第8話 飛んでいこう
コウモリのモンスターに遭遇。
燃やす。
釜玉うどんを食べる。
歩く。
鮭のモンスターに遭遇
燃やす。
釜揚げうどんを食べる。
歩く。
ナマケモノのモンスターに遭遇。
燃やす。
肉うどんを食べる
ハリネズミのモンスターに遭遇。
燃やす。
の繰り返しが何度か続いた。
目の前では、燃え尽きて黒こげになったペンギンのモンスターの燃えかすが残っている。
「なんで、森の中でペンギンが……」
いや、それよりも、今は。
「つーか、本当にうどんしかくえねぇ! 」
うどん地獄に飽きていた。
「ズルズル……しゃーなくない? ズルズル」
「だから、てめえまでうどんを食うな」
カトリーヌ・大塚のがうどんを食いながら電話してきている。
今は、すする音さえ聞きたくない。
ったく、どいつもこいつもうどんばっかり食って。
「北海道あたりなら、もっと料理が多彩だったかな……」
野菜、ジンギスカン、ラーメン、カニ。あー、カニ食いてぇ。うどんはいらない。
「ゴチ。そんな恋太郎君にとっておき情報! 」
「なんだよ? 」
どうせしょーもない情報だろうなー。
「お遍路って、22カ所は香川にあったので、香川転移後は、四国66箇所巡りになって、ちょっとだけ楽になりました」
脳天気な声で、どうでも言い情報の発表だった。
「知るか! 御利益も25パーセント減だろうよ」
「こっちの世界でお遍路するなら、22箇所巡りかな? 」
「御利益が25パーセントしかないぞ? 」
「懺悔したい人は、すごく楽かもね」
「お前は、色々と、神様とか仏様に謝っておけ」
御利益のなさそうな神が、何を偉そうに言っているんだか。
「っと、やっとか」
海に面した街道沿いに歩いてきたが、遠くに村が見える。あれが、ライラの村だろう。そして、ライラの村は、海に面した丘の上にあった。丘の周りには麦畑が広がり、丘を下ると漁船らしき木造船が何隻も見えるので、漁業と農業で生計でも成り立っているのだろうか。
そして、海の向こうには大きな島が見える。いや、見渡す限り、大地が続いているので島かどうかもはっきりはしないのだが、恐らく、あれが転移してきた香川だろう。
「さーて、何うどんが名物かな? 」
「人ごとだと思って、お前な、くわねーよ」
恐らく、本当に、うどんしか無いだろう。
ここは一つ、手っ取り早く香川にまで行ってしまうが吉だろうか。一刻も早く、このうどん世界から帰りたい。
「一気に行くわ」
俺は、足の裏に炎が吹き出していくイメージをする。
熱が周りの空気を巻き込んで、炎とともに噴出していくイメージ。
靴の裏から、炎が吹き出し、俺はアイアンマンよろしく浮き上がった。モンスターとの何度か戦って、こういった芸当も身につけていた。
「行くか」
ライラの村は素通りだが、香川にまで行く方がてっとり早いだろう。
俺は海に向かって、飛んでいく。とりあえずは車程度の速度は出るな。
適当にカトリーヌ・大塚と雑談をしつつ進むこと、約30分。カトリーヌ・大塚が、あっと声を出した。
「どうした? 」
「えっとねー」
「なんだよ? 」
また香川情報か?
「スキルのアプリを使う場合、実はスマホの電池を消耗していてね」
「ふーん。でも、電池∞のアプリあるだろ? 」
「いやーそのー、電池∞はあくまでも、普通の使い方をしている範囲では電池が回復するわけで」
「……おい、まさか」
スゲー、嫌な予感がする。
「メンゴメンゴ♪ スキルアプリは電池消耗が激しいので、普通に電池消費します! 電池が一定以下になったらアプリ中断します♪ 」
「ふっざっけな! テメェェェェ!!! 」
叫びの後半は海水でかき消された。
靴の裏からは炎が消えていた。
俺は、人力飛行機の末路よろしく着水した。