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第46話 話し合おう

 目覚めると、左腕には特に違和感は無く、やはりしっかりと治っているようだった。アプリがすごいのか、アレクサンダー・ワトソンがすごいのかはこの際置いておくとして。

 巫女に色々と話を聞くために、件のアレクサンダー・ワトソンと一緒に部屋で待っていた。巫女はさらわれたばかりだというのに、様々な儀式があってこなしてからなら時間をとれると言うことで待っているわけだ。

 巫女というのも、大変そうである。一子相伝の唯一の存在だからか、代わりをこなせる人間もいないのだろう。

 一応、巫女がさらわれたことは箝口令がひかれている。威信の問題もあるが、その唯一の存在である巫女の誘拐なんて前代未聞の事態らしく、国民への不安を抑える目的の方が大きいようだ。


「相手も救済士か? 確かにあの能力の説明はつくが」

「何処の誰が召喚したのか知らんが、可能性は十分あるだろう?」


 俺は、スマホでアプリを眺めながら答えた。


「そうだな」


 アレクサンダー・ワトソンはふむふむと何度か頷く。


「しかし、あの能力は不明だな。空気を圧縮して放っているのかと思ったが、傷口を見たところ、熱で焼きふさがっているような傷跡だった。どういう絡繰りだろうな」

「それなら、多分、これだ。やっぱり、その手のあったか」


 目的のアプリを探し当てて、スマホの画面を見せた。


「『ピュア・インビジブル』、対象の透明化?」


 眉をひそめて、スマホの画面を見つめてくる。俺が示したアプリは、様々なものを透明にして見えなくするアプリだ。ちなみに、基本性能だけでもべらぼうに高い。誰が買うかこんなもん。いや、便利かもしれないが。


「あと、これ」


 スマホを弄って、ブックマークしていたもう一つのアプリを見せる。


「『サイレント・ノイズ』。こっちは消音か。どちらも補助系のアプリだが、つまり、何かの能力を透明で消音にして使っていたと?」

「恐らくな」


 それなら、手の平の先で何かを弾きながらも何も見えず、音もしなかった説明がつくはずだ。


「では、何を透明化し消音化していた?」


 俺は明いている左手をグーからパーにして見せた。

 アレクサンダー・ワトソンはそっとチョキを出す。


「おい」

「ジョークだ。爆発だな?」


 チョキを出した手でそのまま髪をかき上げる。しょうもないジョークを入れての、それは格好良いのだろうか。


「周囲の空気を吹き飛ばすなら炎も消える。」

「透明消音の爆発か。見えもせず音もしない爆発なんて、どうやってイメージしているんだかね。君の凍る炎以上にイメージで苦労するぞ」

「いや、あまり苦労してない」


 炎のイメージは得意で、冷気は冷食工場の経験だし、身体に染みついたイメージで可能だ。


「嫌みか?」

「そうじゃねーけど、そうだって言ってやろうか?」

「ふん、だが、補助スキルの重ねがけによるイメージの高難易度化ならば、あの程度の爆発にまで威力が落ちていると見るべきか」


 アレクサンダー・ワトソンは、顎を押さえながらふむふむといった様子で頷く。なんとなく思考回路が同じになるのは嫌だが、一応は、先輩のこいつの見解でも矛盾がないなら、これで十中八九正解と見ていいだろう。


「かもな」

「そして、問題は、あの野郎、いや彼女の目的か」

「フェニックスに敵対しているってことだと思うが、そこからは巫女様に話を聞かないと何とも言えないだろ?」

「確かにな。しかし、この世界の神話を聞く限り、最高神の三柱は特別に敵対しているわけでもないらしいし、宗教的な対立は目立って聞いた覚えもないな」

「見た目ないだけだろ? 宗教で対立してないなんておとぎ話だろうさ」


 まぁ、俺のいた日本では、それほど深刻な対立はしてないと思うが、世界に目を向ければ同じ神を信仰して対立しているなんてざらなわけで。


「対立してないなら、12の国に分かれている必要もないし、国と国で小競り合いも無いだろう?」

「国と国は別だと思うが、巫女やシャーマンなどが国の要なのは事実であるし、十分に可能性はあるか」


 そうして話をしている内に、扉がノックされた。


「お待たせしました、レイアです」


 待っていた件の巫女の名前がレイア。名字もあるが、随分と長たらしいので覚えていない。


「入ってくれ」

「失礼します」


 巫女がどこか疲れた様子であるが、衛兵と女官と一緒に入ってきた。疲れているのも護衛がついているのも、昨日の今日なのだから、当然だろう。

 役割と地位という力に振り回されていると言うべきなのだろうか。それとも、するべきだからしていると言えるのか。

 これは、聞かない方がいいだろうな。


「では。私にわかることでしたら、何なりとお聞きください」

「じゃあ、まずは」


 そういって話を始めた。

 さて、それにしても、俺、いつまでこの世界にいるんだろうな。かといって、このまま帰る気もないわけだけど。

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