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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
あたしに扮した女の理由 民法第891条
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相続欠格

 相続欠格とは、相続人となるべき者について、一定の重大な非行が存在するため、その者に相続させることが一般の法感情から見て妥当ではない場合に、法律上当然にその者の相続権を剥奪し、相続人たる地位を失わせる制度である。


 なお、相続欠陥の事由は民法第891条に列挙されているが、今回の私への濡れ衣は、被相続人あるいは先順位の相続人に対して犯罪行為をした者、これが当てはまるのでは無いだろうか。


 つまり、今のところ、折詰誠吉の指定相続人である私に成りすました女の起こした事件が、美緒にとっての先順位の相続人、つまり寛二郎に対する傷害と放火と放火による先順位相続人の婚約者の殺害、また、公序良俗に反した行為である強盗とくれば、全て私を相続欠格にする目的であると断言せざる得ないのだ。


 これらを携えて家庭裁判所に請求すれば、私が折詰家の相続人では無くなるのは確実だ。

 私を擁護するものがいない、という条件があれば。

 そのための私と寛二郎の離間作戦か。


「それが今回の事件のあらましか?」


「そうでしょう。それぞれ事件が重なり合って起きただけならば、ろくでなしの折詰家の自業自得でしょうけどね。第一に、私の成りすまし女がすべての事件に存在している事と、第二に、奴が私から盗んだドレスを身につけている、という点よ。確実に私へのヘイトでしょう。私がターゲットなのよ。」


「同じ店で、普通に一番派手なドレスを買っただけではないのか?ろくでなし同士趣味が同じなのって。」


「失礼な。私の服はぜんぶ、私がデザインして作らせたオーダーメイドの一点ものよ。」


「なんて無駄金を使っているんだ。俺が社長だったら、お前から小遣い全部巻き上げるね。甘いよ、社長はビィに甘過ぎるよ!」


「うっさいな!かんちゃんと同じことを言うなんて。この寛二郎のドッペルゲンガー。」


「なんだよ、それは!」


「とにかく。ちゃんと収支を黒にしているんだからいいじゃない。」


「え、収支を黒って。」


「あたしがこの服を製作している店のオーナーなの。潰れた個人服飾店を買って、そこの針子に服を作らせて、でも彼女達は凄くいい腕だからね、あたしの服だけはもったいないからとデザイン変えた既製服ラインも作ってネット販売していたの。それが好評を博してトントン拍子に売れに売れて、最近渋谷に店舗を出しましたのよ。バンシースキーム。ご存知かしら?」


「俺が知るか。それよりもちょっと待てよ。店を出したって、お前は未成年だろう。」


「民法6条に未成年の営業の許可がありますよーだ。」


「親権者が監督している事実はどうした。」


「お爺ちゃんはあたしの言いなり。」


「あ、そうだった。畜生。」


「何が、畜生よ。悔しがることなんかないって。ウチの商品で喜ぶ人が増えているならば、あたしは幸せを運んでいるってことでしょう。」


「その忌々しい服にイライラさせられている老若男女の不幸を見ないフリか?」


「孝子様が愛用してくれているポットウォーマーもあたしの店の商品よ。」


「どうりで悪趣味な少女趣味だと思ったよって、あっつ。」


 私が吉保の脛を蹴ったのは言うまでもない。

 私達のやりとりをくすくす笑いながら聞いていた田神父は、息子そっくりの声で、息子とは違うトーンで物事の核心を突いてきた。


「IT監査防犯部部長の加藤直美の娘亜紀さんが、どうして君を狙うんだろうか。妻であれば、遺産の相続権は君よりも彼女の方が大きいでしょう。まぁ、確かに君の貰う分がプラスされた上での二分の一は、強欲な人には純粋に金額が増えて嬉しいかな。」

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