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ハニー34

短めです。




「四、五年後? それは、ミツの相手が――高校生だからかな?」



「……え?」


 あまりにもさらっとした口調で、高校生と結婚しているという世間からすれば白い目を向けられるような事実を突きつけられたせいか、焦りよりも逆にきょとんとしてしまった。



 私、シュンのこと話したっけ?



 確かに酔って結婚したことは会社の人たちに話したけど、洗いざらいというわけではない。高校生とだなんて、冗談でも言えなかった。というよりも、冗談で済まされそうで、そこだけは隠し通した。



 だから。


 なんで知ってるの?



「え、なんで……?」


「答え合わせは、またいつかね」


 アレク氏は口角をわずかにあげたその唇に、今は内緒というように人差し指を当てて微笑んだ。


「いつかって、具体的にはいつ――」


「ああっ……! 新しいデニッシュが追加された!」


 アレク氏が大量に買い占めた穴を埋めに、店員さんか新しいデニッシュを持ってきた。


 私の質問は放置、というかほぼ耳に入っていなかったようで、アレクは嬉々としてデニッシュへと突撃していく。


 おい、それが外国スタイルなのか!?



 ……それとも。はぐらかされたと見るべきなのか。



 うーむ、謎すぎる、と唸っていると、



「――蜜?」



 ふいにどこからか声をかけられた。


 癖のあるミツ、ではなく、はっきりとした発音の、蜜。声で誰か察していたけど、ぐるりとあたりを見渡す。


 店の入り口にいたのは、やはり達巳だった。


 手招きされて仕方なく、私は店内から出る。


「一人か?」


「一人っていうか…………あれ!?」


 ちらっと店内へと目を遣った私は、素っ頓狂な大声を上げてしまった。


 デニッシュの前に陣取っていたはずの外国人の姿がどこにもない。なぜだ。


 さっきまであんなにはしゃいでいたのに!


 他に浮気か? なんて神出鬼没な外国人だ。


「なんだ? また子供のおもり?」


 嫌味ったらしく言う達巳を軽く睨む。


「シュンは子供じゃない。……大人でも、ないけど」


「ほだされすぎてないか? 捨てられてから傷つくのは蜜だろう」


「……」


 遺憾ながら、なにも言い返せなかった。


 この目の前にいる男だって、私を裏切って他の女に走った。


 すぐに立ち直れたのはシュンのおかげもあるけど、単純にこうなることを心のどこかで予期していたからかもしれない。



 またキラに取られるかも、と。



「そのときは遠慮なく漬け込ませてもらうからな」


 シュンはもうキラには靡かない。 だけど別の女にとなると……わからない。


 そんなこと、今は考えたくないや。放棄、放棄。


「……その前に達巳は他の女と結婚してそうだけどね」


「お、名前呼んでくれた? 一歩前進だ」


 そんな無邪気な笑みを見せられると、反応に困るのだが。


「時間あるなら、昼飯でも一緒にどう? それくらいはいいだろう?」



 うーん、まあ、この間アレク氏ともご飯一緒したしな……。


 それに肝心のアレク氏、いずこにか消えたし。私放置だし。




「ランチだけなら」





 安易に頷いた私は、シュンのお仕置きで膝が砕けたことを、すっかりと失念していたのだった。





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