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捜索者始めます(1話)

地球にダンジョンができたけど、小説のようにはいきませんでしたのリメイク作品となります。

ちょこちょこ内容が変わっているので、もしよければ改めて読んでいただけると嬉しいです


2030年、地球にはダンジョンと呼ばれる洞窟が突然現れた。

ダンジョンには無数のモンスターが沸き、そのモンスターを倒す事で人間はレベルと、スキルと呼ばれる特別な力を得る事が出来た。


レベルには一つのルールがあり、ダンジョンの階層×2までしか上げる事が出来ない。

それでも、比較的危険が少ない5階層までで上げる事が出来るレベル10でも、一般人とは比べ物にならない力を持つことが出来る。



またモンスターを倒す事で手に入れる事が出来る魔石は、特定のスキルによって様々な用途に使う事が出来る。

その中でも、魔石を使った発電は原子力発電に代わるものとして期待されていて、国が最も力を入れている分野である。


だが、良い事があれば悪い事もある、ダンジョンが現れたことでレベルとスキルを得て様々なことが出来るようになった人々その力を悪用するもの達が現れたのだ。

最初にその力を暴走させたのは中国だった。


中国では、増える人口と貧富の差が問題となっていたのだ、広大な土地の中に無数のダンジョンが生まれた中国は、ダンジョンの封鎖に失敗、無数の貧困層がダンジョンへと足を運び、膨大な数の負傷者と引き換えに、大量のレベル所持者、後に『ホルダー』と呼ばれる人達が生まれた。


ホルダー達と中国政府は激突し、結果はホルダーの勝利で終わった。

膨大な血を流した戦争が終わり、中国は安定するかと思われたが、残念ながら中国は一つに纏まることができなかった。

ホルダーの中で意見が分かれ、ホルダーの中でも高レベルの人達がそれぞれ、自分の出身地にあるダンジョンを中心とした、国を作り、国土を拡大する機会を虎視眈々と待ち続けていた。


現在日本を除いたアジアの国々は他国からの侵略を恐れて、自国の防備を整える事で手一杯である。

これは韓国でも同じであり、日本に対する出兵論が一度上がったが、日本との戦争中に攻められることを恐れて動くことができなかった。


そんな中、日本は比較的穏便にダンジョンを封鎖することに成功した。

これはダンジョンが持つ一つの性質が大きく作用している、日本のダンジョンは基本的に、自衛隊基地か、国有の深い森林に出来るものが多いのだ。

これは日本だけではなく、他国も同じでダンジョンは一定の距離を置いて、国が管理している土地に出来やすい、国土が狭い日本は、そのおかげで出来たダンジョンの数も少なく、他国よりも楽にダンジョンを管理する事ができたのである。


しかし、ダンジョンと言う単語は人々の想像を掻き立てた。

ダンジョンが出来てから5年が経過した2035年現在、ほとんどの人間が幼い頃にゲームやマンガといったサブカルチャーでダンジョンやモンスターに慣れ親しんでいる。


そういった作品ではモンスターを倒す事でなんらかの財貨を入手できるものが多く、沢山の人間がダンジョンを開放しろと、政府に抗議したのだ。


政府もダンジョンを開放するつもりはある、だがすぐにダンジョンの開放ができない理由があった。

その為、まずは何人かの民間人を自衛隊の下につけて、実験的にダンジョンに潜らせるという試みが行われた。

その民間人が問題を起こした場合、その人間を選んだ自衛隊員にも処分が下される為、誰でもいいというわけではなく、ある程度信頼のおける人間を探さなくてはいけない。


「そこでお前が選ばれたわけだ、俺の信頼に答えてくれるよな?」

そう言ったのは私こと、【佐久間太郎】の従兄である、【青木雄一】だ。


「確かに私は今休職中だから、公務員になれるって言うなら悪い話ではないけど、どうしても裏を疑っちゃう話しなんだけど?」

私がそう言って雄兄を睨むと、雄兄は腕を組んで、そりゃそうだと言い

「レベルアップで取得できるスキルなんだが、酷く複雑な取得条件があるみたいでな、その条件を調べたいこと、複数のスキルを取得する事で得る事ができるジョブの条件を探る事、それとこれは噂の域をでないんだが」


こほんと、咳ばらいをした雄兄、私が次の言葉を待っていると

「中国で村が一つ壊滅した、その壊滅の原因が、ダンジョンのモンスターを倒さない事だったらしい」

そう言われて私は、首を傾げる。

中国でダンジョンのモンスターを倒さずに村が壊滅するなら、日本でも同じ事態が起きていてもおかしくないのに、聞いたことがないからだ。


「本当なの?雄兄」

「いや、嘘だろ」

私の聞き返すと、雄兄はあっさりと否定する。


「どういうことなの?」

「多分だが、中国のどこかの団体が、村相手にスキルの実験を行ったんだろう、その結果村に大きな被害が出たので、モンスターのせいにして自分達は何もしていないと言ってるだけだろ」

