求)ダンジョン解体新書 23話です
僕達はダンジョンの6階層を目指していた、5階層までは僕と雄兄の実験で十分だと判断されたからだ。
ダンジョン内を移動中、ふと気になったことがあったので彩音嬢に話しかける。
「そういえば、彩音嬢は何故そんなに前髪を伸ばしているんだい?ダンジョン探索で不便じゃないのかい?」
僕の言葉に彩音嬢は、うぅっと呻いた後に髪をかきあげて
「魔眼っていうスキルを取得したせいでこんなことに」
そう言った彩音嬢の目は左右の色が違った、左目が元々の色であろう茶色っぽい黒に対して、右目は青かったのだ。
「まさかこんなことになるとは思わずに、勘違いしてほしくないのだけど、別に目を合わせる事でなにか影響が出るという事はないよ、ただ、オッドアイってファンタジーならともかく現実だとね……」
だから目を隠すために前髪を伸ばしたのだという。
「別にゲームやマンガみたいに前髪を伸ばしてるからって、内気だったりしないのでそっちは期待しないでね」
そういって、ニヒヒと笑う彩音嬢に僕は苦笑する。
1階層は順調に進み、2階層に入った所でエリカ嬢が僕に話しかけてくる。
「そういえば、佐久間さんには3万匹近いウサギを倒してもらったと思うんですが、やっぱり4枠目以降のアイテムは出なかったんですよね、何か手ごたえの様なものはありませんでしたか?」
「ああ、全然手ごたえも…あれちょっと待って、倒してもらった?」
「はい、佐久間さんにウサギ虐殺を依頼したのは私ですので」
僕の脳裏に夢に出てきて尻尾を押し付けてきたウサギ共の怨念が浮かぶ。
「あれはエリカ嬢のせいだったのか…ふふ…ふふふ…」
僕が暗い笑みを浮かべていると、エリカ嬢がびくっと体を震わせ、僕から一歩距離を取る。
そんな僕等の様子を見てセバスさんがこちらに近づいてくる。
「どうしました、お嬢様、佐久間様?」
セバスさんはエリカさんをかばう様に僕の前に立ち、臨戦態勢になる、それほどに邪気があふれていたのか僕は……
「あ、違うのよセバス、私がちょっとやりすぎてしまったみたいなの、だから大丈夫よ」
そう言ってエリカ嬢はセバスさんを止める、僕も邪気を引っ込め深呼吸をする
「一体何があったというのです?」
それでもエリカさんを隠すセバスさんに、僕は地獄のウサギ3万本ノックのことを話す。
最初こそ困惑していたセバスさんだったが、僕がウサギの悪夢を見始めたところで冷や汗を流し、最終的にはエリカさんへのお説教を始めた。
「それにしてもアイテムが3種類しかないモンスターですか、他のモンスターに比べて確かに少なく感じますね」
エリカさんへのお説教を終えたセバスさんがこちらに土下座で謝罪をしようとして雄兄と2人で止めるというアクシデントの後、僕達は再び6階層に向けて歩いていた。
たしかにセバスさんの言う通り、3種類は他のモンスターと比べても少なすぎる。
だからこそ僕等も気になって何度もウサギを虐殺したのだ。
「3万匹倒して出なかったのですから、ないと思いたいです……」
「そうだな……」
僕と雄兄が死んだ魚のような目をするとエリカ嬢が謝り、セバスさんがこめかみを押さえ、彩音嬢は苦笑いをしていた。
「特定の部位を破壊したら増えたりとかはないんですか?」
「それも試したが、だめだった、頭、足、尻尾、爪、牙これだけ破壊しても部位は増えなかったんだよ」
エリカ嬢の言葉に雄兄が答える。
そう、僕等も色々と試したのだ、だがそれでも増えなかった。
「3万くらいは倒したと思うが、それでも4枠目のアイテムを見ることが出来なかったんだ、だからウサギはアイテム3枠までしかないと思いたい」
そう、私と時々雄兄の2人で結局3万体近いウサギを虐殺し、結局幻の4枠目を見ることができなかった。
なので、物欲センサーではなく、存在したいのだと、そう思い込みたかった
『うさぎの尻尾』
「「うっそだろお前……」」
私と雄兄はその場に膝をついて天を仰いだ。
3階層に向かう途中、彩音嬢が倒した最初のウサギから出たアイテムがこれだった。(これ以降は一つも出なかった)
私と雄兄が物欲センサーに勝てなかったとか、そんなことはどうでもいいのだ。
「これは、もしやネズミにもレアなアイテムが存在するのでしょうか、いえ、ネズミだけではなく全てのモンスターに存在するのでしょうか?」
そうセバスさんが言った通りだ、もしかしたら全てのモンスターがレアなアイテムを持っているとしたら。
いや、それどころか、私達は5枠までしかアイテム枠がないと思っていたが、実は6枠…とあり、その全てがレアアイテムだったら。
「あっあっあっ……」
私は一体どれだけの数のモンスターに〈解体〉を使わなければいけないのだろうか……
「お、落ち着いて、太郎さん、政府も貴方一人に全てのモンスターのアイテムを判明させろとは言わないから」
彩音嬢が私の肩を掴んで揺さぶる、考えてみてほしい、ネトゲでドロップテーブルが判明していないモンスターのドロップテーブルを完全解明するまで帰ってくるなと言われたら……
「悪魔の証明じゃないか!」
私は絶叫する、誰か僕にダンジョンの解体新書をください……