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第62話 旅路を考えよう

 俺たち三人は、イフリートの首都に戻っていた。

 そして、いる場所は、酒場だ。

 陶器のジョッキに入ったエールが三つ、テーブルの上に置かれて、その横には地図が広げられていた。

 イフリートの全土が描かれた地図で、海には小豆島と四国本島の香川の一部が描かれている。ただ、描かれている香川はややシンプルなので、あまり精度は良くないのだろう。

 ぬるいエールを一口飲んだ。

 エールって常温で飲むものらしいが、根本的に酒に慣れてないせいか、喉にはなかなか入って行きにくい。


「これってうまいのか? 判断がつかん」

「悪くは無いぞ?」

「まぁ、悪くは無い」


 ヴィクトワールとアレクサンダーが悪くないと言葉を続ける。

 悪くは無いってことで、決して良いわけでは無いってことか。

 この世界の食材や調理法の水準が低いってことで、だからこそ香川県からもたらされた食材や調味料が珍重されているわけで。


「ま、とりあえず、明日来る船に乗っていけばいいし、話もついた、後は宿でも取るだけか」


 イフリートの首都は海に面してはいないが、大きな河が街の中心を流れていて、船は川をさかのぼってやってくる。

 その船というのは、香川県の船で魔石さえあれば川を上ってこれる鉄の船だという。

 恐らく、貨物船か何かを、魔石で動くように改造したものと言うことだろう。

 まぁ、いったん香川まで行ってから、小豆島というルートをとらなくて済んだ点は、まさに渡りに船ってわけだ。


「部屋だが、男女別々にとるぞ」


 いつの間にか、時給の壁のショックから立ち直ったアレクサンダーが提案する。


「? 別に気にせんぞ。集落じゃ一緒の部屋だったろ?」


 ヴィクトワールが、不思議そうにアレクサンダーを見る。


「君は無防備すぎる……。僕は紳士として別部屋を提案する!」

「いや、身体能力強化で固いぞ?」

「そういう意味じゃ無い!」


 アレクサンダーが軽く、テーブルを叩く。


「どういう意味だ?」

「どういう意味も何も……一体、君はどういう生活をしてきたんだ!?」


 今度は頭をかきむしりながら、アレクサンダーが叫ぶ。

 酒場は元から騒がしいので、この程度騒いでも誰も気にしないけどな。

 しかし、アレクサンダーの気持ちも分かる。

 ヴィクトワールはそれはもう、無防備だ。

 寝るときは下着姿になるし、こちらに見られることを平気なようだし。

 脱ぐとより、でかいんだよな……。

 どこがとまでは、言わないが。


「君は、どうして、男がいる前で平気で下着姿になる!?」

「なんだよ、着ているから問題ないだろ?」

「問題だ!」

「下着ぐらいでどうこう言うなよ」

「言うに決まっているだろ!?」


 なんつーか、ヴィクトワールがマイペースすぎるのか、アレクサンダーがこだわりすぎるのか。どっちでもいいけどさ。


「おい、恋太郎、なんでこいつ、こんなに喧しい? お前も問題だと思うのか?」


 先輩頼むとか言っていた割に、数日で呼び捨てかお前になっている件。

 いや、まぁ、数日しか先輩じゃないし、上下関係が厳しいのはお断りなのは、俺も同様だが。


「俺にふるな」


 とだけ言って、手でさっさと払う動作をした。


「君がそんなこと言うな! 君の同僚だろう!?」

「面倒は見るが、お前らのどうこうにまで首を突っ込む気は無い」

「無責任だぞ!?」

「そうそう、こいつ、以外と人間関係ドライだぞ?」


 ドライって言うか、数日のつきあいで長年の友情を超えることなんてできないと思っているが。

 いや、確かに、親友と言えるほど親しい人間がいたことも無いか。

 友達、知人はそれなりにいるが、特に親しい人間もいない。

 ……確かに、ドライかもしれないな。

 今更、そのスタンスを変えて、ガンガン人と関わっていこうとも思っていないはずだが。

 それはそれで、人としての成長が無いだろうか。

 ふーむ、どんなもんだろうか?


「まぁ、俺がドライなのは置いておいて、宿とってくる」

「逃げるのか?」

「逃げたな」


 面倒な断定を背後に受けつつ、席を立った。

 まぁ、とりあえずは、この世界でのことに一区切り突くまでは、人間関係をどうしていくか保留としよう。

 その後、宿は取れたが、一部屋の大部屋だけしかとれず、寝るまでヴィクトワールとアレクサンダーはうるさかった。

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