雄兄の言葉に私は衝撃を受ける、どこかでダンジョンの外にいれば、ダンジョンの影響を受けることなく安全だと思い込んでいたのだろう。


「気にするな、お前みたいに考えてる人間は多いからな、実際今お前とこうやって話してる俺だってその気になれば、この辺一体を皆殺しにできるくらいの能力は持ってるんだよ、そう考えると怖いだろ?」

隣に住んでる人間が『ホルダー』で、酒に酔った勢いで近所の人間を皆殺しにした、将来そんな事件が起こる可能性は高い、だからこそ法によって制御ができるようになるまで安易に『ホルダー』を増やす事はできないのだ。


「言い方は悪いが、今日本人のほとんどが浮かれているんだ、ダンジョンが現れて、レベルやスキルという、これまで本やゲームでしか目にしていなかったものが自分で手に入れる事が出来るかもしれないってことでな、そのせいで、その裏にある危険性を見る事ができない、もしくは意図的に見ていない」


「『ホルダー』が暴走した場合に危険だっていうこと?」

私が呟くと、うむっと雄兄が頷いた後に、苦虫を噛み潰したような顔で言葉を続ける。

「実は今回選出される民間人のうちの何人かは問題を起こす事がほぼ確定している、そしてそいつらが問題を起こす事で民間人にダンジョン及び、『ホルダー』の危険性を理解させるための生贄扱いされるのも」


そう言う雄兄の顔は酷く歪んでいた、雄兄としてもあまりやりたいことではないのだろう。


「別にその人達が犯罪を起こすと決まったわけじゃないし、何も起きないかもしれないでしょ?まさか政府は無理やり犯罪を起こさせてマッチポンプするわけでもないだろうし」

「当たり前だろ、そんなことなら俺達も協力しないでもなぁ……」


私の言葉に雄兄は少しだけ怒るが、結局のところ最終的には本人の意思である。

「酒に弱いんだよその二人は…多分『ホルダー』になった後も酒を飲んで暴れそうなんだ……」

「あれ、でもレベルが上がれば酔いを無視できるのでは?」

私の質問に首を横に雄兄は首を横に振り

「ある程度は本人の意思でカットするかどうか決めれるんだ、酔わない酒なんて楽しくないだろうから、奴等はカットしないだろうな、そして暴れる」


なるほど、自分の意思でカットするか決めれるなら、酒飲みはカットしないだろう。

「そういうわけで『ホルダー』が事件を起こす、多分酔って電柱を蹴るか、塀を殴ったりするだろう、手加減なしでな、その事件を受けて国民がどういう反応を示すかわからないがそれで少しでも『ホルダー』になる人間が減ってくれるといいんだがなぁ」


雄兄が恐れているのは『ホルダー』が事件を起こして、その結果全ての『ホルダー』が国民にとっての悪意の対象になることを恐れているだ。


一度レベルを上げて『ホルダー』になればレベルを0に戻す手段はない、だから世論がホルダーを悪と見れば、生き辛い世の中になるだろう。


「話がそれたな、ともかく政府は『ホルダー』を増やしたくない、だがダンジョンを封鎖し続けることはできない、だから太郎もこの仕事を受けるかよく考えろよ?」

「そんな風に言うなら私を誘わなければよかったのに」

私が苦笑しながら言うと、雄兄は首を横に振り

「お前の性格を考えるとな、ダンジョンの奥に興味あるんだろ?」

雄兄の言葉に私は苦笑する、たしかにダンジョンについては興味がある、だけど私がダンジョンの謎について知る事ができる機会はないと思っていた。


「確かに私なら雄兄を裏切らないし、ダンジョンに入ることを条件にすれば受ける話ではあるね」

私が乗り気な姿勢を見せると、雄兄は少しだけ悩んだ後に

「もしもダンジョンの奥が気になるなら、俺達に協力してくれるなら、最奥までいけるかもしれないぞ」


雄兄が予想外の言葉を放つ、私達はどうがんばっても5階層までしか潜れないと思ってたが何かの方法で潜れるようだ。


「スキルなんだが、どうも最初に取得したスキルと同系列のスキルを取得するには条件がつくようでな、例えば俺なら、剣術を最初に取ったので武器系のスキルは無条件で取れるんだが、魔術系スキルを取ろうとすると条件が追加されるみたいだ、だから最初に取得するスキルを特殊なのを選んでくれる人間を探してるんだ」


