水風船系スライム24話
僕と雄兄の心が折れそうになる出来事があったが、無事にダンジョンの6階層にたどり着くことが出来た。
「雄兄、ここで出てくるモンスターはどんなモンスターなの?」
「「この階層はスライムだな(ですね)」」
彩音嬢が雄兄の言葉に被せるように言うので、彩音嬢の方を見ると。
「これでも研究者、つまり博士ポジションです説明はお任せください」
そう言って比較的豊かな胸を叩く、隣では震えないお胸の持ち主であるエリカ嬢が忌々しそうな顔をしてみていた。
「それじゃあ、説明は任せるとするか」
「お任せください、この階層からは基本的にスライムやワームのようなファンタジーモンスターゾーンになりますね」
6階層はスライム、7階層はワーム(でかいミミズ)8階層はゴースト(物理が通用する浮いた敵)9階層はオオコウモリ。
「そして10階を守るのは人型モンスターであるゴブリンです」
ゴブリンついに10階層で人型のモンスターが現れるのか……
険しい顔をしているのは僕だけではなく、エリカ嬢も同じだったセバスさんは表情を変えていない所はさすがプロの執事と言ったところなんだろうか?
「大丈夫よ、ダンジョンの補正のおかげでゴブリンを殺す事に対して抵抗はなくなるし、ダンジョンから出て罪悪感に飲まれることもないわ」
そんなエリカ嬢を彩音嬢が励まし、エリカ嬢は顔を上げて大丈夫だと返事をする。
「尊い」
「何言ってんだお前」
僕が二人のやり取りに感銘を受けていると雄兄が無粋な突っ込みを入れてくる。
「二人とも乳繰り合うのはそこまでにしてくれ、スライムが来るぞ」
雄兄の言葉に二人はばっと離れて戦闘態勢を整える、と言っても二人ともセバスさんの後ろに移動するだけなんだが。
「雄兄、僕はどうすればいい?」
「お前はそのままそこで立ってろ、という10階層を攻略するまでお前のレベル上げをする予定はねえ」
剣を構えて雄兄の支持を聞くと、こんな言葉が返ってきた。
僕が雄兄を見ると、その時には雄兄はスライム相手に走り出していて、代わりに彩音嬢が答えてくれる。
「ダンジョンの10階層を攻略すると、パーティへの加入権と参加権が手に入るんです、パーティに加入状態ですと何もしなくても適正レベルまで上げる事ができるので、それを利用して一気に上げてしまおうということではないでしょうか?」
まさかの本格的なパワーレベリングだった、そんなことを考えていると、雄兄が赤いゼリーのようなものをもってこちらに戻ってくる。
「おう、太郎仕事だぞ」
「お帰り雄兄、これがスライム?僕はてっきりもっとぐちょぐちょネロネロな方かと思ったんだけど」
雄兄から渡されたスライムはなんというか、赤い水風船のようなタイプのスライムだった。
「おう、こいつら色に合わせて魔法使ってくるから後ろにいても気をつけろよ?」
「ん、わかった気を付けるよ、とりあえず〈解体〉するよ」
僕は雄兄から受け取ったスライムに〈解体〉を使う、スライムの〈解体〉は初めてなので皆興味津々でノートPCをのぞき込んでいた。
『魔石』『スライムコア』『レッドゼリー』
そこに表示されたのは悪魔の数字3だった……
「もう3嫌だあ…」
僕と雄兄がその場に膝をつき、残りのメンバーは苦笑を浮かべるのだった。
「気を取り直して、別のスライムを狩りにいくぞ」
『スライムコア』と『レッドゼリー』を〈解体〉で取得した僕達は再びダンジョンの中を進む。
スライムコアは魔石のような丸い石っぽいものだが、どうも魔石とは使い方が違うようだ、対応スキルも〈魔工学〉ではなく、〈錬金術〉になっている。
「〈錬金術〉ですか…?」
どうやら彩音嬢も初耳のスキルらしく、これまで誰も取得したことがないスキルのようだ。
そしてレッドゼリーだが、これも〈錬金術〉が対象のスキルのようで、どう使えばいいのかわからない。
「とりあえず、残りのスライムを倒しつつ、今日は6階層を隅まで見て、終わりだな太郎なるべく床や壁も見て手に入るアイテムがないか確かめてくれよ?」
雄兄の言葉に僕は頷きを返す、前回薬草が出たのも4階層だったことを考えると6階層には普通に新しいアイテムがありそうだから。