停止条件と解除条件
民法127条にある条件とは何か。
法律行為の効力の発生または消滅を、将来の不確定な事実にかからせる旨の付款をいう。
法律行為に条件を付す事は基本的に自由であるが、法律行為に条件が付されるとその法律行為が不安定になるので、公益性あるいは私益的な理由から、一定の場合には条件を付す事が禁じられている。
婚姻、離婚、縁組、認知などの身分行為について条件を付す事は、公序良俗に反し、また、身分関係を不安定なものにしてしまうので、条件を付す事はできない。
また、取消し、解除、追認といった単独行為に条件を付す事は、相手方の地位を不安定にしてしまうので、条件を付す事はできない。
相殺については、民法506条Ⅰの後段で明文化されて禁じられている。
さらに、条件には停止条件と解除条件という二つの種類がある。
停止条件とは、法律行為の効力の発生を将来の不確定な事実にかからせる旨の付款をいい、解除条件とは、法律行為の効力の消滅を将来の不確定な事実にかからせる旨の付款をいう。
例えば、寛二郎が私に課したお題で説明すると、「何かを持ってこれなかったら門限を六時にする。」を言い換えると「何かを持ってこれなかったらライブは禁止。」であるので、停止条件である。
否、奴はもともと私をライブに行かせる意思などなかったのだから、何かを持ってこれたらその「門限六時」という脅しが消滅するのならば、解除条件でもあるか?
とにかく私と田神は寛二郎を狙った思惑の一部というか今日の出来事のあらましを、病院の特別個室に納まっている寛二郎に差し出すことは出来たのである。
多分どころか確実に黒幕が、実父克寛の遊び友達であり従弟である、菅野良祐だろうと私達は当たりをつけたのだ。
母が私を妊娠する理由となったあらましを田神に伝えれば、田神が私が母の部屋にいる間に所轄の刑事とやり取りをしていたらしく、菅野が現在行方不明である事を突き止めていたのである。
菅野家は折詰家同様に18年前は落ちぶれ、折詰が寛二郎のお陰で再生したのとは異なり、菅野家は良祐の散在で会社どころか土地屋敷もすべて失っており、その菅野家が失った土地のいくつかが私の所有ともなっている。
「財産を失った逆恨みが美緒さんにかかり、あの熊野を騙る男や美緒さんに成りすました女性を操っていたのではないでしょうか。」
寛二郎のホワイトボードは、田神の言葉に対する反証だった。
「どうして菅野が黒幕だと言い切れるの?」
「折鶴で美緒さんを襲った者達を女将が雇うと決めたのが、彼らが持っていた紹介状によります。警察にもコピーを手渡しましたが、原本がこちらになります。そしてこちらが、登記の名義変更に添付されていた未成年後見人の追認書類です。」
田神が背広の内ポケットから取り出して寛二郎に差し出した紹介状には、当たり前だが寛二郎の名前が署名されており、但し、社判が18年前に変更する前のものであるのだ。
また、追認書類の方には寛二郎の普段使いの判子によく似た印章が押印されていた。




