真壁さんってどんな人?
「俺の知らない二週間があったんですよ。俺に何も知らせずに二週間もの休暇を取っていたことに驚き、そして、再会して驚くどころではなく完全に打ちのめされました。あいつがね、見た事もない綺麗な顔になって目の前に現われたんですよ。」
「嬉しくはなかったんだ。美人になって。」
「嬉しいわけ無いでしょう。人間は中身って言いますけどね、俺は外見も含めて真鍋を愛していたのですよ。俺の愛した真壁が殺されたようなものじゃないですか?」
愛していたと言い切った吉保に私はなんだか喉元に苦いものがこみ上げ、そして、汚れ切ってすりっからしの寛二郎はそんな吉保をあざ笑った。
「最初から結婚なんかする気がなかっただけだろうが!君は逃げるタイミングを探していたのさ。その女は君をよく知っているいい女じゃないか!」
「そんな訳があるか!愛していたからこそ、俺の好きになった女を壊したあいつを許せなかったんだ!美雪は整形なんて必要のない美人でしたよ!」
「では見せてみろ、そのお前好みの純だった女を。」
吉保は自分のスマートフォンを操作してとある画像を呼び出し、それから深い深い溜息をついてから私達に見える様にその画像を翳した。
「あ、本当だ。美人だ。」
寛二郎がため息を吐くのもわかるくらいに、真鍋は普通にきれいな女だった。
肩までの焦げ茶色の髪は艶やかで、色白ともいえる肌は輝いている。
目鼻立ちは整い、微笑む目元は人好きのする優しいものだ。
十人が十人振り向くほどの亜紀のような美貌は無いけれど、誰もが好感を抱き、その他大勢の中で目立たなくとも、綺麗だと、出会った人は誰もが思う容貌だった。
普通に幸せに生きていくのならばこれ以上は無いだろうというくらいの、誰にでも自信を持って微笑んでいられるような綺麗な人であったのだ。
特に、吉保の隣で微笑んでいるその画像の中では。
「ぜんぜんさ、言っていた事と違うじゃない。」
「え?」
吉保は私の物言いに驚いた顔を向けた。
私は間抜けなその顔を、殴りつけてやりたい感情を抑えられない。
「ぜんぜんお前を怖いなんて思っていない顔だろうが。普通にお前の横で幸せそうな顔だろうが。鼻の下を伸ばしているお前にぞっこんな顔だろうが!」
私は自分の口が動くのを止められなかった。
どうして吉保の優しさを全部欲しいと望んだのか、私はようやく理解してしまったからだ。
なんてこと。
この私がたった一日か二日で、目の前のこの間抜けな大男に恋をしてしまっていたなんて。




