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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
思想及び良心の自由は、これを犯してはならない
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あなたは生活安全課の刑事さんだったね 少年法の目的

 あの日の私は、アイスが珍しく不味いと全部食べられず、残す行為に罪悪感を抱きながらゲームに夢中だからと母をごまかした。

 だが、ゲーム機にむかったそのまま、私は大きく嘔吐し、体を壊すような苦痛に大声をあげてのた打ち回ったのである。

 何度か意識を失いながらも、目覚めれば枕元には必ず憔悴しきった寛二郎の姿があり、私は彼の姿を目にすることで辛い体が楽になったのだと思い出していた。


「君はこんなものを見たことがあるかな?」


 担当医が私に見せた白い粒には見覚えなど無かったものだが、真実を言ってはいけないと子供心にわかっており、咄嗟に頭に浮かんだ嘘を答えていた。


「なんだかわからなかったから、テレビドラマの刑事の真似をして舐めた。」


 私の答えを嘘だと見抜いたのか寛二郎はとても恐ろしい顔をしていたが、私はその日以来、寛二郎ができる限り私を母に会わせないようにするようになったと思い当たったのである。


「かんちゃんは、全部知っていた?だから、あたしをママと引き離した?」


 母は私を物凄く愛しているが、物凄い殺意をも抱いているのだ。


 母は恋愛で克寛の子供を宿したのではなく、克寛と菅野良祐に誘拐されて乱暴されたのである。

 錯乱した彼女は身元不明のまま病院に保護されており、徳三の弟子を探し求めていた小人達によって見つけ出されて救われたのだ。

 それでも彼女の不幸は終わらない。

 哀れな事に、彼女の腹には新しい命が宿っていたのである。

 私という悪夢の落とし子が。


「だいじょうぶ?」


 天井に向けていた顔を戻せば、目元においていたティッシュがふわりとテーブルに落ちた。


「大丈夫です。毒入りの蕨餅を思い出しちゃって。あたしはママの名前を出したかんちゃんを責めたけれど、かんちゃんはあたしを守るためにいつもいつも毒見をしていたんだって。大昔に、ママが私に農薬の入ったアイスクリームを作ったから、だから、それを忘れていた私のために自分が狙われたのだと騒いでいたんだって思い出しただけですから。」


「母親を告発したいか?」


 振り向かなくても、田神がいつものしかめ面をして私を見つめているのだろうと、なんとなく感じていた。私を哀れんでもいるのだろうと、自分を情けなく思いながら。


「いいえ。」


「あの暴漢を雇ったのが美津子でも?お前を滅多刺しにしろとあの天女が命じたとあいつらは警察で証言したそうだぞ。」


「そっか、知っていたんだ。それで、かんちゃんのホワイトボードにそれほど驚いていなかったんだね、あなたは。」


「よくあることだからさ。」


「よくあるの?」


「補導した餓鬼が補導されなきゃならない程に外でふらふらしている理由はね、大体が親による虐待が理由なんだよ。」


 田神の表情ががいつも険しく疲れているのは、殺人や暴力に付き合うことに疲れたからではなく、虐待される子供の不幸に心を苛まれたからなのだろうか。


「子供がさ、親を守る必要は無いんだよ。」


 そうだね。

 少年法の目的だって、非行に走るしかない子供を保護するためにあるのだから。

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