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鳥ザンギと鳥から揚げは違うものだから…っ9話

魔石から生み出した機械から鉄等の資源を手に入れている、その話を雄兄に聞かされた私は思わず、雄兄に詰め寄った。


「それで雄兄、色々と疑問があるんだけど、聞いた後に面倒ごとにはならないんだよね?酔ってたから忘れてたじゃすまされないと思うんだけど?」

現在日本は資源不足を理由に様々な物が値上がりしたり、リサイクルの為にごみの分別がひどく細分化されている。

とはいっても以前よりも1割、高い物でも2割ほどで済んでいる為大きな問題にはなっていない。


また各企業に回される資源等も政府がある程度介入している状態であり、どこも自由に開発等が出来る状態ではないのである。

そんな中で実は資源に余裕がありました等という事になれば、想像しただけで恐ろしい。


「大丈夫だぞ、企業の上の人間は知っている事だし、ここに来る前に上の人間から話していいっていう許可も得ているしな」

本日三杯目となるビールを飲みながら雄兄が焼き鳥を食べながらなんでもない事のように言う。

逆に言えばそれは上の許可をとらないと話せないことだということなんだが……。

そんな私の思いを無視して、雄兄は話を続ける。


「大きさはポケットティッシュくらいの機械なんだがな、それを分解して、鉄やら銅やらを取り出すのが今の資源回収のメインになってるんだよ、こういうと、だったら民間人のレベルを上げて魔工学持ちを増やした方がいいと思うかもしれんが、レベル10くらいだと、1日に30個程度しか作れないからな、不特定の民間人を深い階層に潜らせるリスクを考えると難しいなー、って事でマスコミには話してねえって話よ」


低レベルの魔工学者は作成数が少なくて当てにならないが、実用性を確保できるまでレベルを上げれば政府管理下に置かないと問題が出る、だからと言って民間人が知れば今ですら問題になってるチンピラ等のダンジョン開放運動家がうるさくなるのは目に見えている、だから問題を理解できる企業の上位の人間だけが知っているというわけか。


「あれ、つまり魔石って優秀な資源ってことだよね?その割に数が足りないって感じはしないけど、それってどういうことなの?」

魔石が足りないなら、もっと私達に大量に手に入れるように話が来るはず、なのに、私達に求められるのは毎日そこそこの数だ、矛盾している気がする。


「ああ、それはあれだ、魔石にもランクみたいなものがあってな1階の魔物の魔石100個と10階の魔石が1個で同価値位なんだ、で、現在自衛隊がアタックしてる階層の魔石が1個あれば大体魔工学のスキル持ち1日分になるんだよ」

だから民間の探索者が多少増えたところで生産量は〈魔工学〉のスキルで生み出されるアイテムの数は変わらない、それどころか魔石が余る事になるので、買取ができなくなるらしい。

国が冒険者ギルドを作れば、その運営は税金で行われる、そうなれば魔石の買取にはある程度の制限がつき、ホルダーは収入を失いレベルという強力な力を持った無職が世にあふれる事になるのだという。


そんな話を聞きながら私はザンギを口に運ぶ。

ザンギと唐揚げの違いは、私の個人的なイメージとしては、ザンギは衣をつけずに油で揚げ、唐揚げは衣をつけてあげるイメージである。


なので家で作るザンギは肉に直接たれで味付けをした後に衣をつけずに油に入れてあげる、そのせいか、見た目は黒っぽく焦げたような見た目をしており、唐揚げはきつね色をしているというイメージである。


またザンギは直接揚げるせいか、肉が硬くなりやすく歯ごたえのあるものが多かったが、衣が付いていないおかげかタレの味が濃く、噛みしめた時に油とタレが混ざった濃い肉汁が口の中に広がり、ご飯がとても進むのだ。

