表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/25

レベルを上げて物理で殴れば大体の事は解決する15話

仕事時間でバッタを狩り、残業でウサギを狩る生活を初めてしばらくがたった頃、僕等はレベルが上がり、4階層へと向かう事となった。


「雄兄、4階層の敵はカタツムリでしたっけ、どんなモンスターなんですか?」

「ん~、結構でかいカタツムリだな、人によっては受け付けないかもしれない、特にキララは虫が苦手なら無理に来なくていいぞ」

「大丈夫です、これでも小さい頃は虫取りとかしてましたので」

雄兄の言葉にキララ嬢は少しむっとした顔をして返事をする、でかいカタツムリとか僕は会わずに済むなら会いたくないんだが。


「でかいと逆に気持ち悪さが減るから安心しろ、粘液出したりもしないから」

「それなら多分大丈夫っすね、虫の粘液って独特の気持ち悪さがあるんで……」

北原君の言葉に僕は頷く事で同意を示す。

どうしてあいつらはあんなに気持ちの悪い物を出すのか。


「それじゃあ、さっそく先に進むぞキララと三橋も遅れずついてこい」

3階層までは息を切らさずについてこれるようになったキララ嬢だが、階層が深くなるほど移動速度は落ちていた。

最初は足が太くなることを嘆いていたキララ嬢だったが最近では開き直ったようで、動画にもよく足を出している。


そんな明け透けなところが気に入った固定のファンがついたらしく最近ではランキングも20位くらいまで上がっていた。

そのおかげもありキララ嬢も三橋さんもある程度余裕があり、北原君は最近仲のいい女の子が出来て青春しているらしく安定しているようだ。爆発しないかな北原君……


そんな負の念を北原君に送りながら、長いダンジョンを走り抜けついに対面したカタツムリはというと……

「いやいや雄兄、これはさすがにでかすぎるでしょ……」

そこにいたのは殻のでかさが僕の背丈ほどもある化け物カタツムリだった。

「だからでかいって言っただろ?それにこれだけでかいとなんか家具みたいで怖くないだろ?」

「その考えは無理があると思うんだけど、それでこれどうやって倒すの…?」


僕が質問すると、雄兄はいきなりカタツムリの殻にヤクザキックを叩きこみ、横に転がし、殻の上に腰かけると

「刺せ」と一言だけ言うのだった。


「僕、これまでの戦闘で一番このカタツムリが可哀そうだと思うんだけど……」

僕の言葉に北原君も頷き、キララ嬢と三橋さんは取れ高に頭を悩ませていた。

戦い方は簡単、出会いがしらに雄兄がカタツムリの殻を蹴り、横向きに転がすと、殻の出入り口に剣を刺したり、火魔術を叩きこむというあまりにもひどい苛めの様な光景が繰り広げられたのであった。


「そうは言うがこれが一番楽で安全なんだから文句を言うな、それともあの巨大なカタツムリと真っ向勝負してみたいのか?」

雄兄の言葉に私は頭を悩ませる、確かに身長180近い僕に匹敵するカタツムリがゆっくりとはいえ突っ込んでくるのと真っ向から勝負はお断りしたい……

北原君も首を縦にぶんぶんと振っている、最近は無理や無茶をしなくなったので、この間それとなく聞いてみると、最近再開した幼馴染が、少しでも北原君が疲れた顔していたり、怪我をしていると随分と心配してくるらしい。

だからその子を心配させないために危険な事をしたくないのだと……爆発しねえかなぁ。


そんなカタツムリだが倒すと殻の中心に魔石が生えてきて(正確には魔石を殻で隠しているらしい)くれるので、非常に楽に魔石を確保できるのが特徴だ。

下層になると、カタツムリの頭に生えてる突起(やり?)を伸ばして攻撃してきたり、強い酸性の粘液を飛ばしたり、自分の体にまとわせて攻撃を滑らせたりしてくるらしい。

虫系モンスターって絡め手が得意なイメージがあったが、まさにそんなイメージ通りの面倒なモンスターだった。


とはいえ、上層ではその面倒な能力を使わせてもらえない以上ただの案山子に過ぎずに、コロコロ転がされて僕等の経験値にされるのだった…



「さて、そんなわけで残業のお時間だぞ太郎」

「わーい、残業楽しいなぁ……」

今日も今日とて僕は雄兄と共にダンジョンに残業で潜っていた。

今日は気分転換もかねて、4階層来ているのだカタツムリに〈解体〉を使う実験の為だ。


「まぁ、そういうないい加減ウサギを虐殺するのにも飽きてきただろう……?」

「最近、僕の夢にウサギが出てくるんだけど、雄兄は…?」

「俺もだよ……」

最近、夜ベットに入るたびにウサギ共が僕の顔に尻尾を押し付けてくる夢を見るのだ、これはやはりウサギのドロップには尻尾があって、それを手に入れなくてはいけないという暗示だろうか……


