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初の状態異常攻撃は17話

ホルダーが起こしたことは世間に大きな波紋を生んだ。

テレビでは連日、よくわからない専門家がホルダーの危険性を訴え、自分自身もホルダーになることで身を守ろうと、ダンジョン開放活動に人々を巻き込もうとし、現在レベルを持っている政府公認探索者を一纏めで犯罪者のように扱った。


そんな中で意外にも僕達に味方したのはキララ嬢が所属する芸能事務所だった。

探索者に出資した分の回収の為か、それとも自分達のアイドルを売る為かはわからないが、自分達はダンジョンの真実を知っていると言って、動画を宣伝した。


その動画の中ではモンスターから魔石しか手に入らないことを中心にダンジョンが決して宝の山ではないという事実を認識させ、さらに事件を起こした男達が自分達の意思でアルコールに対する耐性をカットし、酔っ払ったのだという事実も報告されたのだ。


これにより、ある程度だがホルダーに対するマイナスのイメージは改善された、だが事件を起こしてしまった以上完全に改善されるのは難しいだろう。

ホルダーに対するマイナスイメージが多少改善され、僕達が仕事を再開する少し前、キララ嬢が東京へと戻った。


元々当初の予定を大きく超えてダンジョンに潜っていたのだが、この間のホルダー事件により、短期間とはいえ、ダンジョンに入れない日々が続いていたことと、DBGが本格的に活動を始めるという事で東京に帰ったのである。


それから少し経ち、私達はダンジョンの5階層に足を踏み入れる。

「5階層の敵は野犬だ、これまでのモンスターとは大きな違いがあるが、まぁ危険はないので、実際に体験してもらおうと思う」

僕達はまたか…という顔をして顔を見合わせ、今回は僕がいくよと頷く事で意思を伝える。

北原君は、すみませんと頭を下げるが、バッタの時には痛い思いをしてもらったからね。


「それじゃあいくぞ、と言ってもいつも通りにやればいい、俺が野犬の動きを止めるからお前はそれにとどめを刺せ」

雄兄の言葉に僕は頷き、雄兄の後ろについて歩く。

キララ嬢と三橋さんがいなくなったことで僕等の移動スピードは大きく上がっていて、すぐに最初の野犬の下へとたどり着いた


「よし、太郎ちょっとあの野犬のいる小部屋に近づいてくれ」

「わかった、けど雄兄を信頼してるからね」

僕はそれだけ言うと、小部屋に近づいていく、その結果今までなら攻撃を受ける距離になるまでぼーっとしていたモンスターがこちらを見ると駆けだしてきたのだ。


僕が思わず情けない悲鳴をあげそうになったところに横を通り抜けて雄兄が野犬の体を地面に寝かせ、上から踏みつけて動きを封じていた。


「これがこいつらの習性だな、今までのモンスターはそれこそ攻撃が当たりそうになるまで向かってこなかったが、こいつはこちらに向かって全力でダッシュしてくる、5階層で狩りをしようと思ったら気をつけろよ、さて太郎、とどめを刺せ」


僕は雄兄に言われ、頷いて近づくと、野犬がこちらを見て、唸り大きく吠えてきた。

僕は思わず一歩下がり、恐怖で無茶苦茶に剣を振り回そうとして

「落ち着け太郎、相手は身動き一つ取れない状態だぞ」

そういってパンパンと手を叩く雄兄の声で我を取り戻した。


「雄兄、僕は一体どうしたんですか?」

「野犬のスキル、テラーとか恐怖ってところかね?相手の精神状態に作用するスキルを食らったんだよ」

そう言って苦笑いをする雄兄に対して犬は唸り声をあげて睨みつける。

なるほど、恐怖による恐慌状態という奴かと僕が納得していると雄兄が剣を振るジェスチャーをする、僕は少し腰が引けた状態でそれでも今までの経験通りに綺麗に野犬の首に剣を落とすと、野犬は最後まで唸り声をあげたまま、首が落ちた


「太郎のを見ててなんとなくわかったと思うが、モンスターの中には人間の精神状態を左右するスキルを持つ者もいる、お前達が直接戦うのはこの野犬だけだろうが、覚えておけよ?」


雄兄の言葉に僕等は頷き、改めてスキルを使われる恐怖を理解するのだった……

それからは心構えができていた事もあってテラーに対してはある程度抵抗する事ができた。

あくまである程度であり、時々恐怖状態になったりしたけど、そう言う時は雄兄が大きな音を立てて起こしてくれたので僕等は傷などなく、この日の狩りを終える事ができた。




「そして楽しい残業のお時間だ今日のお相手はこのワンチャンだな」

「さっきいっぱい倒したのでもう相手したくないです」

北原君がダンジョンから去って幼馴染な彼女さんとのデートへと向かったのを見届けた後、何故か僕は雄兄と残業デートである。



「北原君は今頃ろりきょにゅー彼女とデートしてるって言うのに、僕は雄兄となんて、理不尽すぎる……」

「あん、別にデートじゃないって言ってただろうが」

そう北原君曰く、今日は普段お昼ご飯を作ってもらってるお礼に晩御飯を一緒するのだという。


「そんなんデート以外の何物でもないじゃないですか!」

「でもあいつ等まだ清い関係なんだろ?」

そう北原君はいまだに彼女さんと清い交際を続けているのだ、中学生かよ?って言いたくなるようなデートを嬉々として語られる僕のストレスはマッハである。


「ほれ、そんなことよりもさっさと終わらせて帰るぞ、俺はお前と違って暇じゃないんだ」

そして目の前の雄兄も結婚こそしていないが学生時代は遊び人として名を流した男である、憎い……


「さて、野犬は何を落とすのかねぇ」

僕が嫉妬の炎を燃やしていると、一匹の野犬が僕等の前に現れ、首を刎ねられた。

野犬は階層のわりに身体能力は高くないモンスターだ、どちらかというと状態異常お試しモンスターと言った感じだろうか?


「ほれ、試してみてくれ太郎」

首を刎ねられた犬の体がこちらに渡される、カタツムリの時に殻を壊してもドロップに支障がないという事がわかってから、雄兄はさらに容赦がなくなっている。


『魔石』『爪』『牙』『毛皮』『肉』

〈解体〉で表示されたのはこの5種類だった。

「5種類か……5種類のモンスターが多くね?」

「やめて雄兄、僕はもう夢でまでウサギを虐殺するのは嫌なんだ……」

「俺だっていやだよ……」


2万体のウサギの怨念は私を未だに縛っているのだ、そろそろ許してください……

「さて、それじゃあ、ざっとこの階層を回ってみて、何か〈解体〉で新しいアイテムが手に入らないか試してみるか」

「そうだね、僕もそれに賛成だよ!」


二人でわざと大きな声を出してウサギの悪夢を振り切るべく、ダンジョン内を回ったが、残念ながら新しいアイテムを発見する事は出来なかった。


そして僕が送った報告を見たとある少女が、追加でウサギ1万匹のノルマを課すことからも逃げられなかったのだった。



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