表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/92

冤罪、だよね

 でも、今回の蕨餅は母の仕業ではない。


 私まで巻き添えをくう可能性の高い方法を、子供一番の彼女が取るわけ無いのだ。


 頭が足りないと私までもが口にするが、彼女は記憶力どころかとてつもなく頭が良い。

 頭が良いからこそ料亭を切り盛りできるのである。


「ちょっと待てよ。お嬢。お前はそれだけか?社長を責めるだけか?それだけでいいのか?母親が叔父を殺そうとしたんだぞ。」


「そうですよ。美津子さんは折鶴の料理とあなたの抱える店舗の限定お菓子を考案されているじゃないですか。社長は彼女が提出した新商品を口にしたのですからね。」


「新商品の試作品でしょう。ママの作品を模造したものじゃない。完全なママの作品じゃないわ。」


「あ、そうだった。」


 折詰の本当の仕事から離れて長い高部が声をあげ、ホワイトボードを抱えている新人の田神が当たり前だが私に尋ねた。


「どういうこと?」


「あのね、ママは料理を考案するの。ママがまず頼まれたお菓子や料理を作ってレシピも添えて折詰に提出するのよ。そしたら、レシピを元に折鶴が抱える板前や折詰グループ内の料理人がママの料理をできる限り再現して商品化するの。」


 自分で言って自分で気がついた。

 母は私のために右腕が動くようになるのではなく、厨房に立てば天才料理人のトランス状態になって、日常の自分から解放されるのではないのか、と。


 私はどうして今までこんな思い違いを思い込んでいたのだろう。


 いいや、思い違いじゃない。


 母の腕が厨房では動くと知った私に、誰かが母の腕の説明を私にした?ような気がする。


「おい、どうした?それで、折鶴のあのうまい料理は全部彼女によるものなのか。」


「あ、ああ。折鶴ではママのおじちゃんの天才料理人の今林徳三のメニューが中心ね。失われていた今林徳三の料理を彼女が完全に再現して、その上に、彼女の創作の品を今は季節の品として加えているの。まぁ、ママなくして徳三の料理が復活できなかったのだから、全てママありきって、ママの作品だって言っても過言じゃないわね。折鶴復活は折詰復活の原動力となったと考えれば、ママは折詰復活の立役者でもあるのよ。」


「そうすると、蕨餅は商品開発部かどこかの仕業か。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