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キララ嬢と北原君はハッピーエンドを迎えるようです19話

私がダンジョンに潜り始めてから、早いもので5ヶ月が過ぎていた。


短い夏を過ぎて、山間部を通る車は、突然の雪に対処する為に冬タイヤに変え始めたそんな時期、私に一通の連絡が届いた。


次の日曜日にダンジョンのある町でイベントを行うから来てほしい。

そう連絡をくれたのはキララ嬢だった。

同様の連絡が北原君にも届いたようで、どうしますか?と電話がかかって来たので、私は参加する、


私からすると、参加を願われて断るほどに悪い思い出はない相手だし、何より、突然DBGを脱退し、アイドル活動を一切行わなくなったことに疑問を覚えていたからね。


私がそう説明すると北原君は少しだけ悩んだ後に

「じゃあ自分も参加するっす」と言う


北原君からすると、キララ嬢のせいでスキルを変えられて、そのせいで苦労をしたと恨んでいてもおかしくない相手だ。

そんな私の疑問に北原君は、自分はもう恨んでいないし、キララ嬢にお願いされて変えたのも自分だと、そう言った。

何より短い期間とはいえ、仲良くしていたキララ嬢が突然アイドルをやめたことを心配しているのだと。


私が20歳の時にそんな風に割り切れたかなと、北原君の発言に感心していると

「それになんだかんだでゆりかと結婚したのもあの時の出来事があったからとも言えますからね。あの時にキララちゃんが俺に魔術の選択肢を与えてくれなかったらゆりかと結婚してなかったかもしれませんし、そういえばきいてくだs」


私は通話を切った、きっとこの後奥さん自慢が始まるからだろうと、思ったからだ。


北原 ゆりかさんは北原君の結婚した相手だ。

探索者としての仕事を初めた頃に偶然出会った幼馴染だと言う。

彼曰く、金魔術を取った事で周りの女性が彼を貴金属生成装置にしようと寄ってきた中、探索者北原和樹ではなく、幼馴染北原和樹として扱ってくれる彼女のやさしさに惚れて交際を経てから結婚したらしい。


今時素晴らしい話だと思う、不満があるとすれば、独り身の私に対して、彼女の自慢話をしてくることだろう。

爆発しないかなー!


そんな事を考てしまいむなしくなった私は人肌恋しさにたまにはお酒でも飲もうかと女の子がお酒を注いでくれるお店に足を運ぶのだった。




キララ嬢との約束の日曜日、自衛隊が急遽用意したコンサート会場に来ていた。


会場では、土魔術が使える自衛隊員が、地面に両手をつけたかと思うと、その部分が隆起し、平らなステージを作っている。

その光景を見て私が、両手をぱんして地面につける錬金術師を連想していると、北原君が私を見つけたようで、手を振りながら近づいてくる。


横にはゆりか嬢も伴っており、寒くなってきたからか、人よりも寒さに弱いのか、周りの人よりも1枚多く防寒着を纏っていた。


「やぁ、北原君、それにゆりか嬢も元気そうでなによりだよ」

私がそう挨拶をすると、ゆりか嬢はペコリと頭を下げて、佐久間さんも、と言ってくれる、いい子だなぁ。


「そんな事より見ました?まるで俺が子供の頃に読んだ漫画みたいに、地面に手をついてパンですよ、うひゃーテンション上がりるわー」

そう言って自衛隊員がステージを作っている方を指さす北原君、君も変わらないねぇ。


「北原君も魔術師なんだから似たようなこと、出来るんじゃないの?」

そう私が尋ねると、難しそうな顔をした後に

「魔術はイメージが大事なんですよ、目に見えない部分に魔法を発動させる場合、触れている部分から魔力を流し込んで、その魔力を介して視ないとといけないんですよね、その分だけ、一つ余計なプロセスが増えるので制御が複雑化するので俺にはちょっと、逆に見えてるところならそこがどれだけ距離があろうと発生地点に設定できるので、比較的楽なんですけど」


北原君の説明は感覚的な部分が多くて全ては理解できなかったが、とりあえず、直接見ているもの以外に干渉しようとすると、その制御が複雑になりすぎるということだけは分かった。


