が記載されてある。

 これは立派な犯罪行為だが、合鍵を持っているという事は大丈夫か?

 ただし、寛二郎が合鍵を持っていることを知っていて、尚且つ彼が騙されたという条件があるとしたら――。


「ちょっと、かんちゃん!これって立派な罠じゃん!入っちゃ駄目だって!」


「そうですよ!騙された事を知ったあなたが恋人の家に乗り込むなんて!」


 同じような結論に辿り着いたらしき私たちは顔を見合わせて、あっと叫び、慌てて寛二郎の後を追いかけた。

 そうして見つけたのは、リビングでこと切れていた牧の死体だ。

 寛二郎は応接セットの前で立ち尽くして死体を見下ろしており、牧はソファに座る客人にお茶を運んだその時に襲撃された、という格好で床に倒れている。


「社長、何も触っていませんね。」


「うん。ただし、触ってはいないけれど、机に置いてある書類は持って帰っていいかな。これは押収されたくない。」


「しゃちょう。って、びぃも!」


 私は寛二郎が言った書類を取り上げて簡単に目を通したが、これは寛二郎が外国に売り飛ばした菅野の家族への送金に関するものであった。


「うわ、子供がいたんだ。あのレイプ魔に。そんで、養子に出された子供の名前が、あぁ、こりゃあ、警察に見せられない。ヨッシーも読んでみて。」


 私が三人の名前が書いてあった書類を吉保に差し出すと、彼は折詰から養育費を受け取っていた養子先の三家族の苗字と子供の名前を読んで、畜生と呟いたのである。


「まぁ、わかるよ。真鍋さんが菅野の娘って内容はね。かんちゃんは真鍋の事は最初から知っていたんだ。この嘘吐き。」


 寛二郎は私達から顔を背けた。

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