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法務部の七人の小人に育てられた姫と警察上がりの護衛官  作者: 蔵前
ここはあたしの持ち物なのだ 不動産登記
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強盗の罪を犯す目的でその予備をした者 刑法237条

 目的の店舗のある五階建てのビルは、秋葉原にしては小洒落た雰囲気を持っているはずだった。

 しかし、田神と辿り着いた時のそこは、そんな小洒落た雰囲気に似合わない殺伐とした雰囲気を醸し出していたのである。

 なんと!昨夜の内に夜逃げしてしまったかのようにシャッターが厳重に締められ、我が折詰の警備員ではなく、ハタハタとなびく警察の黄色いキープアウトのビニールテープの前に制服警官が立っていたのだ。


「ありゃん。なんだこれは。」


 急いでスマートフォンを起動した私は、小人の巣ではなく、まずは本当の折詰の業部部、それも「姫甘味」と書いて「きぁみ」と読むという恥ずかしい店名で和菓子を店頭販売している部門に電話をした。


「はい、いつもお世話になっております。こちらは姫甘味事業部の草加です。」


「秋葉原店のオーナーの今林美緒です。社員番号は002。秋葉原の支店が閉められて警察案件になっているようですが、一体どうした事でしょうか。説明を願えますか。」


「うわ、美緒様ですね。あの、その、責任者にお繋ぎします。」


 ぷつっと電話は内線に切り替わり、すぐに別の応答信号が耳元で鳴り、次に応答したのは聞き覚えのあり過ぎる橋本だった。

 小人の巣案件になっていたことに驚きつつ、私は最初から小人の巣に掛ければ良かったと舌打ちをし、そして、なぜ自分に連絡一つなかったのか訝った。

 だが橋本は私が口を開く前に、それどころか自分が橋本だと名乗る前に謝ってきたのである。


「スイマセンはいいからさ、秋葉原店に一体何があったの?」


「強盗です。昨夜の閉店時間の二十時前後ぐらいに、派手派手しい姿の女性があなたの名前を騙って押し入って来たのだそうです。それも大柄な男を供につけて。」


「そう。オーナーの私が自分の店を強盗するとあなたは考えたんだ?だから私にも、私の護衛官になったばかりの大柄な田神にも内緒にしていたのかな?」


「いえ。今まで事件処理に追われていましたからね、純粋にあなたへの報告が遅れただけです。加藤宅から出ていない事実と防犯カメラ映像であなたでは無いと立証できましたから、企画部一同、あなたを心から信じていますよ。」


「ふざけんな。疑いまくりだったじゃねえか。」


 私が乱暴に通話を切って顔を上げると、視界に入る制服警官が眉根を寄せて私達を眺めていた。

 その姿に、犯人と間違われて職質される面倒が想起され、ここは一時的に撤退した方が無難だと判断した。


「行くよ、ヨッシー。職質される前に逃げるぞ。」


「平気ですよ。あいつは俺の元部下です。」


「本当に?物凄く不穏な顔をしていないか?」


 田上が部下だと自分で言った警官は私達を警戒しながら何やら無線で話し始め、田上はそんな様子を暫し眺めた後、肩こりがあるかのように肩を回した。


「行きましょう。」


「行くんだ。昔馴染みで平気だったんじゃないの?」


「事態はいつも流動性のあるものです。」

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