食費の危機
あれから3ヵ月後。
俺たちは本当にのんびり生活していた。
ダンジョンとかは一切いかず、平和に暮らした。
農業をしたり、店を出したり、何となく鍛えたスキルで服を作ったり。とにかく平和だった。だが、その平和な生活は今日、一瞬で崩されることになった。
「ましろ、メイン武器って何だっけ?」
「双剣だが?」
「さつきちは?」
「ハープです」
「微妙だなぁ……回復職がいるのはうれしいけどましろがねぇ」
「サブ双銃だしよくね?攻撃力も100万ちょいあるし」
「それだけあれば十分か。よし、行くよ」
「は?どこに?」
正直俺はこれを聞いて後悔した。
別にIDに行くというのならそれでもいい。ID程度ならソロでクリアできないものはないし、本気を出せば5分程度で終わるからいい。ダンジョンも伝説の攻略パーティー「蒼天同盟」しかクリアしていないようなところでなければソロで行ける。引きこもりだけど、これでも高校中退するまで体育の成績は5、体育祭のリレーは一位、マラソン大会でも1位をとったりと、運動神経はいい方だった。それは今も残っている。
体型や骨格が違うこともあるし、力が出せるかはわからない。
で、言われた内容はというと――――
「私たちって所持金を合わせたらすごい額になるじゃん。それを狙いに来たってわけよ」
「要するにPvPってわけか?それはいいけど紗月のLvだと危ないだろ」
「前みたいに背後も見えるわけじゃないんだよ。ってことは岩とかの後ろに隠れたら敵には見つからない。私ん家は障害物になるものが多いから。それを使ってね」
「ま、紗月にケガさせた奴を優先的に潰すってことで」
俺がPvPを了承すると、かすみは敵がいる場所に行った。
こっそり見てみると、敵の人数は6人。聖剣が2人、あとはグリモワール、ダガー、手裏剣、双剣だ。ぎりぎりまで近づいてステータスを見てみると、サブで回復スキルが使える奴は一人もいない。
金目当てなら相当のバカだ。回復職を連れてこないで俺たちに挑もうとは。これでもバトルアリーナでPvP専用を使わずに1位だぞ?
勝てないわけがない戦いが始まった。
どこでもPvPが出来るというありがたいシステムがあるおかげで俺たちの勝ち目はさらに高くなった。
かすみは太刀使い。攻撃力が高く、俺とガチPvPで圧勝したくらいだ。
「絶・楼刀神解放」
そう唱えると、かすみの持っている太刀が青く光った。
この技は一定時間回避、攻撃、会心率が上がる技だ。さらに最強の連続攻撃「創連天結斬」が使えるようになる。
「戦姫と呼ばれた俺の力、見せてやろう」
かすみが創連天結斬で敵にダメージを与えている間、それを避けている奴らを潰しにかかる。
スキルは使わずに、一人ひとり確実に殺す。
影渡りで敵に姿を見られないように移動しながら近づき、最高の敬意と殺意をもって殺す。もちろん悪党共のデスペナなんて気にしない。この金は俺たちの生活のためのもんだ。渡すわけにはいかない。
「ラプソディ・アタック」
「ナイスだ紗月」
バフがついてさらに攻撃力が上がった。もうこれ隠れていく必要ないかも。
双剣に広範囲攻撃が少ないのが残念だが、まあそこは攻撃速度とかで補えるからまあ良し。
「仕様変更かよ」
創連天結斬は敵は貫通するが、防御を貫通することは出来ない。それを使われた。
戦闘に壁役がたち、その後ろに並ぶ。確かにこうすればダメージは受けない。しかも回復スキルを使いつつ少しづつ前に来ているのでここで上手くやらないと確実にかすみは負ける。
かすみの技はあと2秒で終わる。そのタイミングで――――
今だ。
「天幻廊・火奏斬」
片方の剣を地面に突き立て、それに魔力を込めると、地面にひびが入り、そこから火が噴く。
その火は敵を飲み込み、一気にHPを半分削った。
が、そのあとの反動は大きい。10秒ほど動けなくなる。
「カノン・ガード」
これは味方の被ダメを50%減らすもの。これを使ったら被ダメが一気に減る。4人が俺に攻撃した時の被ダメは約5万、自動回復で4万回復するのである程度の時間は持つ。
俺がダメージを受けている隙に、かすみが一人ずつ斬り殺していく。
最後の一人はスタンさせて生け捕りにした。