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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
有志による会社の責任は社員にある 会社法
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海外旅行は気を付けて!

「おい、ビオ。」


「……だって、左手中指のダイヤの指輪を、かんちゃんは私がイギリスで大怪我した日から外しちゃったじゃない。あれは婚約指輪でしょうって、……あぁ。」


 自分で言いながら考え違いだったと気が付き、そんな私に寛二郎が黙り込んでくれた優しさの代りに、婚約に失敗したことのある吉保が呆れた声で私に追い打ちをかけた。


「婚約指輪は左手の薬指にするものだ。」


「わかっているって。自分で口にして、そうだなって、おかしいなって、今更気が付いて恥ずかしいんだから追い打ちをかけないでよ。子供の時の思い込みってなかなか訂正できないものなの。」


「いや、でも、婚約指輪だったし。」


「え、そうだったの?かんちゃん。」


「うん。ビオと俺の婚約指輪。お前のベビーリングと同じデザインなんだよ。パパはビオの誕生石のダイヤモンドで、ビオはパパの誕生石のサファイヤ。」


「すごいな、姪でもそんなじゃ、実の娘だとこれからもっと重くなるな。」


 ぼそっと吉保が私に囁いた通り、実は私は寛二郎に少し引いていた。

 しかし、物凄くがっかりした様子の寛二郎に、今の状態だったらパパの印だと見せびらかすか片付けた場所を偉そうに言い出すはずだと思い当たり、私達が焼け出されたという事実に行き当たった。


 私達は自分達以外の全てを失っているのだ。


「火事で全部なくなっちゃったね。」


「ううん。指輪はビオが殺されかけた日に盗まれた。シャワーを浴びた後に指輪が消えていた事に気が付いたからさ、俺は慌てて指輪探しで部屋を飛び出してしまった。俺がお前を一人にしてしまったばっかりに、可哀想にお前はあんな大怪我だ。」


「それはもういいよ。そうだ、気にするんならさ、じゃあ、また作ろうよ。私は今度はダイヤがいい。ダイヤで作って。」


「じゃあ。サファイヤとさ、ダイヤを並べるってデザインはどうだ?」


「いいねぇ。」


「すいません。話が逸れています。婚約をしていないのでしたら、どうして亜紀の方が危険だと思われるのでしょうか。それから、殺されかけた日って、イギリスでの美緒さんの大怪我は事故では無かったのですか。」


 私も吉保の言葉で、あっと気が付いた。

 あれは事故では無かったのかと寛二郎を見返すと、寛二郎はしまったと舌打ちをした。


「かんちゃん?」


「はぁ。強盗だよ。言っただろ、指輪が消えたって。俺は落としたのだと思って、指輪探しに部屋を飛び出してしまったけれどね、部屋にいたの、泥棒が、まだ。そして俺が部屋を出て行ってしまった後に君が俺の部屋に来た。まだ、泥棒がいる部屋にね。」


「どうして非常階段から落ちたと。」


「頭を割られた姿で非常階段で発見されたのは本当。ホテルスタッフだった犯人は捕まらなかった。国境が無くなったヨーロッパは怖いね。」


 私が意識のない状態であるのに日本に逃げる様に連れ帰って来た事実と、旅行に伊藤が同行していた事、そして寛二郎が二度とイギリス旅行をしないどころか出店もしない事実に、なんとなく伊藤と寛二郎が犯人に超法規的措置をしたような気がした。


 私は寛二郎に抱き着くと、自分の心の平安の為に少しだけ確認することにした。


「やり直しのイギリス旅行を、する?」


「俺は二度とイギリスに行きたくない。ビオ、お前もな。」


 私は恐らくどころか確実に悪人の笑顔を寛二郎に向けていただろう。


「ふふふ。了解しました。恐らく、多分、これ以上ない位に。」


 当たり前だが、私の想像を肯定するかのように、寛二郎が返したのは悪代官の笑みだ。


「さすが、ビオ。俺の後継者だ。」


「ビィ!お前はイギリスのロックフェスは諦めるつもりか!」


 吉保め。

 私の護衛のオプションに自分の行きたいロックフェス巡りを付けるべく、彼は本気で企んでいるようだ。

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