魔術を使うのは大変なんだなぁと私が感心していると、5人の男女が私達に声をかけてくる。


そのうちの二人は私も見覚えのある人物だった、私をここに招待してくれたキララ嬢と、マネージャーの三橋さんだ。


「お久しぶりです、佐久間さん、北原君、それにそちらの女性が、北原君の奥様のゆりかさんですね?」

三橋さんが私達に頭を下げた後に、確認をする、どうやら彼はキララ嬢がアイドルをやめた後もキララ嬢を支えているようだ。


ゆりか嬢が三橋さんに頭を下げて、招いてもらった事に礼を言い、三橋さんがそんなゆりか嬢に頭を下げる。

そんな光景を横目にキララ嬢を見ると、キララ嬢は非常にいい顔をしていた。

そう思ったのは北原君も一緒のようで、お互いに挨拶を交わした後にキララ嬢に尋ねる。


「キララちゃん、なんだか明るくなったような気がするけど、なにかあったんすか?」

北原君にそう言われ、キララ嬢は恥ずかしそうに、少し顔を赤く染めて

「私が本当にやりたかった事を思い出せたから、私はただ、自分の歌を聞いて誰かを笑顔にしたかったの、それが今叶いそうだから、きっとそのせいかな?」


そう言って私達に笑顔を向けた後に、北原君に頭を下げて、ごめんなさいと謝る。


私達が慌てていると、そんな私達の事を見ずにキララ嬢は頭を上げることなく言葉を続ける。


「佐久間さんに取得スキルの変更をしてほしいなんて言ってごめんなさい、北原君に、魔術スキルを無理に取らせてごめんなさい」


そう言って謝るキララ嬢に北原君は顔を上げてくれと言った後に、いい顔で笑い

「俺が今ゆりかと幸せになれたのはあの時間があったからだ、少しでも違う行動を取っていたらゆりかと結婚できなかったかもしれない、だから俺はもうキララ嬢に対して恨みなんてないっすよ、だから謝らないでください、むしろ俺はキララ嬢にも感謝したいくらいなんですから!」


そう言って笑う北原君は、本当に晴れ晴れとした顔をしていて、横で見ていた私は、本当に北原君はいい子だなと思う。だから私は少しだけ嫌がらせをすることにした。


「そうだね、確かにキララ嬢のおかげで女性の怖さを知る事が出来たんだから、北原君はキララ嬢に感謝をしたほうがいいのかもしれない、もしキララ嬢の事がなければ今頃悪い女性に騙されていたかもしれないもんね」


私の言葉に北原君が頷く、キララ嬢もその言葉で気が楽になったのか笑顔を浮かべる、ここだここしかない!


「しかし、あんなに毎日キララ嬢の後ろ姿を見てへらへらしていた北原君も結婚かー、いやー、あの頃は毎日キララ嬢に鼻の下を伸ばしていたっていうのに、結婚は人を変えるものだなー」

と私はあえてゆりか嬢に聞こえるように言うと、三橋さんと話をしていた、ゆりか嬢がこちらにゆっくりと歩いてくる。


北原君がこちらを見て、なにしてくれてるんすか!と言ってくるが、私は知らん、独り身の男に私生活の充実っぷりを惚気てくる君がいけないのだよ。


「北原君、君はいい友人であったが、君が惚気るのがいけないのだよ」

私がそう言うと、北原君は、謀ったな!と言った後にゆりか嬢に言い訳を開始する。


「いいんですかあんなこと言って、二人の仲にひびが入ったりするのは私困るんですけど」

北原君の方をみて心配そうに私に聞いてくるが、問題ない、それに以前二人から相談を受けていたのだ。


北原君からは

「ゆりかにもっと甘えてほしい、すねたりわがままを言ってほしい」

ゆりか嬢からは

「和樹がそういうんですけど、どうすればいいのでしょうか?」と


その証拠に拗ねているゆりか嬢はちらちらと北原君の顔色を伺いながらだし、北原君はそんなゆりか嬢を見て嬉しそうだ。


ああ、どうして独り身の私があんな空間を作る手伝いをしなければいけないんだ……し に た い


「それならいいんですが、そうだ佐久間さんに、一つ伝えたい情報が」

そう言ってキララ嬢が私に密着して耳元に口を近づけてくる

一瞬喜んだが、キララ嬢の顔が真剣だった事から告白とかそういう話ではないなと理解した私は静かにキララ嬢の言葉を待ち


「ご迷惑をかけますいい薬送っておきました、だそうです」


私が思わず、誰から?と聞くも、キララ嬢は首を横に振るだけで答えてくれない、答えられないのかもしれない。


その後キララ嬢は私達と別れ、ステージへと向かう、このライブは国が全ての費用をもっており、無料で誰でも見られるとあって、沢山の人が集まっていた。


キララ嬢のライブは素晴らしかった、全てを忘れて楽しむというのはきっとあの時間のようなことをいうのだろう。


そのままキララ嬢の言葉を忘れていたかった私の元に、小尾総理から、良く効きますと書かれた手紙と共に胃薬が送られてきて、私は言いしれぬ不安を覚えるのだった。

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