「今日はウサギの事は忘れるぞ、カタツムリのドロップを調べるのが仕事だからな」

とはいっても殻と触覚、魔石くらいしか手に入らなさそうだけど、さすがに肉は手に入らないよね……?

「そういえば雄兄がカタツムリを倒す時はどうやって倒すの?やっぱり殻から出てる部分を剣で切る?」

私が問いかけると、ちょうどいいところにカタツムリが現れる、百聞は一見にしかずと言わんばかりに雄兄はカタツムリに近づくと、鞘をつけたままの剣で殻を全力でぶん殴った。


殴られたカタツムリの殻はそこを中心にひび割れていき、ついには殻を完全に失い、残ったのは見た目ナメクジである。

カタツムリが雄兄に振りかえるよりも早く、剣が残ったカタツムリを真っ二つにし、そのまま動かなくなった。


「な、簡単だろ?」

「まぁ、なんていうかTHE脳筋って感じでしたね」

僕が苦笑しながら言うと、雄兄は笑いながら、カタツムリだったものを指さす、だが雄兄よ少し待ってほしい。


「これ、殻が手に入らないじゃない?」

僕の言葉に雄兄がはっとした表情を浮かべるが後の祭りである、とりあえずカタツムリ相手に〈解体〉を発動すると

『魔石』『触覚』『肉』『殻』と表示されていた。


「どうしよう、雄兄肉があるよ」

「ちげーよ問題はそこじゃねえだろ、どう考えても壊れた殻があることが問題だろ」

そう、雄兄が完膚なきまでに破壊した殻が〈解体〉で取得可能なアイテムにあるのだ。

「どういうことだと思う、雄兄?」

「さぁな、とりあえず報告だけしとくわ、後はうちの研究者共が仮説を立ててくれるだろうよ」


僕の言葉に雄兄はそっけなく答える、そういえば雄兄はこういう判らない事をあーだこーだ議論するのがあまり好きな人じゃなかった。

「どうしよう、雄兄、最初は『肉』いっとく?」

「それでいいんじゃねえかな、というか準備不足だから肉以外は無理だろう」


たしかに言われてみれば『触覚』も『殻』もすごい大きいから持って外に出れば目立ちすぎるだろう、これは総理に相談して何かしらの手段を考えてもらわないといけないかもしれない。


というわけで今回は『魔石』と『肉』だけをいくつか取得し、メインは4階層の捜索に変更した。

幸い、カタツムリはこちらに対して積極的に攻撃をしてくるタイプではないので、無視して周囲を見渡す、すると地面で何かが反応した。


「雄兄、何か反応した、ちょっと〈解体〉してみるね」

「おう、周辺に敵の気配はないし、罠もないと思うが気をつけろよ?」

僕は雄兄の罠という言葉を聞き、少しだけ注意深く周囲を探りながら、反応している物に近づく。

そこにあったのは、小さな花だった。

〈解体〉スキルを使うと表示されたのは『薬草』だった。


「雄兄、ついにファンタジーのお約束アイテムだよ!」

「なんだ、へぇ薬草か、さっそく解体してみてくれ」

私は雄兄の言葉に頷き、『薬草』に解体を使う。

すると手の中に小さな黄色い花が手に入る、さっそくその黄色い花に鑑定Ⅰを使うと

薬草(4F)

分類・薬草

飲食・可

毒 ・無

魔力・20

効果・薬効

必要・調合

と表示された。

「詳しい薬草の名前なんかは表示されないんだな」

「そうみたいだね、詳しい説明は〈調合〉スキルを3まで上げて取れる鑑定Ⅱで見れそう?」

僕の言葉に雄兄も頷く、鑑定Ⅰではあまり深い情報を入手できないのが困りものだ。

「それにしても薬草とは、中々に興味深いアイテムを……」

私も雄兄の言葉に頷く、これでダンジョンアタックが楽になるかもしれないなぁと思いながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