対して唐揚げは衣が付き見た目もよく、肉も柔らかい、これが私の中の唐揚げとザンギの違いである。

唐揚げもいい、いいが、ご飯のおかずとして食べるなら一口サイズの硬めのザンギが方が嬉しいのだ。


「ああー、やっぱりザンギに白いご飯はいい、この濃い味がご飯を進めるわー」

「何言ってんだ、濃い味のザンギにはビールでしょ!」

そう言って雄兄はザンギを口に含んだ後にビールで流し込む。

別にビールが好きな人間をあれこれ言うつもりはないが、酒飲みって何飲んでも米よりも酒に合うっていうイメージがあるなぁ。


続けて私はホタテの刺身に手を付ける、刺身と言えばわさびと醤油と言うイメージだが、私の地元のホタテ甘い、だから何もつけないのが一番好きだ。

地元産の4年もののホタテだけあって、弾力のある歯ごたえと噛めば噛むほど出る甘みが箸を進ませる。


「あー、食った食った……いやー、最近ストレスのせいかついつい食いすぎちまうなぁ」

雄兄はそう言って何杯目か覚えていない空になったジョッキをテーブルに置く。

ザンギにホタテ、カレイにホッケ、ステーキ等、テーブルの上には食いも食ったり大量の皿が置いてある。


「探索者になったおかげか、最近は体重が増えないんだよね、後血圧も安定したし」

私は自分が食べた料理を思い出しながら少し食べすぎたかな、と思う。

探索者になる前は病院から健康診断の度に痩せなさいと言われていた私だが、最近は血圧も安定し体脂肪率もぐんぐんと下がっている。


「レベルアップした人間は体が健康になるからなー、俺も血圧が下がって病院のお世話になっていたのから解放されたからなぁ」

「なんだろう、すごく俗っぽいレベルアップの恩恵だよねぇ」

私が雄兄に苦笑すると、そのくらいわかりやすい恩恵の方がありがたみがあるだろう?と笑う。


「それよりも北原君の件いいの?」

と私が聞くと、上機嫌だった雄兄が顔を歪める

「あまりよくはないんだがなぁ、多分あいつ苦労するぞ、魔術は不便なもんだからな、ま、本人が良いって言ってるし、どれだけ俺が説得しても浮かれて話を聞かないからもうあきらめたんだがな……」


確かに北原君は硬い意思を持って魔術を取っているように見える、そう考えると私達が邪魔をするのはあまりよくないのだろうか。


「それよりもお前だ太郎、もうそろそろ〈解体〉のスキルを取得する事ができるが、わかっていると思うが俺の許可なく使うなよ?」

「わかってますよ、さすがに動画を取られたら面倒ですからね」

雄兄が私に向かって箸を向けてくるが、そんなことは改めて言われるなくてもわかっている。


「というか、そういうことなら三橋さんとキララ嬢を受け入れなかったらよかったんじゃないの?」

「逆だ、逆にこれだけ堂々と動画に映っている奴等が特別なスキルを持っているだなんて思わないだろう、どうせ動画ではお前の顔にはモザイクがかかっているしな、灯台下暗しっていうだろう?」


それからも私は雄兄の愚痴を聞きながら過ごした、お会計の時に雄兄の顔が青くなっていたが、まぁ私は悪くない正当な対価である。


雄兄の愚痴を居酒屋で聞いた翌日、私は近所のスーパーに来ていた。

私の他にも結構な数の人が集まっていた。

居酒屋で雄兄と話したように現在日本は孤立しており、資源が入ってきていない。


なので休日はガソリンを使わない市内での活動がメインとなり、どうしても同じ場所に人が集まるわけだ

そんな状態でアイドルだとかネット投票だとかといった事が出来るのかと言うと、現状数少ない娯楽だから許されているのだ。


日本政府は5年かけて食料自給率をなんとか100%近くまで戻す事に成功した、そして食べ物が手に入れば今度は娯楽を欲しがるのが人間であり、まして5年前までは当たり前に楽しんでいた物を失うのは我慢できないだろうという事で、優先して電気を使う娯楽、テレビ、ゲーム、ネット等に力を入れたのである。


その為、私のようなインドア派は娯楽に困らないが、アウトドア系の趣味を持つ人間、特に車なんかが趣味の人間は大変だ。

ドライブをしようにもガソリンは大きく値上がりしており、簡単には遠出をすることはできない、かといって近場でバーベキューなんかをしようにも輸入が出来ない為に安い肉が手に入りにくく、未だに国産の肉は高い値段が付いている。


それでも北海道は恵まれている方だ、特に海沿いの田舎町に住んでいる私達は生の魚を食べられるし、牛や豚等を育てている牧場も近場にあるのだから。

ガソリンに困っている日本では飛行機による高速輸送が難しくどうしてもトラックや船による輸送に頼る事になる為、生魚を楽しむことが難しいのである。


一時期は北海道からの食糧輸送が難しいとして北海道が独立するなんて話も出たりもしたのだ(結局なくなったが。)

ダンジョン一つで世界は大きく荒れた、それでも日本は恵まれている方だ、そんな事を考えながら私はアニメ映画を借りて家に帰るのだった。

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