「そのスキルはなんていうスキルなんですか?」

私が聞くと雄兄は、少しだけ言いよどんだ後に

「〈解体〉だな」

「〈解体〉ですか?意外ですね、誰かがもう取得してるものかと思ってました」


私の言葉に、雄兄は頷くと

「解体はどうも特殊なツリーみたいでな剣術、魔術、魔工学といった人気スキルを取った後だと取得できないみたいでな、なのでまだ一つも取得していない人間にとってほしいんだ、だがな誰でもいいってわけでもないんだよ」


解体スキルを取得して、アイテムをダンジョン外に持ち出せた場合〈ホルダー〉の収入が増える事になるので〈ホルダー〉の数を減らしたい政府としてはダンジョンに潜って持ち帰れるアイテムの数は少なく、買取値は安いほどいい。


だから〈解体〉の情報は政府としてはトップシークレットであり、知る人間は少ない方がいいと。

「それでなんで私?」

「そりゃ、お前が独り身だからだな、ついでに言えばこんな事を担当したい人間はいないからな、自分が推薦した人間に〈解体〉を覚えさせてそいつが、漏らせば推薦者も処分されるからな」


なるほど、確かに誰でもいいわけではないと、例え〈解体〉スキル取得前は漏らさなさそうな人間でも、実際に取得すれば性格が変わってしまうかもしれない、優れたスキルを独占していることは優越感に繋がるから。


「でもなんで私?私が周囲にばらすかもしれませんよ?」

「お前もし〈解体〉を覚えて、黙ってたら自衛隊のダンジョンアタックチームの護衛付きで、下層に潜れるって言ったらどうする?」

「黙ります」


私は雄兄の言葉に即答する、ダンジョンの最下層への挑戦権を得られるのなら、拷問されなきゃ吐かない自信がある、さすがに拷問されたら無理だけど。


「そういうわけだ、お前なら知識欲を満たす為に情報を黙る事ができると俺は信じている、だから俺はお前を推薦したわけだ」


雄兄の言葉に納得し、私は悩む。

確かにダンジョンの奥へのアクセス権は欲しい、だが〈解体〉のスキルを所持する事で自分が被るであろう不利益を考えると簡単には首を縦に振る事ができない。


「さすがに簡単に殺したりはしないと思うが、まぁ、今すぐに決めなくてもいいってよ、実際にダンジョンに入ってみて、決めてくれて構わないと総理は言ってたぜ」

「実際にダンジョンに入ってみれば私の知識欲が刺激されるということでしょうか?」


「いや、そうじゃない〈解体〉スキルは別に一人だけしか覚えられないわけじゃないんだ。ただ〈解体〉スキルは他のスキルとは違い、取得する際に総理と直接会話をする必要があるけどな」

「なんで総理と?」


「総理大臣のみが取得できるレアスキルの効果で、〈解体〉は取得の際に総理と直接会話をし、承認してもらう必要があるんだ」

「なるほど…それほど国は〈解体〉スキルに注意していると?」

そんなスキルを取得するのは私でいいのだろうか?


「ま、すぐには判断できないだろうからゆっくり考えてくれ、お前が安定志向なのも知ってるからな、〈解体〉スキルを取得しなければ、公務員として安定した生活を送ることができるんだからな」


そう言って雄兄は私の肩をぽんぽんと叩く。


「ダンジョンがある場所は隣町の自衛隊の駐屯地にある、ここから車で1時間程だが引っ越しをするか?」


「いやいいよ、車で1時間くらいなら毎日通うよ、この家は親が残してくれた家だしね」

私の言葉に雄兄が頷く、私の住んでいる街は自衛隊駐屯地から1時間程の距離にある。


毎日1時間ほどの移動ならわざわざ引っ越すまでもない

「そうか、それならこの家から通うといい、それから車だが、国から現在開発中の新型車が渡されることになるぞ、よかったな」

「新型車?それは一体どんなものなんですか?」

私の質問に雄兄は手持ちの端末をこちらに向けると、一台の車のデータが乗っていた。


「現在国が開発を進めている車だ、魔石で発電して動く電気自動車だな、いずれは魔石を燃料に動く車を開発したいらしい、ガソリンの在庫を考えて、完全な魔石か電気によって動くエンジンを開発しているんだとさ」

「なるほど、確かに日本では石油が取れないからねぇ、でも販売されるっていう話は聞いたことないけど」

「今はトラックや船等の輸送に使うものを中心に開発をしてるからな、一般に販売されるのはまだ時間がかかるだろう」


政府も色々と考えているんだなぁ、そんなことを考えながら私は雄兄と仕事の話を続けるのだった


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