表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/68

第60話 面接をさせよう

 念のためにヴィクトワールは縄に縛ったままにして、俺はスマホをハンズフリーにして彼女の目の前に座った。


「では、これより面接をはじめさせていただきます。まぁ、形だけだから気楽に正直にお願いしますね」


 スマホからカトリーヌ・大塚の声が聞こえる。流石にスーツに着替えてはいないと思うが、一応は、声から真面目くさい感は漂っていた。

 ただ、それでも、形だけでもする意味があるのかと。


「まず、お名前をどうぞ」

「ヴィクトワールだ」


 とヴィクトワールが、変わらずに気が抜けというか間延びした感じで答える。

 というか、こいつ、もしかして、丁寧語が使えない?

 おう、俺が言うのも何だが、面接受ける上で最悪じゃねーか。


「フルネームでお願いします」

「綾小路ヴィクトワールだ。知っているだろ?」

「そこは、礼儀として言うもんだろ」


 思わず、口を挟む。

 おっと、面接中だった。

 アレクサンダーは邪魔にならないようにか、やや離れた場所で、こちらの様子をうかがっている。が、どこかあきれた様子でこちらを見ている。

 なにか問題でも?


「コホン、では、志望動機をお願いします」


 カトリーヌ・大塚がわざとらしく咳払いをして続ける。


「首になったからだ。雇ってくれるならどこでもいいし、なんでもやるぞ」


 それ、禁句だろ……。

 やる気の無かった俺より酷いってどういうことだろうか。


「なんでもすると言いましたが、具体的に何ができますか?」

「掃除洗濯料理なんでもするぞ。全部下手だけどな!」


 胸を張って言い放つ。

 下手なのか。

 そして、何故に誇らしげに言うのか。

 なんなのだろうか、こいつは。


「では、次に、資格や特技、趣味などの自己アピールをお願いします」

「うむ!」


 いや、そこははい!

 だろうが……。

 俺の心中を察することも無く、ヴィクトワールは胸を張って口を開いた。


「身体能力強化が得意で、冷蔵庫とか一人で持てるぞ。あと、消音と透明化のスキルも使えるから、いたずらも得意だ! あと、爆発も使えるな。趣味は食べること、特技は大食い。好きなものは肉。嫌いなものは無い」


 これは酷い。

 まっとうな面接だと落ちる気としか思えない酷さだ。

 唯一良いと言えるのは大変元気があるぐらいだろうか。

 いや、それはそれで、面接で受ける良い要素だけど。

 カトリーヌ・大塚も予想以上に酷いと思っているのか、しばらくスマホから声が聞こえてこない。

 もしや、もう結論を出したわけじゃ……。


「本日はありがとうございました。早速ですが、結果をお伝えします」


 出したのか。

 いや、でも、結局、形だけの面接だし。


「これにて面接を終了します。本日は採用試験をうけていただきありがとうございます。では、結果ですが、厳正なる選考の結果誠に残念ではありますが、今回は採用を見送らせていただき」

「雇ってやれよ!?」


 なんとなく、そんなことを言うのでは無いかと思っていたが、やっぱり不採用通知を出しやがった。


「なんだと……」


 そんでもって、ヴィクトワールはショックを受けて……いや、あの受け答えで受かるつもりだったのか?

 受ける側も受けさせる側もポンコツで頭が痛くなってくる。


「いや、だって、こんなの就職する気ないじゃん!」

「俺も無かったぞ?」

「なにが悪い? 正直に言ったぞ」


 ヴィクトワールが眉をひそめて、不満をスマホに向かって言う。


「いや、世の中には、クソ野郎にクソみたいな建前だって必要だろうに」

「恋太郎、誰がクソ野郎だ、この野郎」


 カトリーヌ・大塚の避難は無視する。

 社会に出たわけじゃ無いが、就職した先輩の話を聞く限りは、世の中、何故か上司に限って頭がおかしかったりするらしいので……。まぁ、話半分に聞いておけばいいのだろうけど。


「自分を偽って、その場しのぎで就職しても、長続きしないと思うんだ!」

「そうかもしれないが、お前、もう、当てが無いぞ?」


 自分らしく生きる姿勢は……分からなくも無いが、もう少し協調性というものをだな。


「むっウググ」


 そして、唸りだした。


「君たちは、一体、いつまで就職試験コントをしているつもりだ?」

「俺は参加しているつもりは無い!」


 アレクサンダーのツッコミに、なんだからさらに頭が痛くなってくる。これ、俺が事態を収拾しないといかんのか?

 いかんのだろうな。


「とにかく、雇うつもりなら雇えよ」

「うーん。分かったわよ。それじゃ、ヴィクトワール! 時給は七百円スタートだから」

「な、なんだと!?」


 おや、薄給ぶりに驚いているのか。

 と思ったら。


「はじめからそんなにもらえるのか!?」


 感激していた。

 ……感激する金額なのだろうかと思ってアレクサンダーを見ると、開いた口を押さえていた。……こいつから見ても高いのか?


「研修期間終わったら、七百八十円です」

「ヤッホイ! 勝ち組だ!」

「いや、お前、いくら貰っていたんだよ」

「五百八十円だ」

「安!」


 異世界救済士に最低賃金とかの概念は無いのかと。

 ちなみと思って、アレクサンダーを見る。ボソリと。


「六百三十円」

「……安いな」


 なんだろう、異世界を救う前に異世界救済士を救うべきなのでは無いかと思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