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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
あたしに扮した女の理由 民法第891条
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背景を探ろうか 刑事訴訟法197条

 捜査については、その目的を達するため必要な取り調べ等をする事が出来る。

 充の質問に対して、私にはわからない、と答えたいが、全身火達磨にされて苦しみもがいて亡くなった人間がいるのだ。

 亜紀が関係しているのであれば、話せることは話すべきであろう。


「ミッチーの言う通りに、かなり金額が増えて嬉しい、でしょうね。父、克寛の貰う分として私に相続が予定されている分は祖父の財産の殆どとなります。亜紀が受け取れる予定の金額をかなり上乗せできると思います。それから、亜紀自身の復讐もあると思います。私は今まで忘れていたけれど、私は彼女の幸せを壊しました。そんな彼女を哀れんだから祖父は彼女と結婚して、だから、かんちゃんは私を連れて家を出たのです。きっと。」


「ちょっと、いいか?」


「何?」


「下の真紀とはお前は初対面だと言っていただろ。姉の亜紀が祖父の後妻ならば、亜紀の家族と顔合わせぐらいあっただろう。」


「真紀と私が初対面だったのは、彼女が最近まで留学していたから、かな。」


「いや、だからさ。それでも結婚したなら家族と顔合わせってあるだろ。」


「いや、あの、祖父と結婚した後は、伊藤も加藤も亜紀を見放したというか、娘と付き合いを絶ったというか。うん、部屋はそのまま残しているのにね、変な話だけれど。」


「どうして?」


「……折詰の黒歴史、かな。」


「なんだそれ?」


「ええと、小人の巣は本来は克寛側の人達で、かんちゃんの敵だったの。だけど、克寛が死んでかんちゃんがトップになったからね、かんちゃんの恩情で首にならなかったというか、そういう歴史があるからね、亜紀と祖父の結婚はかんちゃんへの裏切りというか。」


「意味がますますわかんねぇ。あの室長が社長の敵ってところが、もう。」


 吉保は頭を掻いて喚き、田神父の方が話せと言う風に私に片眉を動かして促したので、私は仕方が無いと、小人たちと寛二郎の過去の確執という折詰の恥を田神親子に披露した。

 つまり、過去の寛二郎への造反にも拘わらず恩赦を与えられている小人の巣面々は、寛二郎に定年まで常に恭順の意を示していなければどこよりも高い退職金が手にできないという身の上であり、実の娘が財産狙いとも思える行動をすれば造反と見做されて簡単に解雇されるであろうという伊藤家の内実を、だ。


「おっかねぇ、小人の巣の人達は絶対服従の足枷があったんだ。ブラック、超ブラックな会社。室長達って、過去に何をやっちゃっているの。」


 ブラック会社に就職した事にようやく気が付いて嘆くだけの息子と違い、偉い刑事でもある田神父の方は納得できない顔つきだ。


「うん、事情はわかったけれど、お祖父ちゃんと寛二郎さんは和解どころか二人の確執は無いでしょう。それなのに、どうして裏切りになるの、かな?」


「ビィ、さっきは自分のせいだって言っていたけどさ、話せるか?」


 充の質問に差し込んで来た吉保のやさしく低い声で、私は吉保の私への思いやりを感じて話す覚悟を決めた。


「亜紀との出会いは私が十歳の時にかんちゃんとイギリス旅行した時よ。当時伊藤は防犯部部長だったから、あたし達の旅行にも護衛として同行して、あたしの話し相手として亜紀を紹介されたの。彼女はイギリスの大学に留学中だったから。」


 私は目を瞑った。

 十歳の私の前には、さらさらの髪を軽く纏めた、伊藤にそっくりなのに母の美津子にも似ている物凄い美女がいる。

 なんて綺麗だって驚いた、あの十歳の日が甦った。

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