ハニー9
結構がっつりとした下ネタ入ります。ご注意を!
あれから音沙汰もないシュンが気がかりではあったが放置していると、わりとすぐに向こうからなにごともなかったかのようにやってきた。
前回同様、うちの玄関先に座っている。
こういうときは、わざわざ触れない方がいいよね。せっかくシュンから動いてくれたんだし。
「シュン。制服汚れるよ」
当たり障りない指摘をすると、シュンが私を見上げて、にこっと笑った。
「じゃあ、合鍵ちょうだい?」
くっ。あざとく小首を傾げて媚びてきた。
かわいいから無下にできない。
「……なくさないでよ?」
室内へと入り、引き出しからスペアキーを取り出すと、その手のひらへと置いた。
「やった!」
小さく拳を握り喜ぶシュンを招き入れて、私はベッドへと倒れ込んだ。
「やっと休みぃー……」
一週間、よく働いた。
週休二日の超ホワイト企業でよかったぁ。
あ、シュンにご飯を食べさせないと、と思ったところで、隣にばふっと彼が倒れこんできた。
私の真似をしたらしい。
君はものぐさにならなくてもいいのだよ? 制服シワになっても知らないよ?
枕に埋まった顔をシュンの方へと向けると、思いの外近くて逃げ腰になったところを捕らえられた。
ぎゅむっと抱きついてきて、枕からシュンの胸に顔が埋もれる。
苦しいんですが……。
「この前は……ごめん」
シュンが私のつむじに顎を置いて謝ってきた。
この抱きつきは変な意味ではなく、謝罪の顔を見られたくないためのものだったらしい。
「ハニーと、仲直りしたい」
きゅんとした。なにこのかわいい子は。
「うん、わかった。……私も、ごめんね」
「……なんでそこで、ハニーも謝るの? やっぱり、離婚したいってこと?」
半眼で見下ろされて、慌てていやいやと首を振った。
なんだか離婚が彼の地雷になっている。なぜだ。
せっかく仲直りしたばかりだから、慌てて話をすり替えた。
「結婚の予定がないからそこは別にいいんだけどね、シュンは若いんだからもっと学生らしく遊びなさいよ。クラスの子に告白されたりするでしょう?」
「全然されないよ?」
今どきの若い子よ。見る目があるのかないのか……。
「俺、年上の人としか付き合わないって公言してるから。同級生とか、めんどうだし。セフレにしてって言われても、処女かビッチしかいないから、あんまり楽しめないもん」
もん、ってつけたところで、まったくもってかわいい内容じゃないからさぁ!
それに処女とビッチじゃない子も絶対いるよ!? ちゃんと探しな!?
ただれた高校生活をしている彼にやれやれと思っていると、ふいに背中にあった手の動きがあやしくなってきた。するすると、手のひらが肌を這い移動する。
「こ、こらっ、シュン! シュ、シュンくん!?」
「…………だめ?」
そんな純粋な瞳をしてもだめに決まっとるわ!
「ね、一回だけ。それか、お試しでちょっとだけ」
お試しってなに!? それに君、絶対ちょっとじゃ終わりませんよねえ!?
「待ちなさい待ちなさい! だめだって、ちょっ、ふぎゃあっ!」
胸がっ!
「あ、やっぱり結構大きい。それに、上からだと絶景〜」
おい、聞けや! 谷間覗くな!
「こらこらこら、だめだって! やーめーなーさいっ!」
頭を両手で押しやると、不満たっぷりの顔をしつつ、渋々といった様子で手が引っ込んでいった。
あ、危なかった……。血気盛んな若者の体力を舐めていた。
それでもシュンは諦めきれなかったかのか、指を絡めてくる。
「……どうでもいいやつはなにもしなくても釣れるのに、ほしい人に限って落ちてこないんだよなぁ……はぁ」
独り言、もれてますよー。
「だからね、ハニー。俺を差し置いて、他の人に突っ込まれたりしないでね?」
「かわいい顔してそんな下ネタかまさんでくれませんかねえ!?」
「えー?」
翻弄される私を、シュンはけらけらと笑う。
なにはともあれ、この子が心身ともに元気なら、なによりだ。




