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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
思想及び良心の自由は、これを犯してはならない
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道路交通法は守ろう!

 火事に巻き込まれたのが真鍋美雪という警察官。

 初めて聞いた名前だと思いながら吉保に先を促すと、彼は少し変な顔をしてから、私に爆弾発言を落とした。


「生活安全課の若き巡査でね。昨年の冬にお前が補導された時に寛二郎に出会って、それから彼と付き合っていたらしい。」


「うそ、かんちゃんは付き合っている女の人がいたの。ぜんぜん知らなかった。それに、あたしは警察に補導されたことなんか一度もないよ。」


「え?嘘。」


「本当。」


「調書があるぞ。」


「あたしは職質もされたことないもん。」


「嘘だぁ。だって、あの格好で深夜徘徊だろ。職質どころか補導されるって。」


「徘徊しないもの。あたしが一人で外出できると思っているの?ねぇ、あたしから離れるなと命を受けている新人護衛官さん。」


 吉保は本当にキョトンとした顔で私を一瞬見つめ、そして情報が脳みそに届いたのか、数秒後に自分の前頭部、つまり額を右手でぱしんと叩いた。


「あ、そうだった。おい、親父。真鍋がうちの社長と付き合っているって奴は、事実確認もなくて真鍋のブログからだけか?」


「うん。なかなか具体的な描写多数だからね。事実だと看做されている。それで、父代わりの叔父を取られると嫉妬したビィちゃんが箱を仕掛けたという筋書きで捜査しているんだよね。」


「親父、被疑者の前で捜査方針ばらすなよ。」


「ヨッシーはあたしが被疑者だと思っているんだ。」


 頭にきた私は、吉保が大好きらしい私の素顔を利用する事にした。

 つまり、捨てられた犬猫の目をして、吉保をじとっと見つめたのである。

 単なる思い付きでもあったが、彼はなんというか思った以上に耐性がないらしく、ぐわっと音がしたのではないかという勢いで真っ赤になり、おろおろと私にゴメンと謝り始めたのである。


「うわ、ヨッシー、素直で馬鹿可愛い。」


「う、うるさいよ。それに何だよ、馬鹿可愛いって。」


「馬鹿だから。あたし達は今朝からあたしに成りすました女が起こした事件に振り回されているじゃない。」


「あ、そうだった。」


「思い出した?それじゃあ動きましょうか。あたしはそろそろ、その女の面を拝みたくなったわ。防犯カメラ映像は本社にあるでしょう。ヨッシー、小人の巣に行こうか。あたしはかんちゃんの庇護がなくても、あたしとして折詰に君臨してやるんだからね。」


「えぇ、今から?俺はビールを飲んじゃったよ。」


「僕が運転するから大丈夫だよ。僕も君達に付いて行っていい?」


「だめだよ。あの社用車は俺専用のアウトバックだからね。駄目だって。ほら使えって与えられたまっさらな新車だよ、新車。俺好みのメタルグレーの俺の愛車なの。あと一時間半で酒が抜けるから、待ってって。」


「いいよね。マグネイトグレー。黒塗りの中古車しか乗れないお父さんに、君は優しさは無いの?僕は君が宿無しになってから、受け入れて自宅に住まわせているよね。」


「もとから俺の部屋がある家じゃねぇか。無職になった子供ぐらい普通に受け入れろよ。とにかく、あれは俺の車だから俺が運転するの!」


 いや、私専用の私好みの車だろうがと、お前が着任した日に納品されたばかりの品なだけだと言ってやりたいが、私は意外と優しいのかもしれない。

 田神親子の間抜けな掛け合いに口を挟むことを控えたのだ。


「ネズミ捕り、増やそうかな。職質も強化しよう、かな。僕の部下はしつこいよ。」


「ちくしょう。」


 結局父の方が一枚も二枚も上手らしく、車の鍵を息子から手に入れた。


「新車だよ、新車。運転したかったんだよね、あれ。」


 あたしは味方を二名手に入れたと考えていいのだろうか、間抜けな田神ズだけど。

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